グーグル秘録 完全なる破壊 4/7~インターネットメディアとして

勃興するメディア、衰退するメディア

「我々の収入として、いくら保証してくれるんだ?」とカーマジンは尋ねた。提示額はカーマジンにはあまりにも低すぎた。グーグルの数学的アプローチは完全に間違っていると感じた。「我々は視聴率1%あたりのコストを売っているわけではない。もっと別のもの、熱い何かを売っているんだ。そこのところをグーグルは理解していない。グーグルは視聴率1%は、一定の視聴者数に対応し、それは一定の広告料に対応していると考える。しかし、『デスパレートな妻たち』(ABCで放映されている人気ドラマシリーズ)のスポット広告を売るのはまったく違うことなんだ。」一方、グーグルから見れば、カーマジンは効率の悪い時代遅れのやり方にしがみついているように映った。


伝統メディアの新たな脅威はグーグルだけではなかった。ヤフーは「ヤフー・ファイナンス」のような人気コンテンツに加えて、ウェブ用の番組を作成するためにはハリウッドの大物ロイド・ブラウンを迎え入れるなど、コンテンツ・ビジネスに攻勢をかけていた。2005年時点のユーザー数は、世界で5億人を超えていた。その年、ヤフーの利益は11億ドルに達し、時価総額はバイアコムとCBSの合計、もしくはウォルト・ディズニー・カンパニーのそれに匹敵する500億ドルという水準に達した。グーグルは2005年だけで、ネット企業を15社買収したほか、62箇所の事業所では、7000人の社員が働いていた。そのうち30ヶ所は海外にあり、売上高の4割を占めるようになっていた。2005年末までに116の言語で書かれた、80億超のウェブページにインデックスを付けた。売上高は61億ドルにまで膨れ上がり、純利益は15億ドルに達した。

一方、伝統的メディア、新聞の発行部数は、2004年、2005年と急落した。日刊紙の部数は2003年から2006年にかけて6.3%減少し、日曜版の部数は8%落ち込んだ。1950年以降、毎年1桁台後半の伸び率を維持してきた新聞の広告収入は、2001年からの7年間で4回減少、2006年には減少幅が広がった。投資家はグーグルのような会社には成長を期待したが、新聞社には成長が見込めないと判断したため、新聞各社の株価は急落した。2005年の下落率は平均20%に達し、成長力のある会社を買収して、多角化を測ろうにも資金的に難しくなった。


ユーチューブ買収 新聞王のマードックがマイスペースを買い、伝統メディアも目が覚めた。コンテンツの支配権をめぐり戦いが始まった。
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大胆不敵なメディア王ルパート・マードックは、ときに常軌を逸した行動に出る。2005年7月の事件はまさにそのケースだった。オーストラリア、それからロンドンでまず一紙から出発したマードックは、両国で新聞帝国を築き上げると、イギリスの新聞業界の近代化を強引に推し進めた。3大ネットワークの視聴者の高齢化が進んでいたアメリカでは、若者中心の番組を放映する先駆的なFOXテレビを立ち上げた。さらに世界の大半をカバーする衛星放送網も構築した。ケーブルテレビ向けの24時間放送のニュース専門チャンネル、FOXニュースは同分野でトップに君臨していたCNNを視聴率で追い抜いた。ジャーナリズムの観点から言えば、マードックは有害な影響を及ぼしてきた。カレント・アフェアーではテレビのワイドショー化に拍車をかけ、FOXニュースのほか、ロンドンの大衆紙サンやニューヨーク・ポストを使って19世紀風の党派色の強い派手な報道を煽った。

マイスペース・ドットコムを5億8千万ドルで合い収支、またしてもライバル達の度肝を抜いた。若者に人気のSNS兼音楽サイトであるマイスペースは、創業からわずか2年で月間1600万人のビジターを集めるまでになった。ビジター数はその後14ヶ月でさらに4倍になった。マードックが買収を発表するまでは、サムナー・レッドストーン会長率いるバイアコムが、マイスペースを買うものと見られていた。若者を中心に月間8000万人以上が視聴するMTVを傘下荷物バイアコムとは相性もよく、バイアコム社長のトム・フレストンがマイスペースと買収の合意目前であることも周知の事実だった。マードックはマイスペースを手に入れることで、ニューズ・コーポレーションを中心とする新たなものの見方を植えつけようとした。対照的にバイアコムはMTVオーバードライブと銘売った音楽サイトを立ち上げ、テレビの感覚をネットに持ち込もうとしたが失敗に終わった。

グーグルは劇的な変革を進めていた。2006年10月には、マードック、バイアコム、そしてヤフーを出し抜き、16億5千万ドルでユーチューブの買収に成功、メディア業界の度肝を抜いた。グーグルにとっては過去最大の買収であり、実際ユーチューブはとほうもない影響力を秘めていた。当時29歳だった共同創業者のチャド・ハーレイによると、ユーチューブを売却した理由はきわめて単純で、爆発的な成長に資金が追いつかなくなったためだ。「創業した頃は、1日100万件のアップロードがあれば大成功だと思っていた」とハーレイ。実際のアップロード数は、その数百倍に達した。「処理能力がパンクして、サーバーがダウンするんじゃないかって、びくびくしていたよ」 グーグルと手を組めば、投資資金、サーバーやコンピュータ、人材が手に入る。それにパートナー探しや広告の見せ方を考えるのにも役に立つはずだ、とハーレイは語った。「僕らには会社を大きくするための経営資源が必要だった。それまではわずか60人で世界の重みを支えている気分だった。資金を調達し、人材を集め、時間をかけて成長することもできたかもしれないけど、創業当初のグーグルと違って、僕らは目立つ存在だった。競争にもさらされていたし、旧メディアからも攻められていたんだ」


ベライゾンとバイアコムの経営者のうち、よりあからさまな敵意を見せていたのはバイアコムのサムナー・レッドストーンだ。レッドストーンの2006年後半から2007年初頭にかけて、ユーチューブにバイアコムが著作権を持つ10万本の動画を、ただちに削除するよう求めた。バイアコムCEOのフィリップ・ドーマンは、グーグルはユーチューブにどんなコンテンツがアップされようと、"まったく無頓着"だと確信するようになった。アル・ゴアの映画『不都合な真実』の全編が、バイアコム傘下のパラマウント映画が公開した直後にユーチューブに載ったことが、まさにその証拠だ。「まったくやりきれなかった。だからコンテンツを削除しろとグーグルに通告したんだ」 ユーチューブはスパムやポルノ、差別発言といったコンテンツはしのごの言わずに排除している。それなのにバイアコムが著作権を持つコンテンツの掲載を防げないというのはどういうわけだ? とドーマンCEOは憤る。レッドストーンとドーマンが何より腹に据えかねたのは、ユーチューブに掲載されるコンテンツを監視するために、毎月10万ドルものコストを負担しなければならないことだった。グーグルのエリック・シュミットは、監視責任はそもそも著作権者と利用者が共同で負うべきものだと、デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)に書いてある、と反論する。どのコンテンツが著作権で保護されているかは、著作権者にしか分からないじゃないか、と。

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