ネロ 暴君誕生の条件 1/3~母の謀略

ネロに対する私の最初の関心は、シェンキエーヴィチの『クオ・ヴァディス』によって喚起された。『クオ・ヴァディス』は明治末以来、数多くの訳書が刊行され、版を重ねたが私が手にしたのは昭和3年に発行された新潮社の世界文学全集中の一巻(木村毅訳)である。

紀元37年12月15日、生を受け、当時の慣習に従って生後9日目に潔めの式が行われたが、その日には母方の親戚に当たるローマ帝室(ユリウス=クラウディウス朝)のすべての人々が招かれた。その中には時の元首(皇帝)で、赤ん坊の伯父に当たるガイウスもいたし、次代の元首で、のちに母小アグリッピナの3度目の夫、ネロの養父となるクラウディウスもいたが、実父グナイウスの名はどうしたことか明記されていない。

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> アグリッピナが相手なので、きっと「コイツ誰の子?」疑惑があったに違いない。
> ユリウス=カエサルは子供が居なかったので、その妹ユリアの子アイティアと結婚したオクタヴィウスがユリウス=クラウディウス朝の血統的頂点に居るので、オクタヴィウスのクロスが何本入っているか見てみよう。5×4のオクタヴィウスをお持ちのようだ。

ガイウス暗殺の騒然たる空気の中で元老院が緊急に召集され、共和政の復活やユリウス=クラウディウス氏以外から元首を選ぶべきだとの意見も出されたが結論を得ないまま散会になった。クラウディウスは、近衛兵の意向が元首政の存続に傾いていることを知らされると、兵士一人当たり15000セステルティウス(1セステルティウスは25~30円)という多額の贈与を約束した。将兵は「最高軍司令官(インペラトル)」と歓呼して彼を元首に選んだ。こうして「元老院が熟慮している間に近衛軍は決定し」(ギボン)、元老院も承認せざるを得なかった。元老院がクラウディウスを無視していたのも無理からぬ点があった。彼は既に50歳を過ぎていたが、帝室の中では陰の薄い存在だった。それは小児麻痺に基づく肉体的欠陥のためでもあった。足が弱くぴょっこり歩きで、口からはよだれをたらしていた。母小アントニアにも好かれず、父大ドルススや兄ゲルマニクスのような軍歴を踏むことはできず、公職にも不適格と考えられており、元老院にも議席を持たなかった。

クラウディウスの妻メッサリナの死によって妃の地位には空席ができた。やもめ暮らしに耐えられず、妻のしりには敷かれやすいクラウディウスの妃の地位である。新しいお妃選びの激しいコンクールが始まった。まずお妃推薦人の解放奴隷たちがいがみ合い、同時に、女たちも凄まじい野心に燃えた。どの女も負けじ劣らじと、自分の美貌と高貴な生まれと財産を張り合い、私こそこのような晴れがましい結婚にふさわしい女であると誇って見せた。ナルキッススは、クラウディウスのかつての妻アエリア=パエティナを勧め、カリストゥスは先帝ガイウスの3番目の妃ロリア=パウリナを推し、そしてパラスが売り込んだのは小アグリッピナであった。バラスは、小アグリッピナを推薦するにあたって、彼女がゲルマニクスの孫ネロを連れ子とする点を特に強調した。「この子こそ支配者の地位に最もふさわしい。元首はこの高貴な子孫、すなわちユリウスとクラウディウス両氏の血を引く後裔とぜひ縁を結ばれますように。小アグリッピナは石女でないことを証明しています。それに今が33歳の脂ののった女盛りです。このカエサル家の清華を他の家に取られないようになさるべきです」

小アグリッピナは親戚であることを口実にしげしげと叔父を訪ね、クラウディウスの心をしっかり捉えて他のライバルにうち勝った。すると彼女は、まだ正妻にならないうちから妻としての権力を使い出し、わが子ネロと、オクタヴィア(クラウディウスの娘)との結婚をたくらんだ。しかしクラウディウスはオクタヴィアにすでに婚約者を定めていたので、この計画を遂行するにはどうしても波瀾は避けられなかった。こうしていよいよネロが、歴史の中に登場するのである。

アグリッピナによってネロの栄達の道は着々と進められつつあった。まずネロとオクタヴィアの婚約は次期執政官を通じて元老院に提案させ、可決後、元首の許可を受けて決定された。ネロは12歳、オクタヴィアは10歳くらいだった。次にはネロを養子縁組によってクラウディウス氏に入籍させ、クラウディウス帝の義子、つまりアグリッピナの連れ子から、帝自身の養子とすることである。養子縁組自体はローマ社会では珍しくない慣行だったし、現にアウグストゥスも、リヴィアの連れ子ティベリウスを養子にし、他の直系の継嗣が相次いで早死にした後にではあるが、ついには元首の地位をゆだねている。しかしこのような先例は、クラウディウスが愛情を注いでいる一人息子ブリタニクスがいる現在、すぐには役に立たない。

しかし彼女が息子を元首にするためにはなお手強いじゃまものがあった。クラウディウスの寵臣ナルキッススである。彼はメッサリナを没落させた男だが宮廷内ではパラスのライバルである以上、パラスと組んでいるアグリッピナに対立し、メッサリナの子ブリタニクスを支持せざるを得なかった。アグリッピナの行動を目を離さず監視していたナルキッススは激しい通風の発作に襲われ、カンパニア地方に湯治に赴いた。アグリッピナはこの好機をいち早くつかんだ-夫である元首クラウディウス毒殺のチャンスが来たのである。そこでアグリッピナは、好みとの専門家で、コレまでも権力政治の道具として帝室に抱えられていたロクスタという女を抱きこんだ。この女は知恵をしぼって毒物を調製した。それはクラウディウスの大好物のきのこ料理に混入され、試食係もいつものようにその役目をすませた。もちろんアグリッピナとしめし合わせての演出である。クラウディウスは食欲を刺激させて、りっぱなきのこをつまむと、一気に呑みこんでしまった。すると彼はたちまち不快を覚え、意識を失ったが、ベッドに寝かされるとまもなく意識を回復した。ひどく吐しゃしたので命拾いし、アグリッピナは狼狽と恐怖に駆られた。こうなればもう一気にかたをつけないと、彼女自身のほうが危うくなる。そこで彼女は病人の枕頭に呼ばれていた侍医のクセノフォンに元首をすぐさま楽にさせるよう言い含めた。侍医のほうも飲み込みが早く、クラウディウスののどをくすぐって吐かせると見せかけ、彼がいつも使っている鷲鳥の羽に毒物をつけ、のどの奥につっこんだ。今度は効果てきめん、クラウディウスは一言も口がきけないまま、64歳の命を断った。

パラティン宮殿の門が大きく開かれた。ネロは近衛軍司令官ブルスを従えて近衛軍の前に現われた。ブルスは老練な将軍であるが、アグリッピナの推挙でこの要職に任ぜられていたので、全力を尽くして恩人の利益のために働く約束をしていた。元首の後継者を定めるこの重大な時期にその動向が最も注目されるのは元老院にもまして近衛軍であり、その点アグリッピナの読みに狂いはなかった。ブルスは事情を説明し、近衛軍は「最高軍司令官(インペラトル)万歳」と幸先のよい歓呼をネロに向って浴びせた。そのとき何人かの兵は歓呼をためらい、あたりを見回して「ブリタニクスはどこにいる」と尋ねたが、他の兵士達が同調しなかったので、彼らも結局大勢に押し流されてしまった。

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