解明・拓銀を潰した戦犯 1/4 ~破綻への道

21世紀ビジョン

80年代、銀行経営は冬の時代だった。突如として金融自由化の波が押し寄せてきたからだ。戦後疲弊した国土と経済の復興を支えるため、国内には強力な行政指導の金融制度が敷かれた。これが次第に海外から痛烈な批判を浴びるようになる。世界経済の舞台で急激に台頭して来た日本に対し、「行政による強力な金融統制によって国際競争力を蓄えている。アンフェアだ」というのが海外の言い分だった。金融機関が自由に金利を決め、業務の垣根をなくし、欧米と同じルールでビジネスを行うという金融自由化の流れが、こうした外圧により日本国内で決定付けられたのが80年代半ばだった。

規制金利時代、銀行は預金と言う資金量さえ伸ばせば、自動的に儲かると言う仕組みだった。だが、この従来の経営手法は自由金利の下、手詰まりとなっていた。そんな中、プロジェクト融資や不動産融資で派手に稼ぐという方式が各行の間に急速に広まっていく。住友銀行がその先頭を切った。当時の磯田一郎頭取は、「向こう傷は問わない」と、高収益を上げるためなら多少の荒っぽさを容認した。激しい嵐のような時代の中で、拓銀は焦りを募らせていた。都銀の中では業容、収益力ともに最下位。収益競争の激化で、上位行との差は広がり、一方で地銀上位行に激しく追い上げられて一部有力地銀には逆転を許す始末だった。鈴木茂頭取は当時の行内の会合でハッパをかけた。だが景気の波はいつも北海道には遅れてたどり着く。一般消費者を巻き込んで株式ブーム、不動産ブームが道内で始まったのは、首都圏、関西圏よりワンテンポ遅れていた。ようやく拓銀が他行並みに不動産融資のアクセルを踏んだのは、「88年ごろ」とされる。完全な出遅れだった。だが、その分、闇雲に走り始めた。

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そんな中で生まれたのが「21世紀ビジョン」策定の構想だった。プロジェクトチームの始動は、頭取が鈴木から山内にバトンタッチされて間もない89年10月。住友銀行など大手行の戦略策定を手掛けた経営コンサルタント会社マッキンゼーに策定作業を依頼し、同社から若手5人、拓銀から入行10年目前後の中堅7人がチームに参加した。同ビジョンに伴う新体制がスタートすると、付け足しだったはずの4本目の柱、「企業成長支援・不動産開発機能」、インキュベーター路線がいつの間にか主役に祭り上げられていく。拓銀はカブトデコム、ソフィアなどのバブル企業への巨額融資にいよいよのめりこむことになる。

総合開発部

拓銀本店4階の一室は異様な熱気を放っていた。部の一角には担当役員の個室があった。そこに座ったのは海道弘司常務。人の配置は業務推進グループ8人に対して審査グループはわずかに2人。審査機能は極めて軽視されていた。80年代前半、銀行業界では融資業務のスピードアップと効率化のため審査部の廃止が相次ぎ、業務推進と審査の各担当が同居する業務本部制が流行した。

ニューリテール

1991年夏、拓銀は本州で、中小企業主や富裕層をターゲットに土地や財産を運用するのが狙い。しかし、独自戦略が幻想と気付くのに時間はかからなかった。他の都銀はバブルが始まった80年代後半から、資産家向けの営業を始めていたのだ。しかも拓銀が融資決済に3日かかるのに、富士銀行では1日で終わる。ある都銀の関係者が振り返る。「どこの都銀もやっていたこと。ことさら拓銀が頑張っていたわけじゃない。むしろ取り組みが遅れたほうじゃないの」 拓銀の融資は暴力団が手を染めた土地や零細企業に向わざるを得なかった。だが、そこにも、「都銀と住む世界が違う」一部の信用金庫や信用組合が食い込んでいた。92年に入ると地下は急坂を転がり落ち始めた。ニューリテールは行内でも言葉の端にも上がらなくなった。「戦略が始まった時、都心になぜ空き地が増えていったのか。そこを分析すればもっと他にやることがあったはず」と振り返る。

SSKトリオ

鈴木会長、佐藤副頭取、海道常務の3人、そのラインの強固さは行内外に鳴り響き、いつしか3人の頭文字を並べて「SSKトリオ」とも称されるようになっていた。 「現場のことを何も分かっていないのに、何を言うか!」 当時のある役員は行内の会議で突然、常務の海道に一括され驚いた。その役員が全盛だったカブトデコムの経営内容に関してわずかな疑念を挟んだ瞬間の反応だった。当時、海道はしばしば、このような強弁で他を圧倒した。もちろん、カブト、ソフィアなどを担当する海道が、業務の上で最も実績を残している側面もあった。だが、それ以上に周囲を萎縮させたのは、海道の後ろ盾に佐藤、さらには鈴木が居ることだった。拓銀の歴代首脳の経歴をたどると、「企画」「人事」「組合」という3つの畑が圧倒的に多い。だが海道はいずれにも属していない。押しの強さと剛腕で常務にまでのし上がった

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