しんがり 山一證券 最後の12人 1/5~小池隆一

「なぜ自主的に廃業しなくてはいけないんですか!どうして会社更生法はだめなんですか。営業権譲渡など、他に生き残り方法もあるでしょう」五月女は野沢に代わって、社員の前でいきなり告白した。「山一には約2600億円の帳簿外の債務があります」それは長年にわたって社員たちに隠されてきた秘密であり、名門企業を瀕死の淵に追いやっているものの正体であった。執行役員たちは息を飲んだ。「ふざけるな!」という罵声の代わりに「ううう」という低い唸りのような声が漏れた。「大蔵省証券局は山一がそれを隠していたのは許せない、というのです。会社更生法で立て直すという方法は無いのか、と私たちも動きましたが、東京地裁は『簿外債務のような法令違反行為があると、更生法の適用は難しい』という判断です。さらに更正法を適用するには会社が大きすぎるし、財務体力も銀行の支援も無い、ということなんです」

> そういえば、会社更生法ではなくて自主廃業でしたね。

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「総会屋との取引関係」とは、総会屋・小池隆一に対する利益供与事件を指している。始まりは、野村證券の内部監査を担当していた若手社員がその不正に気付き、1996年に東京地検特捜部やSESC(Securities and Exchange Surveilance Commission)にひそかに内部告発したことであった。「野村證券が自己売買部門で稼いだ利益を小池のダミー会社である『小甚ビルディング』に付け替えてやっていた」というのである。それが年末ごろから少しずつ利益供与疑惑として新聞で騒がれ始め、翌97年3月25日には東京・日本橋の野村證券本社が特捜部やトクチョウ(SESCの特別調査課)の捜索を受けていた。不正のきっかけを作ったのは、第一勧業銀行である。1989年2月に小池に約32億円の無担保融資を実行し、小池はそれを元手に、野村、大和、日興、そして山一という四大証券の株を30万株ずつ取得していった。これで得た株主提案権を楯に、小池は株主総会めがけて各社に揺さぶりをかけつつ利益供与を求めていたのだ。

> 株主をナメ腐った日本企業の経営陣に、株主兼総会屋として噛み付いたのは悪いことではないと思うが、89年に証券株を買ってるあたりは、相場師として劇的にセンスが無いよなぁ・・・。株を買いつつ、その後ろでForwardを2倍ショートしてたとしたら、神様並みに崇めてやっても良いけど、店頭デリバティブ解禁は残念ながら1998年だ。


花替えの不正は初めからトクチョウもつかんでいた。証券会社が買い付けた株や先物が値上がりした時に、売買伝票を改竄したりしてその利益を顧客の口座に付け替えて儲けさせてやる古典的な手口である。付け替えをする場所をシンガポールという海外に選んだところが、トリックを見えにくくしている。だが、実際には兜町ビルの2階にいる株式部長らの指示を女性トレーダーが受け、それをホットラインでシンガポールの山一フューチャーズに伝える、という単純な仕組みだった。しかし、調査官が聞きたかったのはその先の話である。「だからシンガポールの出張監査で、総会屋に利益供与をしていたということがわかったんだろう?」「いや、私たちは小甚ビルディングの口座が小池隆一のものであるかは知りませんでした」

行平と三木は、9代目社長・植谷久三や10代目の横田良男に仕え、上司の意志を忖度する能力にも秀でていたことから、早い時期から「社長候補」「プリンス」と呼ばれていた。MOF担当として、証券行政を左右する役所との折衝を重ね、経営計画立案の中枢にいたことも、それぞれの出世に弾みをつけている。55年に大学を卒業し、本社の投資信託本部、金融法人部、企画室と進んでいくうちに、腹の座った能吏と評価されていく。投資信託本部で本部長の植谷に、また投信募集部総務課では、課長だった横田に指導を受ける幸運にも恵まれていた。三木は行平は5年後輩で、東大法学部を卒業している。体が細く大きな声は出さない。小さな顔におっとりした性格を備え、「お公家様」と揶揄されることが多かった。彼は同期の中で最も早く本社に呼び戻され、常に日のあたる場所を歩いている。

山一證券は「法人の山一」を看板に、大手企業相手に成長してきたことから、「ホールセール派」と呼ばれる法人営業部門出身者が要職を占めてきた。大企業の資金運用や株式公開、機関投資家との取引を担当する山一の主流派である。「社内権力」とも呼ばれていた行平自身もMOF担の後、法人営業部門の責任者となっている。ただし、山一にはこれまで、経営全般の指揮所である企画室の室長を経験していなければトップに就けない、という不文律があった。ここには権力が集中し、室長は大蔵省証券局も担当している。横田、行平、三木という歴代の社長はいずれも企画室長を経て社長へと昇進している。権力の至近距離にあるこのポストは、営業のように自ら汗を流すことが無いため、現場から「内務官僚」とやっかみを受けている。

緊急副社長会、緊急に副社長を集めたのだから、次期社長についてそれなりの話があるはずなのだ。ところが行平会長の口から出たのは意外な言葉だった。「いろいろな問題があるんで、まだ次の社長を誰にするか決めていない。まず、経営を黒字にしなくてはいかん」 その言葉を、すかさず財務担当の白井隆二が引き取った。「実は債務がこれだけあるんだ」。右手の指を3本立てていた。「300億ですか?」。大阪駐在の副社長が首を傾げた。間髪を入れず、行平の低い声が響いた。「マルが1つ違う」「3000億円ということだよ」

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