為替オプションの基本勝ちパターン? プッ

T「為替オプションの基本勝ちパターンは、基本vol short, delta JPY Long USD short」

と、とある天才為替オプショントレーダー(以下Tとする)が宣言した。

そう、優秀なる読者諸君は既にコイツは爆弾を踏んでいることにお気づきだろう。

しかし、ブログのネタにするのもあり、この前と同じやり口、
2009.06.09: お前VEGAの意味わかって無いだろ?
で触れたVegaとDelta Hedgeの関係で責め立てるのではプロとして芸が無い。

為替のオプションに触れるようになって思うのが、RRやFLYの流動性、そしてExoticにも流動性があり、いざ
となれば、Exoticそのものを開放できることから、モデルやリスクに対するこだわりが低い。
EURUSDなどは特にSkewも弱く、Volatilityも低いので、Black-Scholesでやっても、わかって使う分には、個人的
には問題ないと思われる
。あくまで、わかって使う分にはな。
だから、為替の世界で、プライシングに解析的アプローチが氾濫していることに対して、とやかく言うつもりは無い。
だが高い流動性は、ValuationやRisk管理を真剣にやる必要性を薄くし、思考を停止させる傾向がある。
(もちろん、そのようなことに意識の高い為替トレーダーの方もいらっしゃるということは十分承知です!!)

冒頭のこの一言で、この為替オプションのトレーダーは、わかってないトレーダーとして私に位置づけられているので
私はこのように質問する。

俺「そのDeltaはSticky Delta(以下SD)それともSticky Strike(以下SS)どっち?

SDとかろうじて答えるものの、なんで私がそんなことを聞いているかそのトレーダーは戸惑っていた。
T「モデルの話ですか?」とか言っちゃったりしてな。

そうだ。期待通りの反応だ。お前はオプションなんてなーんもわかってないのは、俺は最初の一言でわかってる
これから無知の知をお前自身にもわかるように教えてやろう。


俺「モデルっつーか為替オプションのImplied Volatility(IV)の振る舞いとリスク認識の話なんだけどな。
本当にSticky Deltaかー? 
普通に計算する、つまり幾何ブラウン下の解析解を微分してデルタを得る方法だとSSになるんだが。
その違い、自分が見ているデルタの定義もよくわかってないヤツがSDを意識的に定義しているとは思えんがのぅ。
でモデルは何使ってんの?BS、Local Vol?」


T:シーン・・・「理論的なことはあんまわかってないんすけど・・・」

と段々自信を失っていく様子はよくある展開だが、理論なんて俺もわかってねぇよボケ。
(ここの読者には理論をわかっている方もいらっしゃいますので、ここでは謙虚に、私はわかっていないこととします。)


俺「まず、FXのIVのMarket Behaviorとしては明らかにSDだろう。
一方、BS的定義のリスク認識はSSだ。実際使っているのはSSなんじゃねーの?

根拠を言ってやろう。JPY Long USD ShortがComfortableと言ったな。
それはSSを見てるからだ。
USDJPYだったらSkewがある。
加えてお前のポジションは大方、顧客のポジティブキャリーUSDJPY Longを受けた形だろう?
だったら、その分SSのDeltaはSDに比べて若干超過しているはず。

もう一つ、Vega Shortについても言及しよう。
お前がやっているような典型的なキャリーペアには為替でもあってもスキューと非対称性がある。
つまり、Spotがドスンと下がった時に、Volatilityが上がる傾向があるペアだろう。
先ほどのDeltaの超過ポジションで発生したDeltaの損益を経験則的にVegaに振り替えているに過ぎない


お前、俺が何言ってるか全然わかってないだろ? 本当にSSとSDの違い認識してるのか?
AUDJPYだったらもっときついぞ。どうやってデルタ計算するんだ?
解析式微分で無い場合は、定義は一意じゃないぞ?

それをサッと答えられない時点で、俺がお前のボスなら、「お前アウト」って死刑宣告しちゃうね。
Deltaの定義も確認しないで、LongだShortだって全くナンセンスなんだよね。
勝ちパターンだと?相当面白いよお前。」


とここまで来ると誰しも現実が理解できるようである。

俺「どうした?目にゴミが入っちゃったかな?男子便所はあっちだぜ。」と優しく言ってあげましょう。


【金融工学理論の実践】
2009.10.08: 亀井さん日経平均先物禁止
2009.10.06: Black-Scholesは間違っている2
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2008.09.21: CDSはCorrelation Derivatives
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Comments [3]

リスクの認識は難しい問題で、市場参加者のスタンスや流動性
によって変えるべきなのではないかと思います。
現時点における私見はこのようなイメージです。
正解だとも思っていないので、ご意見を頂けたらと思います。

短期Vanillaで、RR、FLYの流動性がある環境なら
デルタをSSで見てもSDで見てもポジションをニュートラルに
することは出来ると思うのでどちらでもいいような気がします。
投資家の期待効用の影響が色濃く出るフィールドだと思うので
逆にSDで見るより、SS+Vanna+Volgaで見て
RRやFLYを使って変なリスクも一緒にキャンセルした方が
いいこともあるのでないでしょうか。

短期Exoは、RR、FLYの流動性があっても
ExoのリスクプロファイルはRRやFLYで消しきれないですから
SS+Vanna+Volgaで見てDynamicにコントールするか
Semi-Staticにするかでしょうか。
商品特性やポートの大きさにより一概には言えないと思います。

長期Vanilla/Exoで、流動性が落ちてくると
リスクのかなりの部分をSpotでカバーせざるを得なくなり
デルタの定義とモデルのパラメータ推定が肝になってくると思います。
しかし、こちらは比較的リスク中立な世界なのでSD的な
アプローチは短期よりもし易いと思います。

一般的に数値解と感応度の関係はモデルのカリブレーションの過程
と関連があると思いますので、説明力の高いモデルであるほど
そのモデルでBSのIVは何を表すのかやパラメータ間の相関性の
ようなものの影響は頭に入れておくべきだと思います。

LVにおけるVegaコントロールとRR、FLYの使い方はすごく
興味ありです。楽しみにしています。

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