Calender Spreadのススメ

Target Buy、Covered Callなどの低次元なDirectional Betが資金効率が良く、わかりやすいのは否定しないが、純粋なOption Play(あえてオプション投資とは言わない)の場合、Calander Spread(CALD)は、実に有用であることをご紹介したい。

Equity DerivativeのOption,Put/CallにおけるCalender Spreadとは、同一StrikeのPutもしくはCallの期近を売り建て、期先を買い建てるポジションを指す。Calenderの売りとは、期近を買い建て、期先を売り建てるポジションを指す。原則として、オプションのコンビネーション戦略の場合であっても、ポジション全体でプレミアムの受けとなる場合をShort、払いとなる場合をLongと呼ぶ。例えばPut Spreadの場合、ITM売りのOTM買いのような全体でプレミアム受けのポジションはPut Spread Shortと表現する。例外として、Butterfly(FLY)はプレミアム受けの場合をButterfly Longと言うが、これは唯一の例外事項である。

Calenderの損益曲線は、Butterflyに近いが、最大の特徴は、Gamma ShortのVega Long、すなわちポジティブキャリーのオプション買い(※損失限定)のポジションである。StrikeからSpotが大きくずれると、Gamma Longのネガティブキャリーではあるのだが、期先のオプション>期近のオプションというCalender Arbitrageが働いている以上、最初に払ったプレミアム以上はやられないという損失限定のポジションである。(注:ITMになりすぎるとAsk/Bidが広がり、UnwindにそのSpread分だけマイナスになることがありうる)

※:あえて本の題名には言及しないが、有名な本の中でCalender Spread Longは損失無限大と"間違った"ことを書いていたので、損失限定ということを強調しておきたい。Calender Shortは無限大、そうは言ってもCallはS、PutはXという最大値がある以上、正確には無限大ではないの。ただ、Put Shortは実際には最大損失Xなのだが、無限大と見なすという意味でCalender Shortは"無限大"である。

ButterflyとCalenderの使い分けは、Implied Volatility(IV)の相場観で、IVが高い時はVega ShortのFLY、低い時はVega LongのCalenderとなるが、Calenderの構築コストの気軽さは低Volatilityな環境であれば、非常に有用である。

Calenderの主なエクスポージャーとリスクは下記の3点である。

1)Strikeへ向けてのDelta(Forward=Strikeになると最大収益確保)
2)期近売りによるNet Gamma Short(ゆっくりとStrikeに向けて株価が動けばキャリーポジディブ)
3)期先買いによるNet Vega Long(Volatilityが上がれば儲かる)


上がると思えば、Call買い、下がると思えばPut買いという稚拙な素人戦略で、ネガティブキャリーに苦しむくらいなら、上がると思えばCall Calender(少し上方のCalender Spread)は、非常に楽なポジションとなろう。Buterflyと比較しても、一番儲かる満期直前の激しいポジティブキャリーはDelta OneのエクスポージャーとGamma Shortにさらして得られるわけであるが、Calenderの場合は、満期直前でもDelta Oneとはほど遠い低Delta Exposureに留まるところが持ち越しが楽な理由である。欠点としては決済リスク、FLYは同一満期なので、放っておいても最大損失は限定されるが、CALDの場合は期近がExpireするまで持ちきってしまうと、 「期近の清算値<Coverしている期先の市場値」 が担保されていないので、持ちきりにリスクが伴う。

ここからは実際にポジションを取ってみないとわかりにくい感覚であるとは思うが・・・

途中で決済する場合、Ask/Bidが広い期先の売り指値を入れて、入ったら期近の買い戻しをするというオペレーションとなるが、ITMまで食らいこんでいる場合、売り指値が入らない方向に先物が動く=Strikeに株価が近づく=CALDポジション有利な相場展開なので、悠長な売り指値で待てるが、OTMの場合は、売り指値が入らない方向で先物が動く=Strikeから株価が遠ざかる=CALDポジションに不利な相場展開、となる点は指摘しておこう。

【理論:Vanilla・幾何ブラウン】
2011.03.22: ButterflyはなぜVolga Longなのか?
2010.03.24: オプションセミナーに行ってきました@SGX
2010.01.08: 50% Knock-In PutのPremiumって実現できるの?@理想的な世界にて 
2009.06.30: FX Optionの対称性
2009.05.12: FX Optionの 25Deltaって?
2008.08.13: Vanilla基礎 GammaとVolatility
2008.08.12: Call Optionと金利ヘッジ問題 
2007.12.10: 金利0、配当0(0Drift) ATM Call のDELTAは50%? 50%超? 50%未満?


 

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Comments [4]

ひさしぶりにコメントを。。。


こういうデリバティブの記事は読んでて楽しいですね。
今後も楽しみにしています!

いやー、この辺の概念は、実は結構やり込まないと分からないですよね。
最後に決済リスクを言及してるのが「エキゾチック」らしくて締まりますね。
個人的に、ディープITMに飛んじゃって両方共に先物化しちゃったおバカな思い出がございますです。

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