解任 マイケル・ウッドフォード オリンパス元CEO 4/4~改革失敗

結局のところ、ジャイラスおよび国内3社買収に関する巨額の支払いは、以前の経営陣から引き継がれてきたバブル期前後の財テクの損失を隠蔽するために使われていたのです。

アメリカ時間の11月30日(日本では12月1日)、私はニューヨークで会見を開きオリンパスの取締役からの辞任を発表しました。事前に宮田に電話した際に「オリンパスを見捨てるのか?」と言われましたが、もちろんそんなつもりはありません。その逆です。結局、先日の取締役会を経て、私が会社に残っていても、内部からオリンパスを改革するのは不可能だと確信したのです。社内の一取締役として私はいまだ完全に孤立していましたし、今の立場では外部の投資家、株主などと連携して再建の道を模索することも許されません。その前日に会社が発表した「経営体制の刷新と将来ビジョンの提示の検討体制の構築について」という声明に危機感を覚えたのも辞任のきっかけになりました。新たなコーポレート・ガバナンスの仕組みを作り、経営陣を一新するというその発表の方向性の評価できましたが、その検討チームの責任者を社長の高山が務めるというのです。旧経営陣を擁護してきた彼が、ガバナンス強化の責任者になるなど悪い冗談にしか思えませんでした。責任を問われ一新される経営陣が次の経営陣を選ぶ、などということが許されるのでしょうか?

オリンパスに真に必要なのは、現経営陣から完全に独立した新しい経営陣です。新しい経営陣なくしては傷ついた会社の評判を回復することはできません。そこで私は仲間たちと相談のうえ、取締役を辞任してプロキシーファイトに持ち込むことにしたのです。つまり、私を含んだ新経営陣案を提案し、株主による多数の賛同を得て、臨時株主総会で可決させようと言うプランです。私はそれがオリンパスにとってベストの選択だと考えました。会社の重要な意思決定は株主によってなされるべきです

> 日本人の世界は、会社の重要な意思決定は取締役会という密室で決められるべきってのが、日本の常識だから、それは違うんだわ。


12月6日、オリンパスの第三者委員会は調査報告を発表しました。オリンパスは下山社長時代の85年以降、金融資産の積極的運用に乗り出しましたが、バブル崩壊のあおりで大きな損失を出しました。その損失を取り戻そうとその後もハイリスクな運用を続けた結果、90年代後半には含み損が1000億円近くまで膨らんだのです。その損失の計上は何年にもわたり先送りされてきたものの、97年から98年にかけて、金融資産の会計処理が取得原価主義から時価評価主義に転換する動きが本格化した状況を踏まえ、巨額の含み損が表面化するのを防ぐため、アクシーズ・ジャパン証券の中川やAXAMインベストメント/AXESアメリカの佐川、グローバル・カンパニーの横尾らコンサルタントの協力を得て、オリンパスの連結決算の対象とならない複数のファンドを作って、そこに含み損を抱える金融商品を簿価で買わせて「飛ばし」ていました。この「飛ばし」による損失「分離」スキームはヨーロッパ、シンガポール、日本の3ルートで行われました。こうして連結財務諸表から含み損を分離して、ごく限られた人間しか知らない闇の中へと隠したのです。しかし、受け皿となるファンドの資金は、オリンパスの口座の預金を担保にした貸付から調達されており、返済する必要がありました。また、ファンドへの出資金も償還してもらう必要がありました。そこで生み出されたのが、企業買収を利用した損失解消スキームでした。

山田および森は、前述のコンサルタントと協議の上、ファンドが安価で購入したベンチャー企業をオリンパスが高値で買い取ることで生まれた差額や、あるいはファンドに巨額の報酬を支払うなどして作った資金を還流させることにしました。そして、「飛ばし」に関与したファンド等の借入を解消して、口座から担保となっていた預金の払い戻しを行い、ファンドへの出資の償還も受けられるようにしたのです。オリンパスが余分に支払う金額は、暖簾代として資産計上して段階的に償却していき、損失の存在そのものを「消して」いく予定でした。ジャイラス、国内3社の買収はこの損失解消スキームの一環として行われたのです。実行役は山田と森ですが、菊川や彼の前の社長の岸本正壽もこのスキームを了承していたそうです。当初の「飛ばし」に至っては、下山、岸本、菊川のオリンパス3代の社長が了承していたと報告されています。

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宮田は「グラスルーツ」の主催者として「ニコニコ生放送」に出演したことがあったのです。そのとき視聴者から得たポジティブな反応から、私がオリンパスの社員と十分な対話を行うには「ニコニコ生放送」のような関心的メディアがもっとも有効だと彼は説きました。世論も社員も必ず我々に味方するはずだ、と彼は信じていました。質問は宮田が選びましたが、どれも厳しい内容でした。たとえば、「現経営陣がウッドフォード氏の解任理由を独断専行の経営手法としているのにどう反論しますか?」それは皮肉な質問でした。菊川のほうがよほど独裁的で、権威的だったからです。私はそのように答えました。「オリンパスに復帰した際にはそれに反対した謝意を排除して改革を進めるつもりですか?」という質問には、まったくそんなつもりはない、と答えました。排除すべきは悪い経営陣だけです。社員のせいではありません。

視聴者は厳しい質問を歓迎しました。私は「カメラはコア事業であり潰さない」「ハゲタカファンドとは組まない」「外国にオリンパスの技術は売らない」「他者との資本提携は独立性を危うくするのでやらない」とこれまでの主張を繰り返しました。私の答えは視聴者たちには意外に受け止められたようです。既存のメディアを通じて知った私のイメージとは異なっていたのでしょう。驚くべきことに3万人近い人々が番組を見ていました。オリンパスの社員や株主だけでなく、一般の方々も。非常に民主的な討議の場でした。

宮田の呼びかけを高山と森蔦は完全に無視しました。彼らはニコニコ動画からの出演のオファーをにべもなく断ったのです。それは彼らがずっと取ってきた「拒絶」の戦略です。高山は私とのプロキシーファイトについては「株主にも影響を与えるので出来ればしたくないと考えており、現経営陣が考えている新経営陣案をウッドフォード氏にも理解していただきたい」としながらも協力体制を築くために私と会うことはしないと断言しました。ずっと予定が詰まっている、からだそうです。私を拒絶したのはオリンパスだけではありません。私の弁護士に三井住友銀行新宿西口支店の支店長から連絡が入りました。頭取の國部は私には会えないとの返答でした。オリンパスの再建計画が経営改革委員会の手に委ねられているので介入したくないと言うのです。信じがたい理由でした。オリンパスの新経営陣の選定に彼らが関与していないなど誰が信じるでしょうか。結果を見れば、新しい経営陣の会長には三井住友銀行出身者が就くと発表されているのです。

【民族主義・国民性】
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2013.01.21|民族世界地図 1/2
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2009.08.20: インド旅行 招かれざる観光客
2009.02.04: 新たなる発見@日本
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