東証アローヘッド導入のインパクト

たまたま東証の方と話すこともあり、かつまた新聞記事もあったので、アローヘッド導入のインパクトというか意義を考えてみた。
アローヘッドは、東証の値段付け合わせタイミングを3秒に1回から数ミリ秒に1回に変更したというものである。
tse-arrow-head.png
その結果として、売買代金は変わっていない、ティック回数が増え、1注文辺りの売買代金が減っている、とある。
これらのデータまたは記事を読んで、東証がコストをかけてまで導入した意義が理解できるだろうか?
あるいは投資家のニーズ、すなわち投資家のメリットは何か?

株のスペシャリストである友人に問い合わせたことをまとめておこう。

欧米を始めとして、High Frequency Trading(HFT)というのが台頭している。最適執行義務という考え方があ
り、最安値で売買を執行すべき
という縛りがある。
EuropeだとMifid(Market in Financial Instruments Directive)という枠組み、
AmericaだとReg NMS(Regulation National Market System)と呼ばれている。

システム発注、および、その高速化が行われたことにより、取引所に良いOffer/Bidが無い場合、他のVenueにその注文
が回送される
。それは、ECN(Electoronic Communications Network)や、Dark Poolと呼ばれ、
そこで出来を作る仕組みが一般的になっている。つまり、全てのVenueが電子的に、さらに、高速に回送される仕組みが整って
いると、最適執行が実現可能なわけである。

一方、日本の場合、東証があまりに執行スピードが遅すぎることに加え、電子取引の未発達で、他の電子取引システム(PTS)
が、それらが全く効力をはっきできなかった。PTSは、メインマーケットである東証が高速で、かつ、そこにBest Bid/Offer
が無かった場合、初めて、機関投資家やHFの注文の「おこぼれ」をもらえる
。日本の最良執行は、強制力に欠けているので、
インフラ整備に皆が、もとい、取引所が走らなかったという背景がある。

流動性が高まる、スプレッドが縮まる、レイテンシーが限りなく小さくなり、顧客満足度が上がるなど、色々とメリットがあるが、
HFTの顧客をグローバルに取り込み、全体のパイを日本の市場に取り込めるという真の狙いなのである。(というよりはやらない
と置いていかれてしまうという方が現実に近いかもしれない)。市場分断化(沢山のVenueが立ち始めた)が進行した結果、市
場間裁定の機会が発生し、HFTが台頭してきた。付け合せを小刻みにすることでより精緻で取引コストの安い、取引所ネットワ
ークができ、それによって、取引所間競争が起こるということを見越した判断
と言えるのであろう。日本以外のアジアにおい
ては、最良執行の考え方やPTSなどはまだ未発達ではある。

巷で言われている「1カイ、2ヤリができなくなる」とか、この新聞記事の記述のように、板を見ながらマニュアルでがんばると
いった手法が通じなくなるということは、市場の発展という観点では全く重要ではない。

より細かいTickや最低売買単位株数の引き下げ等の議論もあろうが、ついでなので、最適執行の法整備に加え、日本市場
(もしくはアジア市場)に望む私のリクエストを述べておこう。

最低取引単位株数と議決権について

日本では、最低取引単位の引き下げが推奨された結果、裁定取引単位株数と議決権が一致しているゆえ、小口投資家に対し
て、株主総会案内、営業報告書送付などの不要なコストを上場会社に強いている
ことを危惧している。小口投資家が議決権
や企業の財務や営業報告に関心が高いことは少なく、彼らには、配当受給権を与えておけば十分
だと思われる。私が見かける
運用は、名義書き換え無し、証券会社名の保有にすることで、細かなディスクローズ資料の配布を回避し、配当だけ振り分
けるものである。
そして、株主総会で、明らかに最低売買単位数しか持っていなさそうな株主がなんとも間抜けな質問するのも回避することが
できるであろう。悪意ある大株主の意向で、最低取引単位1株で、1,000,000株で1議決権とすれば、1,000,000株以下の株
主を総会で一掃できてしまうから、小口投資家は、名義書き換え不要株主として参加してもらうのが一番健全なのであろう。

【金と金融の意義】
2010.02.09: デリバティブ理論講座のお題
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