Black-Scholesは間違っている

昨今よく耳にする金融工学批判や理論批判に対し、今日は少し噛み付いてみましょう。
とはいえ、このような批判は実は一般社会よりは金融機関内に巣食う理解の薄い古株たちに渦巻き
がちで局所的なものなので、一般読者のためにはさらにもう一段噛み砕かないとここで言っている内容
が伝わらないかもしれません。

なので一般の方にもわかりやすいよくある質問や誤解を交えながら、書いていこうと思います。


「Black-Scholes(以下BS)は間違っている」

よく聞く台詞ですが、往々にしてこのようなことを発言する人は、オプションをちょっとかじり、わかった気に
なっているだけで、BSとは何なのかも理解せずに間違っていると批判していることが多いです。

BSは、Wikiで日本語で解説があるほど有名な方程式ですが、ここで言っている事は

Underlying Sが幾何ブラウンに従う時、 (微分方程式を知らない読者は、
読んで字のごとく、μで時間成長して、σでランダムっぽく振舞うくらいの理解で十分です)
そう言えば、当ブログ上、幾何ブラウンという言葉は何度も出ておりますが微分方程式表示は初出ですな・・・

そのコールオプションであるMax(S-K,0)の期待値がBlack-Scholes方程式 (Call Option Price)

であらわされる。

確率密度関数N(x)

d1

という数学・金融工学上の閉じた話で、オプションの市場価格の話とは次元が異なります。

コールオプションとは何かという説明は、株を一定の価格で買う権利とか説明するよりもこれが直感的に
一番わかりやすいと思います。少なくとも私はそうだったのでご参考までに。
2007.12.01: 初めて会った時から好きだった


「BSは間違っている」とか「BSはOutなオプションの価格を説明できない。」と発言するタイプの方の頭
の中にありがちな想定、「オプション価格はBSで与えられる。」という感覚が私には理解できません

幾何ブラウンを規定する時にドリフトμとボラティリティσを指定したのは自分自身であり、そのパラメーター
がオプションの価格を説明できていないのならば、それはBSが間違っているのではなく、自分の入れた
数値が間違っているだけのことです。

オプションの市場価格を説明できるようなVolatilityをBSに与えるというのがBSの常識的な使い方です。


「金融工学の理論を理解すれば、将来の株価が予想できる。」

ブブー。そういうものではないことが理論を理解すればわかります。

もし将来の株価、例えば1ヵ月後のS(T)を1000円とExactに予想するのであれば、現値Strike
800円のCall Optionの価値は200円=1000円-800円の現在価値で然るべきで、そこに
Volatilityだ確率過程だという理論は入る余地がありません。
もっと言えば、1ヵ月後1000円になる株が800円で売られているのならば、株を買えば確実に25%の
Returnがある
ことになりますが、何でこれをみんなこぞって買いにいかないのでしょうか?
これを専門用語でArbitrage Freeと言います。

もう少し踏み込むと、
株価の期待リターンはRiskfreeに帰着するという想定(Risk-Neutral Measure)で、
デリバティブを評価してもよいと言っているだけなので、理論は、株価の期待値がRiskfreeである
とも言っていない
のです。


すいません。やっぱり一般の人には難しい文章になってしまい、一体誰向けに書いてるのか不明に
なってしまいました。次回は幾何ブラウン運動について。

【関連記事】
2009.06.30: FX Optionの対称性
2009.06.16: VAR SWAPのGamma+VanillaのGammaでGamma Neutralになるか?
2009.06.09: お前VEGAの意味わかって無いだろ?
2009.05.12: FX Optionの 25Deltaって?
2008.08.13: Vanilla基礎 GammaとVolatility
2008.08.12: Call Optionと金利ヘッジ問題 
2007.12.10: 金利0、配当0(0Drift) ATM Call のDELTAは50%? 50%超? 50%未満? 
2007.12.01: 初めて会った時から好きだった 

Track Back

Track Back URL

Comments [9]

ご無沙汰してます。ブログ、いつも楽しみにしています。
typo発見したので報告まで。
major->measure

この話は最近多いですね。昔から議論のあるところではありますが、私の好きなデリバティブトレーダーでもある Nassim Nicholas Taleb の一連の著書(現在ヘッジファンドマネージャーである彼のポジショントーク的な香りがプンプンしますが。。。)によるところも大きいのかと思います。
先日のデリオタおじさんではないですが、私はオプションの価値とはダイナミック・ヘッジの定義そのものであり、BSは表現力には劣るものの別に間違っている訳ではないと思っています。(不足部分はすべてVolに転嫁しているのだと思います。)
そもそもBSとは理想化された世界における正しい解ですから、現実が理想と離れた部分を補うのはトレーダーの仕事であり、モデルが間違っているという話はちょっと違うと思います。
この現実と理想の差の部分(表現力の不足部分)は、対象マーケットによって違うでしょうし、アジア株のエキゾさんの見解はすごく興味があります。
MajorCcyPairの為替なんかだと流動性はあまり心配しないでしょうから、やはり焦点は次回の対数正規性になるのだと思います。

Deriva Freakさんが仰る”オプションの価値とはダイナミック・ヘッジの定義そのもの”というのはダイナミック・ヘッジによるGammaで実現する損益はオプションの価値だという意味ですか?それとも他に何かありますか?

BSの世界だとおっしゃる通りです。
ダイナミックヘッジと言ったのは、モデルによって色々定義があるからです。
(カリブレーションしたら結局プライスは同じなんですけどね。)

いえいえ,私はデリバティブをちょっとかじった程度です。エキゾさんにお会いしたことはないと思います。ちなみに、FXの人は連続ダイナミックヘッジのことを何と呼びますか?

コメントする

公開されません

(いくつかのHTMLタグ(a, strong, ul, ol, liなど)が使えます)


画像の中に見える文字を入力してください。

このページの上部へ

Ad

LINEスタンプ「カバコ」公開されました!

top

プロフィール

投資一族の長


サイト内検索

最近のコメント

Twitter Updates