Double Barrier 複雑なるもの

数多あるBarrierのうち、いわゆるOne Touch,No Touchと呼ばれるDigital Optionを考えます。

最初の段階ではDouble Barrierに固執せず、Double/Single Barrier共通の複雑性について。

通常のDigital(European Digital)のCallは、満期時点で株価がStrike以上だったら1、以下なら0。

これに単にBarrierをつけたKnock-Out Digital Callが満期で1もらえる条件は
BarrierにTouchしない かつ 満期時点で株価がStrikeを超える

となりますが、一方のNo Touchは単に BarrierにTouchしない という点に留意が必要です。
実務的にはKnock-Out Digital CallよりはNo Touch Digitalの方が出現頻度は高い。

また、One TouchBarrierにTouchする ですが、Rebateを払うタイミングが
満期(Barrierの参照期間と同じ)のものとBarrierにTouchしてからX Business Days後の
2通りあり、俗にRebate at MaturityとRebate at Hitと呼ばれています

Exotic Parityは
European Digital=KO Digital+KI Digital
Discount Bond=No Touch Digital+One Touch Digital at Maturity

Exotic Parityに入らないやっかいもののOne Touch at Hitですが、金利が正の環境下では
One Touch Digital at Hit > One Touch Digital at Maturity
くらいしか言えません。これも同様にat Matよりビジネス上の出現頻度が高いところが泣かせます。

ここからは、本題のDouble Barrierについて考えます。
Payoffの形はVanillaでもDigitalでもいずれにも適応できる話ですが、前述のようにat Hitは難しい
概念なのでKnock-Inは全てat Matとしてください。

また、ここではSpotの上下にBarrierがあることを想定しています。
これ以外にもUpIn&UpOut、120%Knock-In、150%Knock-Outのように
ベン図の一つの円がもう一つの円の部分集合になるようなケースも考えられますが、
Single Barrierとして独立に計算したものの線形結合で表現することができ、
Double Barrierとはいい難いので今回の対象から外しました。

ベン図で書くと、
Higher Barrier Knock-Inの領域、Lower Barrier Knock-Inの領域となり
全ての事象を4領域に分断するので2^4=16通りのCombination。
そのうち、Payoutなし(真っ白)と割引債(真っピンク)を除けば、Double Barrier at Matだけで全14通り。

Singleに帰着できる領域 4通り
Up&In , Up&Out
UpandIn.JPGUpandOut.JPG
Down&In , Down&Out
DownandIn.JPGDownandOut.JPG

通常 Double Barrier領域 2通り
No Touch , One Touch
NoTouch.JPGOneTouch.JPG

理論の産物、Symmetric Double Barrier 4通り
Double Touch Knock-In ,  Double Touch Knock-Out
DoubleTouchKI.JPGDoubleTouchKO.JPG
One Touch In Double Touch Out , One Touch Out Double Touch In
OneTouchInDoubleTouchOut.JPGOneTouchOutDoubleTouchIn.JPG
片側だけでなく、両側触れたらKnock-Inとか言い出すとこう(↑)なります。

末期症状 Asymmetric Double Barrier(非対称型) 4通り

UI&DO Out優先,
 もし、Knock-InとKnock-Outが起きたらどちらを優先するかということですが
 In優先にしてしまうと、単なるUp&Inに帰着してしまうので、このような言い方をするしかありません。

UO&DI In優先 Initial Effective,
 この場合、さらに、Down In Eventが起こらなくてもPayoutがもらえます。
 Down Inしないともらえないとすると、結局Down&Inに帰着します。

UpInDownOut(OutPriority).JPGUpOutDownIn(InPriority).JPG

UO&DI Out優先
 In優先はDown Inに帰着

UI&DO In優先 Initial Effective
 Initial None Effectiveは、Up&Inに帰着

UpOutDownIn(OutPriority).JPGUpInDownOut(InPriority).JPG

ここまで書いて自然に理解できることはUI&DOには二通りあってOut優先とIn優先。しかもIn優先はInitial Effective。

ここではベン図からスタートしてるから、あたり前の議論のように見えますが
非対称Double Barrierを文字から始めると大変なことになります。

例えば、実際のビジネスでは、「Double BarrierのDigitalやりたいんだけどUI&DOいくらかな?」
となるわけで、Out優先/In優先まで言及してくるヤツはまずいないと言っていい。
Term Sheetで書こうと思ったらIn優先のInitial Effectiveまで書かないと不明確。

この記事は仕事で使えます。こういうのは一度書いておけばオプション名に訛があろうが本質は同じ。
ちょっとだけ英語ちりばめておいた。これで説明には十分な単語じゃ。

どうせ非対称Double Barrierなんか投資家自身も理解してないからDoneしない。
そういうフラフラしている人からRequestが来た時、イナスための対策としてどうぞ。

【関連記事】
2009.08.04: Barrier Option Pricing
2009.07.28: Exotic Parity2
2009.05.26: Crossed GammaとDeltaの定義
2009.01.26: Exotic Parity
2008.03.03: Lookback 神なるTrade
2008.01.13: Worst Option ~香港より愛を込めて

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Comments [13]

うおっ。脂っこいですね。
銀行株の仕組み債でDown-In/Up-out Put(Out優先?)を組み込んだ物は見たことがありますが正直DoubleBarrierに関してはプライシングの仕方とか考えたことがないです。
金利差の大きいPairの為替でもDown-In/Up-out Put(Out優先)で見栄えのよい仕組みが作れそうな気がしますね。

これは所謂日本株EBのハイレバレッジ版ですね。Up は利払い頻度に合わせて観測
というタイプでしょうか。

Double Barrier はBSの解析解がぱっと見複雑怪奇なので手を出さずじまい
でしたがEquity Deriva のほうだとフローも結構あるのですね。
勉強してみる気になってきました。

失礼しました。ガンマの強烈な物を見るとハイレバレッジという癖がついていました。

バリアの解析解だと離散参照の場合参照回数分の多重積分になるような気がします。確かにヘビーですね。しかし数値解だとバリア近傍なんかのリスク(特に2次の)が心もとないので確かに解析解にこだわりたくなるのも分かる気がします。

幾何ブラウンや解析解ということで,ちょうどいい機会なので質問です。
もしご存知だったら教えてください。
Semi-Analyticな解が考えられる StochasticVol モデルとして Heston Model
がありますが最近これの FX Vol Surface へのカリブレーションをやってみました。

この際,どうもパラメータの最適解が複数セットある気がしてなりません。
カリブレーションの精度は結構高いのですが異なるパラメータセットで
同様の精度が得られます。
(エクセルのソルバーを使って最適化しています。)
これだといまいち使えないので(特にヘッジの議論が出来ない)
解決法を考えているのですが

・ 過去データを用いたCalibration の併用
(mean reversion, Corr ,volvolといったパラメータを過去データから
  推計して最適化の初期値に用いる。)
・ Local Vol Modelとの併用
  (Local Vol Surface にインプライされるHeston のパラメータというものが
  考えられないか?)

実際のところどういった方法が一般的なのでしょうか?
場違いな質問かもしれませんが, もしイメージなんかお持ちでしたら助かります。


すばらしいコメントをありがとうございます。

>>参照回数分の多重積分になるような
>多重積分は良く聞く方法ですが、計算速度があまり実戦的でありません。(もしかし>たら今は速い?)
>とはいえ10回以上参照があるものが多く、仕組債形式で大量に販売する場合には適さ>ない方法
>のはずです。解析的アプローチで、もっと圧倒的に早くやる方法があるんですよー。

多重積分だとうんざりしてしまいそうです。多分すごい時間がかかると思います。
離散参照をそんなに早い方法があるのですか?
ラプラス変換なんかを使う方法もあるようですが試したことはないです。
おいおいお聞かせください。(笑)

>>パラメータの最適解が複数セット
>それはソルバーが局所最小化を引き起こしているよくある状態です。
>最初からTarget値を定めた最適化のアプローチが、管理上も安定して良いかもしれ>ません。

>そもそもHestonの5つのパラメーターだけで、全ての期間とStrikeのオプション価>格を説明するのは
>難しく、その期間構造をどのように美しく持たせるのかというのは論文がありました>ね。

超短期のSmileのキツイところはHestonだと難しかったですがJumpをいれると
(JumpIntensityとVolの変動は無相関)結構いけます。
ただパラメータの一意性の問題がさらに複雑になってしまいます。
Hestonだけだと6Mから2Yくらいに絞れば結構いけそうでした。

>>Local Vol Modelとの併用
>は難しいと思います。というのも例えばVegaという概念をStochastic Vol Model>上でどのように定める
>のか?を考えれば、この併用が如何に難しいものであるか想像がつくと思います。

VEGA=d(OptionValue)/d(BSImpliedVol)と考えると
BSImpliedVol<=>LocalVol<=>ShortVolの関係から実際のVolSurfaceと
Hestonパラメータの関係が見えるのではないかと考えたのですが。
この当たりはまだまだ理解不足な部分でもあるので精進します。

Vanna-Volgaという方法により近似的にとは言えSkewの構造を捕捉できるので
Modelにそこまで入れ込む必要もないのではないかとも思うのですが
所詮正解のない所だけに特にモデルと現実のずれの対処法を考える上で
色々な角度から見てみたいという気がします。

ShortVolとはHestonなどでモデル化されている瞬間的Volのことです。
元が金利の人間のため金利期間構造モデルなどでいわれている Shortrate
のようなのりでこんな呼び方になってしまいました。(失礼しました。)
LocalVolはこの瞬間的Volの条件付期待値の形になっているという認識です。

モデルの話は少々浮世離れしていますが例えばラチェットやコンパウンドオプション
のようなForwardSkew依存な商品のプライシングやリスク管理はここに行き着くのか
と思っています。

このブログはすごく深い内容にふれているので多くの人と意見交換
できるといいと思います。
Willmot Forumのようになるといいですね。

ラチェットはForwardStartOptionの認識です。

しかしEquityはやはり色々な仕組みが出ているのですね。
やはり投資家はアジアのお金持ちなんでしょうか?
昨今日本のデリバティブの状況(特に投資商品)は厳しいですが
復活を期待しています。

Wilmottまで行くと行き過ぎですが日本を含めたアジアの流行物や
トピックについて色々意見交換できるといいですね。

>Equity至上主義論調で書きますから、(いつもそうだという話もありますが)
>怒らないで読んでくださいね。Upは当分先かもしれませんが、お楽しみに・・・。

実は旅行の記事なんかも楽しく拝見させて頂いています。
楽しみにお待ちしております。


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