史上最大のボロ儲け ~タイミングの違い 4/6

一方西海岸では、ジェフリー・グリーンが深刻な損失を被っていた。グリーンはポールソンがファンドをスタートさせる数ヶ月前から
取引を行っていた。そのため2006年夏に市場が反発を続けると、それまで下落していたCDSの価格はさらに下落し、ポール
ソンよりも多額の損失を受けることになった。その夏までにグリーンの損失額は500万ドルに上った。グリーンはポールソンに連
絡を取り、この市場について話をし、CDSを保有し続けるかどうか聞きたかった。ポールソン宛にメールを書いた。東海岸に帰る
時には君に会えるのを楽しみにしている。ところでまだ君のファンドに出資することは可能だろうか?そして何気なく、自分がまだ
CDSを保有していることも添えておいた。グリーンにはポールソンの反応はわかっていた。激怒するに決まっている。すぐに返事が
来た。「私のファンドに君は必要ない。君は恥知らずだ。」
 グリーンは一人でどうにかしなければならなかった。毎朝11時にベッドから起き出すとすぐにブローカーのアラン・ザフランに電話
をし、「今日の価格はどうだ?」と尋ねた。ザフランの返事によれば、グリーンのCDSの価値はたいてい前日より下落していた。
サブプライムローンの需要は小さくなるどころか大きくなっていた。トレーダーに見積もりを依頼しなければCDSの評価額を知るこ
とができないのも苛立ちの種
となった。住宅市場は行き詰っているようなのになぜCDSの価格が上がらないのか?
 ある日グリーンはカントリーワイド・フィナンシャルの経営が悪化していると言う新聞記事を目にした。確かにABX指数は下がっ
ていた。しかし、グリーンはABX指数を原資産とするCDSだけでなく、ほかにもさまざまな住宅ローンのCDSを保有している。
こちらはさらに値下がりしていた。「冗談じゃない!カントリーワイドの記事が新聞の一面に出ているんだぞ。どういうことなんだ!」
グリーンは声を荒げた。しかしやがてグリーンは電話をするごとに評価額が少しずつ上がっていることに気づいた。これにはグリーン
も喜んだが、今度はメリルリンチがどのように評価額を決定しているのか疑問を抱くようになった。メリルリンチのスタッフはいつも最
新の評価額を伝えているとしか言わなかった。今では住宅価格が下落しつつあるというのに、住宅ローンのCDSはほとんど動き
を見せない。グリーンには、このCDSにどれだけの価値があるのかわからなくなっていた。

>グリーンさんよぉ、俺はな・・・流動性の低いものほど密かなエクスタシーを感じるんだ。
>そんなに時価が好きなら先物でもやればいいのでは?

 マイケル・バリーはグリーンよりもさらに追い詰められていた。バリーはポールソンよりまる1年も前から住宅市場を悲観視し、当
時誰からも需要のなかった金融会社のCDSや不動産担保証券のCDSを買っていた。しかし2006年半ばまでに、その価格
はかなり下落していた。前年までは、株の銘柄選びに成功したおかげでその損失を穴埋めできたのだが、2006年には株でも
大した成功を収めることができなかった。CDS取引のせいでファンドは最悪の赤字を出していた。2006年8月、バリーはブロ
ーカーからの電話である事実を知った。サブライムローン関連のCDSを手当たり次第に買っている人物がいると言う。それなら
自分のCDSの値段も上がってくるだろう、バリーはてっきりそう思った。しかしブローカーはCDSの評価額の調整を認めず、バリ
ーの情況が好転することはなかった。評価が古かったり、ブローカーごとに評価が食い違ったりする場合もあったようだ。例えば
同じ日に同じCDSの価格がブローカーによって異なった。また評価額がまる一週間更新されないこともあった。2006年後半
になるとバリーは会社の信用を守るためにどうにかしなければならないところまで追い詰められた。そこでしぶしぶながら一部のCDS
を売り、不満を抱いていた顧客に資金を返還することにした。これまでバリーはカントリーワイド、ワシントン・ミューチャル、AIG
など危険な会社にあると思われる金融会社の企業負債70億ドル分のCDSを保有
していたが、続く3週間にそのほぼ半分を
売却した。しかしバリーが売ったタイミングは最悪と言ってよかった。当時のウォール街には住宅市場を悲観視している者などほ
とんどいなかった。売却した負債30億ドルのCDSは当初、年間およそ1500万ドルの保証料が設定されていた。しかし今
そのCDSを買えば年間保証料はたった600万ドルですむ。CDSを売ることでバリーは多額な損失を被った。


ついに始まった崩壊

2月(2007年)のファンドの成績を郵送した。するとある大口顧客から広報担当のジム・ウォンのもとへ電話がかかってきた。
成績の内容に当惑しているような声であった。「これは誤植ですかね?66%じゃなく、たぶん6.6%なんですよね?」しかし誤植
ではなかった。2つのクレジットファンドでは総額10億ドルを投じ、サブプライムローン110億ドル分のCDSを購入していた。そ
れに加え、合併ファンドなどほかのファンドの資金を10億ドルほど利用し、さらに140億ドル分のCDSを購入していた。これ
らのCDSによりポールソンはすでに20億ドルという途方も無い利益を手中に収めていた。CDSが契約満了になるまで全額の
支払いをためらう銀行もあったが、ペレグリーニたちスタッフは契約条項を盾に取り、支払いを認めさせた。契約の履行に応じられ
ないと言っていたある銀行も最終的にはその言葉を取り消し、必要な担保を提供した。いわば巨額の逆マージンコールである。
いずれも素人が専門家を締め上げる形
となった。利益を確定させるため、ポールソンは少しだけCDSを売却したが、住宅市場
がさらに悪化すると信じ、大部分はそのまま保有し続けることにした。

>すごい・・・ここで確定させないところがすごい・・・俺には無理だ・・・

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