中国人民解放軍の内幕 1/3~解放軍の体制

過去20年、中国人民解放軍(以下=解放軍または軍)が常にその存在を強く意識し、警戒を続けた国があるとすれば、それはアメリカ合衆国をおいて他にない。なかでもアメリカが中東地域で発動した2つの戦争(1991年湾岸戦争と2003年のイラク戦争)の果たした役割は大きい。その精緻な作戦遂行能力と圧倒的な破壊力は、解放軍上層部に鮮烈な驚きと恐怖をもたらすと同時に共産党政権にとっても潜在的な脅威を呼び覚ますのに十分な役割を果たしたと言えるだろう。

> 解放軍だけでなくて、世界が震撼しただろ。あれは…。戦闘機で爆撃からミサイルへと、時代が変わったことを象徴するような戦争だった気がする。


現在、アフガニスタンで展開される対テロ戦争は、主戦場こそ中東のアフガニスタンであるが、実際のオペレーションは直線距離で1万キロ以上離れたアメリカの首都ワシントンで行われている。アルカイダのテロリストと目される兵士を空から探し出し攻撃するのは、毎日マイホームから子供にキスをしてから出勤するパイロットが操る無人攻撃機だからだ。定時に出勤してい時に帰宅する操縦士が勤務時間内に行うその職務は、リアルな戦争でありながらも、常に二次元の出来事であるかのような感覚が伴う。そこには不思議な感情の乖離が存在しているという。操縦士タチはモニターの中で展開されるバーチャルな感覚の戦闘と、現実世界で人間が死んでいるという現実を次第に整理できなくなり、心が揺れ動くことに悩まされ始めるというのだ。

注目されるのは、第二次大戦後のアジアの地域の安全保障で重要な役割を果たしてきたアメリカ軍と、国防費の規模の面で近接してきたことだ。名目上、中国の国防費は対GDP比で1.4%前後となっているが、公表されている国防費には兵器の開発費や他国からの兵器調達資金などが含まれていないため、実際は対GDP比で2.2%にも届く規模ではないかと推測される。その視点に立ち、一方のアメリカが国防予算を削減してゆくと考えれば、「2015年には両国の国防費が早くも逆転する」と予測されるのだ。

安易な解放軍論には要注意

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中国を語る文脈の中で、あまりにも簡単に解放軍を特徴づけて言いきる現象が目立つことだ。たとえば習金平国家副主席についての解説だ。日本のメディアが決まり文句のように使う「軍に強い」とか「軍に太いパイプがあるため軍へのコントロールが効く」といった表現には違和感を禁じえない。断言しても良いがこんな分析には何の根拠も意味もない。もっともこうした分析に背景があることは理解できる。習の経歴に軍務経験がありなおかつ同窓生や父親(習仲勲元副総理)を通じた幹部子弟間のネットワークに軍人が多いことがあげられるからだが、ここには盲点もある。そもそも党中央と解放軍の間が、そんな個人レベルのネットワークでつながってはいないからだ。たった一人で軍に乗り込む習にとって(実際は胡錦濤主席と2人だが)、個人の人脈をごり押しするよりも、むしろ従来からある軍の流儀を受け容れる方が、遥かにスムーズに関係構築ができるのである。

震災から約3カ月を経た6月8日、宮古島北東約100キロの公海に中国海軍のソブレメンヌイ級駆逐艦やジャンカイⅡ級フリゲートなど計8隻の艦艇が現れ、沖縄本島と宮古島の間を通過したのに続き、その翌日にはさらに3隻の艦艇が通過した。中国海軍が西太平洋上で大規模演習を予定していたためだった。中国海軍の演習時期は3月から11月に集中するのだが、この時の日本国内では、「中国が日本の政局の混乱期を故意に狙ってしかけたものだ」といった反発が広がったのだった。官直人首相がいつ辞めるかもはっきりしない中で、中国が日本の政治権力の空白期に照準を合わせて演習の予定を組むというのは至難の業と言わざるを得ない。11月の西太平洋上での訓練は、数千人規模に及ぶ大掛かりなもので、そのためには当然のこと数か月前から準備が必要なのだ。こうした的外れな解説が一人歩きする背景には、意図が不明瞭なまま軍備膨張に邁進する中国への警戒心が、日本国内で定着していたという事情も働いていた。

中国人民解放軍の意思決定のメカニズム

中国共産党中央軍事委員会(以下=軍委)、主席 胡錦濤(国家主席)、副主席 習近平(国家副主席)、胡錦濤と習近平以外はすべてが制服の軍人。だが、党の最高位に位置づけられる総書記に選出され、その後に国家主席に就任したとしても、その地位にはアメリカ大統領のような戦争を発動する権限は備わっていないというのが、中国の権力システムの特徴である。つまり、もし中国共産党の中で勢力を二分するグループが総書記と国家主席の2つのポストを分け合うような事態に陥ってしまったら、権力の所在が不明瞭になる危うさを内包しているのだ。 元々は党主席に与えられていた統帥権だったが、「統帥権の分離」を決めたのは、毛沢東である。1950年代、毛沢東が後継の劉少奇に国家主席を譲る際、統帥権を切り離して自分の手元に残したのが発端であった。 軍委の始動が直接及ぶのは、「第1級単位」と定められた組織で、陸軍の四総部(総参謀、総政治、総後勤、総装備)、それに続く、海・空軍、第二砲兵の各軍種。そして国防大学、軍事科学院、国防科学技術大学といった研究・教育機関。さらには武装警察部隊総隊と全国の七大野戦軍区である。

軍委の中枢部は「八一大楼」の最上階ワンフロアーを占領している軍委弁公庁である。将軍たちが日常的に不在であっても軍委弁公庁が軍委主席のスケジュール管理から、党や政府機関との様々な調整、会議に上程される議案や各軍から上がってくる陳情の整理に至るまで、あらゆる案件を取り扱っているからだ。つまり、すべの問題が弁公庁を通じて調整された後に、主席の耳に届くシステムになっている。 第二砲兵部隊、通称「二砲」はミサイルと核兵器を専門に扱う。二砲は指揮命令系統の視点から見ても個性的な存在で、海軍や空軍と違って総参謀部の系統には属していない。軍委から直接指揮される組織として位置づけられている。司令部は北京北部郊外の清河にある。

【戦争論・兵法】
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2009.12.16: 孫子・戦略・クラウゼヴィッツ―その活用の方程式
2009.10.23: 核拡散―軍縮の風は起こせるか
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