ODAと環境・人権 1/4~公害の輸出

豊かさの見直し

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人類は、その400万年の歴史からみればごくわずかのうちに、狩猟社会から農耕・牧畜社会へ移行し、産業革命を経て工業化社会に向けてひたむきに走り続けてきた。この間、大量生産・大量消費に象徴される物質的豊かさのみを追求する社会のあり方は、1950~60年代の経済の高度成長期に世界各地で公害問題を引き起こし、これが社会問題化してこの時代以降、開発のあり方、豊かさとは何かが真剣に問われるようになった。人は経済成長と自然環境の双方から利益を受けている。人の物欲、特に生存に必要な限度を超えて他人よりも多く、より良いものを所有したいという欲望は、本能的なもので、そのために文明も進化してきたように信じられている。しかし、環境破壊が地球規模で進んでいる現在においては、大量消費文明・物質文明に対する疑問が呈せられる一方、西欧の尺度で見た豊かさの押しつけ(文化的帝国主義)に対する反省も生まれている。西欧文明の優位が疑われなかった時代には、どれだけそれに近づいたかが開発の尺度として機能した。しかし、自然環境の保護と言う人類の存亡をかけた問題が生じた現在では、西欧文明とは異なった尺度で、自然と共に生きるインディアンなどの文明・行き方に対する価値が見直されるようになった。フィジーなど南太平洋の住民は、伝統的な農業と土地の食習慣で栄養も足り、自然のリズムに従って生活していた。ところが、開発の名目でそこに輸出作物を育てる機械化農業、慌ただしい生活リズムを持ちこみ、その結果現地の食文化を破壊してスーパーマーケットに頼る生活を余儀なくし、成人病の少なかった島に糖尿病を増加させたなどは文化的帝国主義と言われても仕方無かろう。自然を人間と対峙する制服・改造の対象としてとらえ、競争してモノを獲得する思想は西欧の物質崇拝主義に見られるにすぎない。


1972年ストックホルム会議では「人間環境宣言」が採択されるとともに、国連における環境保全のための実施期間としてUNEP(United Nations Environmental Programme国連環境計画)が設置されるなどいくつかの成果を見た。しかし、環境保護の理念はともかく、経済発展と環境保護とをどのようにして調和させるかについての具体的方策については何ら成果を見ることができなかった。その原因は、すでに経済発展を遂げて一定の生活水準を維持している先進国と貧困にあえぐ発展途上国の立場の違いである。発展途上国は、地球環境の破壊や汚染は、これを犠牲にして経済発展をしてきた先進国の責任であると主張するとともに、環境問題を解決するためにも経済発展を遂げる必要があるとして譲らなかった。

大量消費生活からの脱却

世界人口の約20%にすぎない先進国の市民は、世界の全エネルギー消費量の75%、市民一人当たり年間5トンの石油を消費している。もし発展途上国の市民も同じようにエネルギーを消費するとすれば、地球全体の二酸化炭素の年間排出量は、現在の5倍の1000億トンになると推計される。エネルギー消費に限らず、地球の富の分配を見ると、先進国の11億人が82%の富を独占し、韓国・台湾などの中進国・中進地域の10億人が12%、それ以外の34億人がわずか6%の富にしがみついているのが実情である。

熱帯雨林の消失の原因

全体の49%が焼き畑によって焼失するというのは、正確に言えば、商業伐採によって糸口を与えられ、火伝統的焼き畑によって完全に消失する面積が49%にのぼるということである。そして非伝統的な焼き畑は、よく言われるように、貧困そのものが原因ではなく、政策の誤りによって行われているのである。例えば、インドネシアが世銀の融資を得て人口過密なジャワ島、バリ島からスマトラ、スラウェシ、カリマンタン、イリアンジャヤなどの周辺諸島に移住させた計画(トランスミグラジ構想)は、ジャワ等における人口問題を解決するため土地なし農民に周辺諸島の未利用地(そのほとんどが熱帯林)を開拓させ、生活の向上を明るというものであった。しかし、この構想はジャワ島における土地分配の不公平(1%の農民が35%の農地を所有し、全く土地なし農は50%にも上る)をそのままにして農業には不向きな土地に貧民を移すものであったため、与えられた土地を捨ててジャワ島に逃げ帰る人々が相次ぎ、また、ジャワ島における人口増加の圧力も一向に改善されないうえ、周辺諸国の熱帯林は、新たな移住者による非伝統的焼き畑によって次々に破壊されてしまった。ブラジルが世銀の融資を受けて行っているカラジャス総合開発計画においても事情は同様である。

多国籍企業の海外進出と環境破壊

多国籍企業の海外進出は、1970年代の先進国における公害の深刻化と、厳しい規制立法を避けて、1980年代に大幅に増加し、発展途上国に生産基地化が進んだ。1970年代初め、アメリカ国際電信電話公社(ITT)がチリのアジェンデ社会主義政権をつぶそうと選挙に干渉した(同政権はITTを国有化。この動きの中で、ITTの選挙干渉という国債スキャンダウが発覚)ことに代表されるように、その傍若無人ぶりが目立った。そのため、発展途上国は多国籍企業の進出には消極的であった。しかし1980年代に入ると、それまでの繊維などの軽工業に変えて、重化学工業化を推進する政策に転換し、先進国の進んだ技術と資本を歓迎し、むしろ進んで多国籍企業を誘致するようになった。多国籍企業の海外進出には、進出先の発展途上国の輸出を増大させ、関連産業の育成に貢献し、雇用を生み出し、技術移転に役立つほか、世界経済全体の活性化につながるといったプラス面も大きい。しかし、多国籍企業の進出には、安い資源や労働力を利用・収奪したり、伝統的な文化や生活様式を破壊するなどのマイナス面があることも否定できず、特に有害物質に関する先進国と発展途上国との規制の差異(ダブルスタンダード)を利用して行われる公害の輸出は由々しき問題である。

【非エネルギー資源獲得競争】
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