オプションなんて勉強するものじゃないです。まずは債券いっときまひょ

20代前半にしては、しっかりとしたコメントを書く将来有望そうな若い衆の質問に答えていこうと思う。タイトルは若者の主張を全否定してしまっているが、若い衆の貴重な時間と金をなるべく効率よく使ってもらいたいという、せめてもの親心なのである。
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>投資一族の長さんは現物は一切やらずにオプション絡みのトレードしかしないのですか?企業内で役割を振られている場合は分かりますが、基本的に自由にやられてるようなので気になりました。

株がメインです。オプションは追加的なものです。個人で取引したのは初めてというレベルですw 詳細は下記に書きましたが、

2013.06.10 初めてのオプション取引 1/2 ~口座開設・取引まで

「暴落はいつ起こるかわからないが、まだ起きそうも無い感じがしていて、株を買うのに絶好のタイミングとはとても言えない。」、言い換えると、「ショートで向かったら踏まれそうだし、ロングを新たに積み増すのも嫌だ」という相場観、

というのがオプションをはじめた理由です。もう少し現実的に言えば、2008~2009年に株を買って、一切売らずにBuy & Holdしていたとしても、4~5年経つとその期間の配当、それからTOBなどのイベントによる売却・キャッシュ化などで、ドンドン現金が増えていき、無視できない金額になってきます。迷惑なことにアベノミクスで株価が上がってしまい、買い増しするには高すぎる株価、金利も低くて債券運用も怖すぎる。でも現金は余ってるという状況下で唯一残された選択肢という苦しい状況です。


>基本的にマクロの方向感でトレードしているので、上か下かわかればそれでええねんという感じでやってきたのですが、まだ20代前半なのでオプションを学ぶメリットが大きければ学んでいきたいのですが。

ということならば、ここで言及しておきたいのは、株と債券という最も基本的な2つを飛び越えて、日本の素人衆がFX Margin、先物、オプションに走る現象を不思議に思っています。この素人衆の不思議なBehaviorを説明する用語は、リスク・ラバー・バリュエーション(リスク愛好選考)と呼ばれています。資金が小さい場合、数%・数十%を目標にするのではなく、たとえ期待値が下がっても数倍・数十倍を目標にするのが合理的という考え方です。

もう一つの理由は生存者バイアス、勝った者しか注目されず、沈黙している多数の者は負けているという事実です。BNF、FXで3億脱税の主婦、競馬で6億脱税というような「見出し」に憧れるのは、「ダウンタウンになるんやー」と言ってお笑い芸人を目指すのと同じです。お笑い芸人にはならずに普通に働く方が期待値が高いというバリュエーションができるなら、やたらと投機的でリスクの高いFX Margin、先物、オプションも同様にバリュエーションすべきです。

生存者バイアスを意識せずに投機に走るのは賢明ではありませんが、資金の小ささを意識してリスク・ラバーになるのは合理性があります。ですが、

>まだ20代前半なのでオプションを学ぶメリットが大きければ学んでいきたい

このように学ぶという経済的インセンティブ以外の意図があるならば、まずは基本中の基本、株と債券(金利)の世界をお奨めしたいです。債券は金利が低すぎてできないと言っておきながら、お勧めするのも心苦しいですが、小額でも債券取引に応じてくれる会社が、"お近く"にあります。たまに「オフショアで銀行口座を開こう、オフショアのプライベートバンクは、日本の金融機関では扱っていないような豊富な商品ラインナップ・・・」とかいうツアーもあるようですが、怪しげなファンドを売りつけられるだけです。そして、小額、なんと1000ドル単位で債券投資ができるのは、世界広しと言えども野村證券と大和証券だけですw この大手2社は日本の会社ですから、日本人のご予算、日本の税制をよく理解しており、日本の税制的に有利な割引債のラインナップも充実しています。それから「金融関連課税が非課税のタックスヘイブンで資産運用」とか唄っている人もいますが、日本の居住者がタックスヘイブンでのリターンを申告しなければただの脱税行為ですw 繰り返しますが、1000ドルをリスクアバースで安定運用しようという考え方はグローバルにはありません、だから債券運用は最低1milが世界標準ですが、日本の会社は日本人の気持ちをよく知っています。

両社とも十分なラインナップです。さすがは最大手の証券会社、太っ腹なのでタダで価格チェックさせてくれますよ!
http://www.nomura.co.jp/retail/bond/f_secondary/index.html
http://www.daiwa.jp/products/bond/afr/index.html#h01

国債金利を知ることは、最も信用力がある先進国国家のリスク=最もリスクが低い投資のリターンを知ることになります。米国債が10年で2.5%だとしたら、「USDで10年で5%と唄っているのに、リスクがない」とか説明しているのは詐欺だと感覚的に分かるようになるからです。また債券は動きが鈍くてつまらないとか言う人がいますが、30年の割引債の動きを半年から1年、見つめ続けてみてください。リスクは株並みに高いですw


せっかくオプションについて質問してくれているので答えますが、勉強目的でのオプション取引は、あまりお奨めいたしません。

> 自分はオプション初心者でしかも個人なので、なんとなく取引コストが気になってできません(自分でプライシングできないのでオプションの適性価格がわからないのも大きいです)。

オプションだけを特別扱いしないでください。では株価・為替・先物の適正価格はいくらなのか考えてみましょう。プライシングの方法はあることはありますが、そんなことはせずに、単に市場値を見て取引されていると思います。オプションも同じで、そこには、市場値があるだけで、それこそが適正価格です。ネットに転がっているプライシングとか理論価格という言葉に惑わされないでください


>例えば、エントリーがあったバタフライにしてもそのポジションを個人で構築するコストがなんとなく高いようにみえます(実際はやったことないです)。オプションに習熟すると個人でもより少ない資金で効率的に利益を上げれるのでしょうか?

バタフライは4つのオプションを取引するので、その売買手数料やAsk/Bid Spreadも4倍になります。バタフライには4つのオプションが含まれますが、その4つを同時にいきなり組むよりは、2つのペア+2つのペアのような形で持ち込むのが実践的です。かかる取引コストは長めのオプションで、ゆっくり取引すると下がります。例えば1ヶ月のオプションを毎月売る代わりに、3ヶ月のオプションを3ヶ月に一度売る、という意味です。

一般的には、オプションに習熟すると資金効率は悪くなります。初心者はPut/Call×Buy/Sellの組み合わせの4通りのシンプルなポジションで資金効率が高めですが、コンビネーション、例えばバタフライなどは露骨に資金効率が悪いです。私の友人の個人投資家さんは、十分にオプションを習熟されている方ですが、彼は資金効率を高めるために、あえて、素人のようなNakedのCall買いとかを繰り返しています。ただこういうのは例外で普通、習熟度に応じて資金効率は悪くなり、負けない無難なポジションを取るようになります。

【G7 金利・国債系】
2013.01.29 金融政策の話 2/2 ~預金と規制
2012.07.04|ウォールストリートの歴史 5/8 ~第一次世界大戦
2012.02.27|告白 元大和銀行NY支店2/2 ~トレーディング
2011.10.31: 日本国債CDSが急落
2011.10.03: 日本国債5年CDS 1.3% vs 日本国債5年モノ0.35%
2011.09.09: スイスフランの介入劇
2011.07.07: モルガンS、米インフレ期待めぐるトレーディングで損失
2011.04.18: 米国債券投資戦略のすべて3/3 ~パススルー証券
2010.02.04: 日本最大の投信「グロソブ」4兆円割れ
2009.12.01: 金利系投資からの撤退 
2009.08.05: 金利をSalesに教える
2009.06.17: 暗算でやる金利計算@街頭インタビュー
2009.01.15: 株投資家から見たインフレ連動債TIPS
2008.12.25: さようならUS Strips
2007.12.17: 債券市場参加者の世界観 ~ 儲け=売値ー買値では無い  
2007.12.12: 債券税制 ~これを知った上で買えるか?毎月分配







30年国債入札の事務トラブル反抗期突入か長期国債(資本市場)株式日記と経済展望

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