日本人へ 国家と歴史篇 4/6~脱・円中立速度

年金の行方不明問題なんてイタリアのような国でしか起らないと思い込んでいたが、それが日本でも起こると知って、正確無比でロボット的と思われてきた日本もにわかに人間的に見えてきたほどである。もちろん、自分の年金が安心できなくなった人々の立場に立てば腹の立つことであるのはわかる。だがこれも、禍転じて福となすことも可能ではないか。

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利点の第一は、お役所に対する日本人の過剰な信頼が崩壊したことだろう。これまでは「公」の能力を信頼しきっていたから、お役人に絶大な権力を与えてきたのである。選挙で選ばれたわけでもないのに国の方向すら決めて疑わない官僚は主権在民のはずの民主主義の趣旨に反する、と私は常々思っている。年金不明事件のようなことはイタリアでは起りえないのだという。なぜかと聞いたら「Codice Fiscale」がある体という答えが返ってきた。「コディチェ・フィスカーレ」とはひところ日本中を騒がせた国民総背番号制のことである。但し日本人は嫌いぬいた挙句に葬り去ったものだ。ちなみに、個人主義的性向では他国しのぐイタリアに何故国民総背番号制が存在するのかとイタリア人に聞いてみたら、イタリア人はかつて一度もお役所のやることを信用したことは無いのだ、というのが答えだった。

なんか俺の言ってることと一緒じゃない?
私の言葉で言い換えれば、日本銀行券・円の信仰、永田町より霞ヶ関、財布を拾ったら交番に届けようという発想。


海外で生活していて実感している最大のことは、日本と日本人のジリ貧がいっこうに止まらないことである。ドルに対しても、円は下がり続けている。ドルに対してもユーロに対しても円は下がり続けている。これで喜ぶのは短期の利益しか頭に無い輸出産業だけで、私にはに本年の価値の低下は即、日本と日本人への評価が低下した証に思える。

七生ちゃんが書いているのは、07年7月なので2005年の105円の高値からの円安120~125円にイライラしているのだろう。20%の減価だから気持ちは分かろうが。しかし、円安=日本への評価が低下ではなく、国際収支の経常収支が黒でその分がそのまま外貨準備金増減に直結している状態である限り、日本の評価というより、日本企業の円還流と日銀が対峙しているだけの自己完結系の需給で決まっているとするのが私の見解である。

日本人に著作を買ってもらって得たおカネを外国での執筆に使うという生活を40年以上にもわたって続けてきた私だ。その間の日本の経済力の盛衰も身をもって経験したといえるのではないかと思う。1963年にヨーロッパに向った頃の換算値は、1ドルが360円だった。日本で稼いだおカネは日本で使うほうが断じて割に合っていた時代であったのだ。若さは貧しさなんて吹き飛ばしてくれる。陸上は汽車とオートストップでまわったが、ヨーロッパに行きたかった目的は地中海にある。それで人から聞いたヨットストップを活用することにしたのだった。

『ローマ人の物語』が終わりに近付く頃には陰りが見え始めていた。円が強かった時期に書き終えていてホントによかった、と痛感したのである。それから3年、日本円とヨーロッパ・ユーロの関係は、強いユーロと弱い円という線を上下している。円はドルに対して強いが、それはドルが弱いからで、アメリカ・ドルの枝葉としてか見られていない日本円は、ドルに連動して動く。独立した通貨とは見られて無いのかもしれない。それにしても日常生活の実態を比べても、円に対してユーロは高すぎる。つまり、日本で稼いだおカネは日本で使ったほうがトク、の状態に戻ってしまったのである。それも日本で稼いだお金は外国で使ったほうがトク、という状態に確実になったのは1980年代後半になってからと思うので、日本の繁栄は、20年間の話でしかなかったことになる。

> アメリカ・ドルの枝葉としてか見られていない日本円は、ドルに連動して動く。独立した通貨とは見られて無いのかもしれない。

ノンプロでも頭のいい人は数値見てればなんとなく感じるのね。日本人には珍しい円中立と円信奉を脱却した人、まぁ、海外で長い間生活して円の収入があったら、円高がウェルカムなのは当然のなりゆきだが。しかし円が空前の高値の76円つけたのは、天下の民主党政権下。日本への評価が高くなったというのと円高が関係ないということが、七生ちゃんが書いた07年の、数年後に起こるのだがな。しかし、七生ちゃんとは話が合いそうだから一度お話してみたいものだね。

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