ミサイル防衛 大いなる幻想

Ballistic Missile Defense 弾道ミサイル防衛

弾道ミサイルに、大陸間弾道ミサイル(ICBM)がある。多くは核弾頭を搭載する射程が5500km以上の弾道ミサイルで
地上から発射された後、上昇しながらブースター・ロケット(通常三段階)を切り離し、5分ほどで燃料を燃やし尽くす。大気圏
外に飛び出し、真空中を秒速7km(時速25,000km)に近い高スピードで飛行する。地球を4分の1周する距離を30分
以内の時間で攻撃できる。大気圏外で弾道を切り離す。弾頭が大気圏に再突入した段階では秒速900m(時速3200km)
以上のスピードであり、再突入後、数十秒で爆発に至る。

弾道ミサイルの攻撃から守る軍事手段としては、発射前に発射台や制御手段を破壊する方法がある。しかし、隠された発射シス
テムや予告のない発射を想定するとこの方法には限界があり、結局、向かってくるミサイルに対するに対する「盾」を開発するしか
ない。ミサイルを撃ち落す兵器としては、迎撃ミサイル(インターセプターと呼ばれる)とレーザー兵器が開発されている。大気圏
外を飛ぶICBMの速度は秒速7kmに達するから、ICBMの迎撃には秒速7-8kmの迎撃ミサイルが開発される

レーザーBMDシステム、米国は空中配備レーザー(ABL)と宇宙配備レーザー(SBL)を開発している。数機のボーイング747
に高出力化学レーザーを搭載して、高度約13,000mでパトロールさせる。衛星が、敵ミサイルの発射を知らせると、最寄りのAB
L機が急行して敵ミサイルを自らのセンサーで捕捉し、レーザー・ビーム照射によって破壊する。宇宙配備レーザーは、レーザー兵器
を地球周回軌道に乗せる。そして宇宙からブースト段階の敵ミサイルを破壊する。敵ミサイルの追跡、レーザー・ビーム照射の照準
合わせなどの目的に、それぞれ別のレーザーを使用しなければならず、複雑な相互調整からくる諸問題がある。ましてや、巨大で微
妙な装置を宇宙に打ち上げ、大電力を維持するSBLに至ってはまだ初期の研究開発段階であり、技術的な問題はまったく見通
しがたっていない。

ロシアからの視座

過去10年間、私たちは核兵器拡散防止の努力が、全く停滞した状況を見てきた。ロシアと合衆国の両大統領が署名したにも
かかわらず、STARTⅡはいくつかの理由で成功しなかった。その主な理由は、NATOがロシア国境まで拡大する計画を実現を
目指し、ソ連消滅後に唯一の超大国となった米国がNATOの協力を得てコソボで激しい爆撃を行ったため、共産党の支配的な
ロシア議会が同条約の批准を望まなかったからである。包括的核実験禁止条約(CTBT)、核不拡散条約(NPT)はまったく
機能しておらず、人類は新たな核軍備の時代へ急速に向かっている。

ロシア側から見ると今日の主な障害は核兵器問題に関する米国の立場である。STARTⅡやCTBTの付随文書を米議会上
院が批准しそこなったこと、米ロ両国の戦略核軍備を1500発へ削減するというプーチン氏の提案をクリントン前大統領が支持
しなかったこと、1972年のABM条約(対弾道ミサイル制限条約)についていっているのではない。もし米国がNMD(国土ミサ
イル防衛)の開発を続行すれば、ロシアはSTARTⅡ、CTBTから脱退する
だろう。確かにクリントン前大統領はNMDシステム
配備の延期に合意した。しかしNMDほど米国で知られておらず、ロシアや世界のほかの地域ではさらに知られていない他の対ミ
サイルシステムについて、彼は何も語らなかった。私は紛争地域の米軍を守ることを目的とする、戦域ミサイル防衛(TMD)につ
いて言っているのである。戦域防衛計画、戦域高層地域防衛(THAAD)、改良型パトリオット(PAC-3)、海軍戦域防衛
及び、海軍地域防衛はNMDにとって代わる候補になる可能性がある
。TMDとNMDの区別はあいまいである。

中国の懸念

NMDは中国の安全を害する

NMD計画によれば、米国は配備の第一段階において100発の迎撃体をアラスカ州に配備する。4分の1の迎撃率をもつとすれ
ば、米国は最大で同国に向かってくる25発のミサイルを撃墜できる。これは米国を標的として長距離ミサイルを開発しているとい
われる「問題国家」の脅威に対抗する能力としては十分以上のものである。中国側から見ると、米国が「問題国家」のみを念頭に
おいて600億~1000億ドルを支出しているという説明は納得できないのである。そのような問題国家が保有する弾道ミサイルに
よる大陸間攻撃能力は、いまだ存在しない
。核保有を宣言した5カ国を除けば、イスラエル、サウジアラビア、インド、パキスタン、
朝鮮民主主義人民共和国そしてイランのみが現在射程距離1000km以上の中距離ミサイルを保有していると考えられている。
これらのうち、インド、パキスタン、北朝鮮、イランの4か国は、射程距離3000km以上の中距離ミサイル開発のために進行中の
計画を持っているかもしれない。しかし、そのいずれかが、ここ10年かそこらで大陸間弾道ミサイル能力を取得することはきわめて考
えにくい。現在のところ、ロシアと中国のみが、ICBMに積載した核弾頭で米国を攻撃する能力を有している
中国は自国の核能力を公に透明化していないけれども、13,000kmの射程距離を有し米国に到達できる能力を持つCSS-
4ICBM戦力は、西側の戦略問題の分析家によっておよそ20発ほど
であると考えられている。ロシアが数千の戦略核兵器を自由
に使用できることを考慮すれば、米国が思い描いているNMDはロシアの全面核攻撃を阻止することはできない。それゆえに中国政
府は米国のNMDは中国の戦略抑止力を事実上無効にすることを意図している、との見方をとらざるを得ない。

大量破壊兵器のない中東

1996年、エジプト空軍のムハマド・エルシャハト将軍は記者会見を行い、ミサイル防衛システムを建設するためにエジプト政府が
講じるさまざまな措置に言及した。彼はイラクによって発射された弾道ミサイルの多くが米国のパトリオット・システムによって迎撃
させた1991年の湾岸戦争から得た教訓について語った。また。エジプトが購入、開発するミサイルとミサイル防衛システム
をいくつか列挙した。結果として軍備競争が始まった。それはさらにエスカレートするだろう。なぜなら、ミサイルと対ミサイ
ル・システムを使った米・イスラエル共同軍事演習が2001年2月19日にイスラエルのナカブ砂漠で行われたからである。
中東はすでに非核兵器地帯が設立された他の地域とは違う。既存の非核地帯では地域全てにおいて核兵器は存在しな
かったが中東の一国であるイスラエルは、かなりお保有核兵器とミサイル防衛システムを取得している。イスラエルの兵器
によって狙われている死の脅威に対抗するため、この地域の他の国は、化学兵器または生物兵器とその運搬手段を取得
しようとするかもしれない。

1940年代、マーシャル諸島民は、米国による一連の核実験のためにビキニ及びエニウェトク環礁の住まいから退去させられた。マ
ーシャル諸島民は1946年から1958年の間に67回行われた米国の核実験から生じた放射能の遺産と供に生活している。
1999年10月、クワジャリン環礁でミサイル防衛システムの実験を行った。カリフォルニア州で発射されたミサイルから射出された
一発の模擬核弾頭は、クワジャリン環礁から発射された迎撃ミサイルによって空中で撃墜された。つづいて2000年1月と7月に
行われた2度の実験では、標的に当たらなかった。ペンタゴンはクワジャリンであと16回のNMD実験を続行するつもりであり、各実
験に1億ドルがかかるであろう。今日、クワジャリン環礁開発局と土地所有者に支払われる借地賃料は、毎年1300万ドルに及
んでいる。クワジャリンで雇用されている1277人のマーシャル諸島民のうち、1060人以上はレイセオン・コーポレーションが経営
するレンジ・システムズ・エンジニアリングとインテグレイテッド・レンジ・エンジニアリングで働いている

NMDの支持者は、敵は潜在していると言う。米国の納税者の支持を生み出すためには、どこかに敵の姿を描写しなければならない
からである。フランシス・フィッツジェラルドは、著書『青空への脱出』の中でNMDは「スターウォーズ」として知られた1980年代の評判
の悪い戦略防衛構想(SDI)の後継者であると指摘している。それは実現不可能な一国的安全を求める米国のイデオロギー的
な極右派によって推進されている。NMDの口実とされるちっぽけな北朝鮮の亡霊は、本当の目的のためのごまかしに過ぎない。
本当の目的は宇宙兵器の開発と21世紀の宇宙志向の戦争の準備であり、あらゆる起こりうる紛争の戦域における米国の全面
的な軍事的優位の確立である。これらのすべてにおいて、すでに最高を記録している軍産複合体の収益は莫大なものになろう。

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