デリバティブ 一覧

ここで言及している計算方法は、いわゆる業界標準の計算方法とかなり異なる。しかし、"いわゆる業界標準の計算方法"とは、業界でも傍観者的にオプションを見ている人が多数派で、その傍観者標準と言えよう。何を言っているかというと、BBGや各証券会社などで計算されている"日経平均株価"を現値Sとして捉えているような計算方法のことを言っている! 傍観者的にオプションを眺めている連中は、せいぜい日経平均株価でも見ていて構わないが、実際のオプション市場、すなわち、Market MakerやArbitragerたちは、確実に、"日経平均株価"など見ていない。では実際のオプション市場はどのように形成されているのか? を知るために、下記を参考にしていただきたい。ほとんど職人技、いやもはや芸術の領域に近いだろうが。


1.先物価格とフォワードプライスの規定

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個人投資家としてオプションを取引するのは初めてという、"ど素人エキゾ"です。こんばんは。日本では市場関係で働いていると、先物やオプションなどのデリバティブ取引が禁じられているという、驚きあきれる日本の法律の名残で、日本を出てからも個人では、取引していなかったのです。

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オプションの取引の意義(オプション取引を個人で行っていなかったもう一つの理由)

株もしくは先物のLong/Shortでは表現しきれない複雑な相場観を自分が持っている場合、オプション取引にインセンティブが生じる。

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私の新人時代の話であるが、配属が決まった後、配属先の事業本部下の部課長が自分の担当の仕事について、新人向けに説明するという研修があった。20人以上いたと思われる部課長・管理職において、たった一人の女性であった。私の記憶には、「全員没個性的なワイシャツを着たおっさん連中なのだが、一人だけ赤いシャツを着ている人がいた。」と残っているくらいで、男社会の現場では異様な存在であった。

女帝(今後のため仮名UM氏としよう)の担当部門は、いかにも女性らしいドキュメンテーション(法律・文章化専門チーム)であり、当然ながら、その研修におけるUM氏のご講話は「デリバティブ契約におけるドキュメンテーションの重要性」であった。新人には理解が難しい内容のため寝ていたヤツもいたように思う。私が出会った女性の中でもトップクラスの頭脳の持ち主であることは間違いないが、唯一の女性管理職という官位は、私だけでなく男社会でそれが認められていた証だった。

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数年後に私がデリバティブが深くたずさわるようになってからUM氏と接する機会も増えたが、UM氏は謙虚に「私はデリバティブのトレーディング以外の雑多なことを色々とやっています。」と、自らを雑用係かのように表現していた。しかし、紙にまつわることは、ほとんど全てをUM氏が担っていたため、特に新商品の企画などは、UM氏の紙が作られなければ全方面がストップしてしまうというくらいの重要な位置に座っていた。

会議の場ではこのような感じでお言葉を賜る。ドキュメンテーションの細かい言葉を取り上げては、「この規定をどう定めるかは、トレーディングの役割。つまり価格有利であるとか、ヘッジが可能であるとかを勘案して、諸君等が判断することだ。」
トレーディングとドキュメンテーション部隊の会議の場であるから、具体的に言えば、Disruption Eventの規定、Corporate Action時の対応・例えば会社が合併した後・Spin Offした場合、倒産ではないものの上場廃止になった場合、トレーディング部門としては、このように規定すると、このデリバティブ契約はエコノミー的に有利とか、これだとヘッジができないからDisruptionにしてくれとか、依頼しなければならない場なのである。そういう場で、先ほどのお言葉が出るということは、いかに当時のトレーディング部隊がUM氏に依存していたかわかるだろう。


何にも知らない読者諸君はまだわかってないだろう?
「日系の会社とかには、居そうだよね、無駄に威張ってるバックオフィス。」 くらいに思っているだろう?

"無駄に"威張っているのではなく、本当に威張っているということが示された象徴的な出来事は、さらに数年後に起きた。

デリバティブのトレーディング部門に、エクイティとは全く関係の無い金利・為替系から外様の課長が送り込まれてきた時の出来事である。
課長が就任してしばらくした時に、私は課長に問われた。
課「Term Sheet書いたことないの? じゃ、誰が書いてんの?」
私「UMさんです。」
課「えっ?うちの課ぢゃないの? Term Sheetはトレーディングでしょう? 本当にお前ら大丈夫?」
課長は、これ以上特に問い詰めたり、執拗に攻撃してきたりする性格ではなかったので、これで終わっただけのことではあったのだが、彼の驚き呆れた顔が、私にはとても屈辱的であった。

従来であればTerm Sheetは「エコノミーに対する最低限のことは書いてあるから、これを基にISDAなり法律に則った書類作ってね。」というトレーディング部隊からドキュメンテーション部隊に対する書類作成依頼書である。しかし、文字通り、紙にまつわる全てをUM氏が担っていたので、Term Sheetですら、ドキュメンテーション部隊で作られているという有様だったのだ。言い換えれば、

エキゾチック・デリバティブの「企画とファースト・ディール」は、ドキュメンテーション部隊がやっている と言っても過言ではない状態だったのである。

私は奪回のために香港やセールス部隊に手をまわし、競争各社のTerm Sheetを集めまくって読み、自らTerm Sheetを書いて提案した。しかし、関係各部署の反応、特に女性スタッフたちの反応が冷たく、

「うーん・・・、何これ? こういうわかりづらいのじゃなくて、"ちゃんと"字で書いて。」

(ちゃんとって・・・字で書いたら意味が不明確になるから、ちゃんと数式で書くように俺が変えたんだろうがっ! という言葉は通じる気配もなく)
私の書いたParibas調の数式Term Sheetは、あっさりと否定された。女性であるUM氏は、女性が多い関係各部署の反応を知った上で、文字表記のTerm Sheetにしていたのだ。
「xml Tag技術を使って、商品毎の作成ではなく、包括的なTerm SheetとISDA書類の作成と管理を・・・」
という提案も「んー、なんかITとか技術系はわかんねーな。技術者雇う金もないし」で終わった。結局、私はUM氏の牙城を崩せぬまま、その事業本部を去ることになり、UM氏の支配体制がその後も何年かは続いていたのである。UM氏も今ではその事業本部を去ったと聞いている。まさか、まだこの体制、続いていないとは思うが・・・まさかな・・・。

【エクデリ・デスク、現場の光景】
2012.08.02 ファンド運営 どんなお仕事?
2012.06.14|Facebookのアカウントを定量的に分析しよう
2011.11.09| 独身女性1人に対して40歳代の独身男性が23人の割合
2011.08.30: マハティール アジアの世紀を作る男3/4 ~自国民批判
2010.11.30: シブすぎデリバに男泣き ~女っ気もなく派手でもなく
2010.10.18: 三田氏を斬る ~今回は同意、でも笑える
2009.10.06: Black-Scholesは間違っている2
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている
2010.08.05: 証券検査官Ⅱ インサイダー
2010.05.06: とても難しいImplied Volatilityの計算
2009.04.23: ウキウキする新人
2008.06.13: 腐れ社員の功罪
2008.05.28: 腐れ社員の告白


記者が悪いのか、ビリニー氏本人の発言に問題があるのか? は不明だが結果としてできる文章がバカ丸出し発言になるからメディアは嫌いだ。

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イライラする発言1 「今年1600を突破する確率は50%超」

50%ではなくhalfとか半分なら良いのですが、下手に数値を使うと、逆にいいかげんな発言という印象を受けるのは私だけでしょうか?
かなり変わった相場観ではあるが、確率を予想するような相場観もオプションプレイヤーは認めよう。
1yearの7%アウトだから、それほど"遠い"価格帯ではないので、リスクニュートラル確率で見ても30%くらいはある。

N(d1)=リスクニュートラル確率=Delta=Digital≒Call Spread

で、ある期間Tに、X円以上になる確率そのものを取引することができる。Digital Optionなど使わずとも確率の取引はCall Spreadで大体近似できる。日本人読者諸君にもわかりやすくするために日経の上場オプションで説明すると、4月SQまでに12000円を越えるリスクニュートラル確率は
(行使価格11750円のコールオプションプレミアム-行使価格12250円のコールオプションプレミアム) ÷ (12250-11750)
(255円-130円)÷500=25% 先物11390円2月6日現在
で求まる。大体デルタと同じになるが四則演算のみで確率微分方程式は使ってない
ぞ!

今年の7月から制度改正で125円刻みになるらしいが、250円×2=500円=5%だと粗すぎると思うなら250円のCall Spreadでも十分に近似可能である。

にもかかわらず、

イライラする発言2 「SPDR・S&P500ETFトラスト」の行使価格160ドル、12月満期のコール(買う権利)を購入した」

もうやだこの国ってコイツはアメリカ人なのかもしれないが。今年1600を突破する確率50%超だから・・・と順接の接続詞で続くのに正当なポジションは160ドル行使価格のコールではなく、159-161、コールスプレッドのロングとなる。上がると思うからコール買い、下がると思うからプット買いという文言が一般メディアでは目立つが、まさに素人の"間違ったオプションの利用方法"なので、ここで否定しておこう。上がる下がるの相場観しかないならば、先物の方が効率的なのである。

初心者向けに、損失限定のオプションの買いが無難で安全だ、という傾向があるが、コールの素ロングは数多あるオプション戦略の中でかなりなハイリスクなポジションである。その恐ろしさには依然触れたのでその記事

2012.05.21 Calender Spreadのススメ3 ~期待通りの期待値曲面

を参照して欲しいが、行使価格160ドルのコール素ロングが意味する相場観は、超強気、SP500が1600ポイントを優に超えるということである。1800-1900ポイントくらいまで上がった時においしいポジションなのである。


Feb 1 2013 S&P500が1600を突破する確率50%超、投信資金流入で-ビリニー氏

【記者:Sarah Pringle】
 1月31日(ブルームバーグ):米株式市場調査・資産運用会社ビリニー・アソシエーツのラズロー・ビリニー社長によると、S&P500株価指数が今年1600を突破する確率は50%超で、株式投資信託への資金流入と予想を上回る企業利益が追い風になるという。

 S&P500種が過去最高値1565.15を超えて1600に達するには、現行水準からあと6.7%の上昇が必要。ビリニー氏は2009年に始まった強気相場に先立って米国株の買いを勧めていた1人。同氏は顧客向けリポートで、、「SPDR・S&P500ETFトラスト」の行使価格160ドル、12月満期のコール(買う権利)を購入したことを明らかにした。

 同氏は「われわれは前向きだ」と述べ、「投資姿勢の転換が見られる。投資家は投信を売るより買い始めている」と指摘した。調査会社EPFRグローバルの集計データによると、1月9日終了週の世界の株式投信への資金流入額は約220億ドル(約2兆円)と、統計をさかのぼれる1996年以来、2番目の高水準だった。S&P500種は今月5.1%上昇し、1997年以来最高のスタートを切っている。米連邦準備制度理事会(FRB)が低金利維持と景気押し上げに向け債券購入を拡大する中、S&P500種は2009年に付けた12年ぶりの安値から2倍強
に上昇している。

 S&P500種は現在、07年10月に付けた過去最高値を約4%下回る水準。ダウ工業株30種平均は最高値まであと2%弱に迫っている。ビリニー氏はまた、米経済や住宅市場の強さも同国株に強気になる理由として挙げた。全米20都市を対象にした昨年11月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で5.5%上昇と、06年8月以来の大幅な伸びだった。

原題:S&P 500 Has More Than 50% Chance at 1,600, Birinyi Says(抜粋)

【市場と実戦:Vanilla・幾何ブラウン】
2012.08.20 野村日本株投信(豪ドル投資型)1208設定日
2012.05.15|Calender Spreadのススメ2 ~株価と時間軸上の損益曲面
2011.12.16: FIAに行ってきました
2011.10.20: 日本のオプションは最も割安な水準
2011.02.25: 噂の真相 ドイツ銀:韓国でデリバティブ取引禁止処分
2010.11.08: 三田氏を斬る ~多彩な商品、Vanilla系
2010.07.08: 新しい読者の嬉しい努力 数学を使わないオプション解説 Vanillaって?
2010.05.14: オプションの清算値の計算方法 これは一体何の計算?? 
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている
2009.06.16: VAR SWAPのGamma+VanillaのGammaでGamma Neutralになるか?
2009.06.09: お前VEGAの意味わかって無いだろ?
2007.12.01: 初めて会った時から好きだった





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各社の予想であるが、これを記録して、来年に当たった外れたなどという幼稚な冷やかしは、素人諸君等にお任せしよう。
TOPIX 832.72、日経平均 9940円という12月21日引け後現在の環境下において、彼らの予想は一体どのくらいの価値のオプションで再現できるのかを考察してみよう。TOPIXと日経平均予想が混在しているので、彼らの予想をオプションポートフォリオで表現し、%オプションプレミアムの総和が高いほど、そのアナリストは明確なビューを示していることになる。

日経平均は2013年に上がる という最も稚拙な予想の場合、1年の10000Call買いと10000Put売り。これが基軸となる。さすがにアナリスト予想は株価が入っているので、年末11000円になると宣言した場合は、上記に加えて11000Call売りが入る。高値や安値に言及すると高値Call売り、安値Put売り。さらに安値の時期に言及したらその時期の10000Put買いと10000Call売りを重ねる。

と、様々なアナリストが統一予想フォーマットも持たず、好き勝手に発言した言葉を、大体同じ程度の合計プレミアムになるようにオプションポートフォリオあを構築してしまうあたりが、天才デリバティブデザイナーの"技"なのだがな。取引プレミアムがプラス、つまりオプション売り型のポートフォリオを組んでいるのは、俺の性格だ。あらゆる相場観を実現させるオプションポートフォリオを組む訓練として、諸君等もやってみると良いだろう。


Dec 21 2012 【2013年の日本株】ファンドマネジャー、ストラテジストはこう見る

【記者:河野敏、長谷川敏郎、岩本正明】
  12月21日(ブルームバーグ):国内外運用会社、証券会社のファンドマネジャー、ストラテジストらは2013年の日本株相場を次のように予想している。各氏のTOPIXや日経平均株価の高値、安値水準、値動きのイメージに続き、見解の詳細を記した。


●プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパンの篠原慎太郎株式運用部長
【TOPIXの予測値】
高値900、安値725、年末875
【日経平均の予測値】
高値1万1000円、年末1万500円

4.79% 12M850C Buy -5.31%
12M900C Sell 3.41%
12M825P Sell 7.59%
12M725P Sell 2.54%
12M11000C Sell 3.19%
12M10000C Buy -6.39%
12M10500C Sell 4.57%


●みずほ投信投資顧問の柏原延行執行役員
【日経平均の予測値】
高値1万1500円、安値9000円 高値月10-12月、安値月1-3月

5.24% 12M11000C Sell 3.19%
12M10000C Buy -6.39%
12M10000P Sell 8.74%
3M10000C Sell 3.29%
3M10000P Buy -4.33%
3M9000P Sell 0.75%


●東京海上アセットマネジメント投信の久保健一シニアストラテジスト
【TOPIXの予測値】
高値960、安値750、年末950
【日経平均の予測値】
高値1万1500円、安値9000円、年末1万1400円
※両指数とも高値月12月、安値月7月

4.78% 12M850C Buy -5.31%
12M950C Sell 2.11%
12M825P Sell 7.59%
6M825P Buy -5.06%
6M750P Sell 1.59%
6M850C Sell 3.71%
12M10000C Buy -6.39%
12M11500C Sell 2.18%
12M10000P Sell 8.74%
6M10000P Buy -6.11%
6M9000P Sell 1.90%
6M10000C Sell 4.64%


●三菱UFJ投信の宮崎高志戦略運用部長
【TOPIXの予測値】
高値950、安値750、年末900
【日経平均の予測値】
高値1万1000円、安値9000円、年末1万1000円
※両指数とも高値月10月、安値月1-2月

7.79% 12M850C Buy -5.31%
12M900C Sell 3.41%
12M825P Sell 7.59%
9M950C Sell 1.53%
6M825P Buy -5.06%
6M750P Sell 1.59%
6M850C Sell 3.71%
12M10000C Buy -6.39%
12M11500C Sell 2.18%
12M10000P Sell 8.74%
12M11000C Sell 3.19%
6M10000P Buy -6.11%
6M9000P Sell 1.90%
6M10000C Sell 4.64%


●BNPパリバ・インベストメント・パートナーズの清川鉉徳運用本部長
【TOPIXの予測値】
高値960、安値830 高値は年前半、安値1月

6.06% 6M850C Buy -3.71%
6M950C Sell 0.90%
6M825P Sell 5.06%
1M825P Sell 1.70%
12M950C Sell 2.11%


●ベイビュー・アセット・マネジメントの高松一郎運用第2部長
【TOPIXの予測値】
高値1000、安値750、年末1000
【日経平均の予測値】
高値1万2000円、安値9000円、年末1万2000円
※両指数とも高値月7月、安値月5月

この人大丈夫かね? 安値は5月で2ヶ月で3割上げて高値は7月で、年末も同じと言っているのか?
本当にここまで明確な相場予想だとこの人がトップになるが、多分この人は自分が何を言っている
のかわかってないので無視しよう。

●ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役
【日経平均の予測値】
高値1万800円(7月)、安値8700円(2月)、年末9500円

6.56% 7M10000C Buy -4.99%
7M10750C Sell 2.48%
7M10000P Sell 6.61%
2M10000P Buy -3.57%
2M8750P Sell 0.17%
2M10000C Sell 2.67%
12M11000C Sell 3.19%


●野村証券の田村浩道チーフストラテジスト
【TOPIXの予測値】
3月末875、6月末850、9月末925、12月末1000
【日経平均の予測値】
3月末1万500円、6月末1万250円、9月末1万1000円、12月末1
万2000円

8.36% 12M850C Buy -5.31%
12M1000C Sell 1.26%
12M825P Sell 7.59%
9M925C Sell 2.06%
6M850C Sell 3.71%
3M850C Buy -2.47%
3M875C Sell 1.54%


●メリルリンチ日本証券の神山直樹株式ストラテジスト
【TOPIXの予測値】
5月末810、8月末840、12月末880
【日経平均の予測値】
5月末9800円、8月末1万200円、12月末1万700円

8.26% 12M825C Buy -6.53%
12M875C Sell 4.27%
12M825P Sell 7.59%
8M850C Sell 4.33%
5M800P Sell 3.14%
5M825P Buy -4.54%

【アナリストの実力と株価予想】
2011.11.08 同族企業の巨人カーギル、執着薄の新世代登場で10年内に株式公開か
2011.09.20: リソーのMSワラントファイナンス
2010.08.09: 株メール Q1.企業業績以外で株価が上がる理由
2010.03.10: オプション取引に警戒感
2009.12.02: 金融犯罪に手を染めた元米ミス・ティーンの転落人生
2009.09.23: デリオタおじさん
2009.09.15: OptionのNewsはどうしてこうも気色悪い書き方なのか
2009.01.21: アナリストの前で言っちゃいけないこと
2008.12.26: 将来の株価をVolatilityで予想ってお洒落
2008.07.21: GS オプション株価予想の結果
2008.07.01: すばらしきAnalyst様
2008.06.03: VND ドンドン売られる
2007.12.18: 株式市場の将来の方向性



Binomial TreeにおけるGreekの計算について

原則としてGreekは両側数値差分で計算するならば{f(X+Δ)-f(X-Δ)}/2Δ で計算するため、1Greekに付き2回のバックワード・インダクションをやらなければならない。よってプレミアム・バリューの計算に必要な時間をTcとすると一次微分Greekは2Tc必要で、仮に株価、ボラティリティ、金利、配当、時間の一次微分Greekを計算するとなると、11回のバックワードになるので、11Tc時間がかかる。

しかし、ちょっと工夫すると、デルタ=株価の一次微分、ガンマ=株価の二次微分、セータ=時間の一時微分まではBinomial Treeに内包される数値を使って計算できるため、一度のバックワード・インダクションで全てを求めることができる。

Binomialは、全てのグリッドポイントで、オプション価値を持っている。それをfで現わすなら下記のように表現できる。

Binomial-Start.png

f、fu、fd、fuu・・・と続く各グリッドポイントのオプション価値は一度のバックワード・インダクションで計算されているので、それを再利用する。

この世界ではあまりShare's Delta=∂f/∂Sは使わないのだが、Share's Deltaをデルタとするならばデルタは
t=1時点のオプション価値を利用し、(fu-fd)/(Ru-Rd)の数値差分で計算できる

ガンマについてはt=2時点の3個の株価を使えばよくて、
{(fuu-fud)/(Ru^2-Rud)-(fudーfdd)/(Rud-Rd^2)}/{(Ru^2-Rd^2)/2}

ここでは一度上がって、下がった株価をRudと表現し、初期株価×上昇率×下落率と一般的な表現をしているが、Volatility σの分布のためにはuの値は決まっておりu=exp(σ√t)、d=1/uとなる。ud=1なので、Rud=Rとなるから、

時間微分は(fud-f)/(t2-t0)で計算できる。

この計算方法の問題は何であろうか? ストックオプションや新株予約権は一般に数年1-5年のアメリカン・オプションであることが多い。もし仮に5年だとして、バックワード・インダクションのステップ数を250で均等分割すると1ステップあたりの時間は5年÷250なので、約一週間となる。
一般にこのようなファイナンスをする銘柄は、会社そのものが怪しげなので、Volalitityも30-45%を想定して良いだろう。つまり、1Day1σが2-3%動く。よって一週間なので、u-d=0.12程度になる。意味するところは上下各6%の両側数値差分で計算されたデルタであり、ガンマに至っては12%数値差分となってしまうのである。

微分の場合はΔ->0の極限値が定まることが要件なので、問題ないが、数値差分はΔ>0なので、{f(X+Δ)-f(X-Δ)}/2Δで得られる結果は、当然ながらΔの大きさによって結果が変わる具体的には依然に書いたが、それを是正するためには、細かく取ればよくて、Volatility30%の5年のオプションの時、5000ステップに均等分割すれば、ガンマの計算も1%数値差分となることが想像できよう。

5000ステップのBinomial Treeの計算の計算時間の主たる部分は、計算時間がかかるexpとifの判断の数を抜き出せば、
5000個の株価の計算(Binomial Treeは、uとpだけ計算すれば良いので、expの計算実は2回なのだが)
2+3+4+・・・+5000+5001=12,507,500回の最適行使判断(if文)
を計算することになり、ExcelのVBAくらいのスペックだと、耐えきれないくらいの時間がかかるとイメージしておけば良いだろう。これならばTreeの外から新しい株価を与えて250ステップのバックワード・インダクションを2回やったほうが計算コストが低いということになる。

Binomial-Tree-Start-d.png
これを解消するために均等分割を止めて、手前、つまり現在の近い所の分割を図中の赤い領域のように細かくすればこの問題は解消できる。緑の縦線が、このBinomialの中での時間最小単位にであるが、黒い領域のようにグリッドを(図中で言うと4倍くらいのグリッド幅)荒くすれば全体のグリッド数を変えずに精度を上げることができるのである。この手法は単にグリークを計算するためだけではなく、各パラメーターに期間構造を入れる時にも、使えることがお分かりいただけよう。幾何ブラウン運動想定でも、期間構造を入れることはできる。

しかし、ここまでこだわるのなら非幾何ブラウン運動への序章として、離散配当モデルを考慮に入れるべきであろう。幾何ブラウン運動のドリフト項μには金利・配当・貸株などが含まれるが、配当は配当落ちという非連続的な動きをするにもかかわらず、連続的な配当率で計算されている。特にアメリカンのコール・オプションは、配当と行使が密接な関係を持っているゆえに、配当落ち日に予想配当額、突然ガコッと下がるという動きを"幾何ブラウン運動"に加える程度の精度向上は、手間と労力の割にあっていると思われる。

この記事は蛇足だったかな? ここまで細かいことはわかっている人じゃないと読めないから、解説として無意味だったか…。
まぁ、金利・為替系のディーラーが当ブログを読んでくれているという話を聞いたばかりだったので、金利系諸君に無縁であろう離散配当という概念にまで展開させるために書いてみた少数人数向けのオタク記事ということで、大目に見てやってほしい。

【非幾何ブラウン運動系関連記事】
2011.03.16 Dupireのセミナーに行ってきた 2/2
2010.11.01: 三田氏を斬る ~トレーディングの現場の解説
2010.04.06: VIX Option Trader
2010.01.18: 50% Knock-In PutのPremiumって実現できるの?@幾何ブラウンへの近似有効性
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている
2009.06.23: Marketの振る舞いO/NとIntraday
2009.04.14: SingaporeのGDPとSGDのJump
2008.12.26: 将来の株価をVolatilityで予想ってお洒落
2008.02.01: Skewness(歪度) マーケットの非対称性 
2008.01.24: 恐るべしJump DiffusionとVAR-SWAP
2007.12.27: Jump Diffusionと市場効率性









ある時刻τと満期の2回だけ行使可能な最もシンプルなバミューダンをモンテカルロでバリュエーションしてみよう。

モンテカルロはとにかくごり押し手法なので、現在の株価Sから、ある時刻τでの株価をで発生させる。前回のヨーロピアンと同じだが、時刻を満期Tからある時点τに替えただけのことだ。そして、ある時刻τ時点での最適行使判断をしなければならないので、イントリンシックバリューはS(i)から即座に求まるが、オプション・バリューは、さらにもう一段、時刻τから満期Tまでの間のVolatilityを乱数を発生させ計算する必要があり、このS(i)から派生的にをすることで求まる。

よって、ある時点τでの最適行使判断を合わせて、現在価値に戻すとという二重構造になり、現在からある時点τまででn通りの株価が発生しており、その各点からさらに満期Tまでn通りの株価が発生するのでn^2個の乱数と計算が必要とされるので、n=10,000で設定してしまうと、合計で100,000,000個の乱数の生成と計算をすることになる。


次に、満期までのある特定の時点で250回途中行使可能なバミューダンのバリュエーションを考えるわけだが、これは事実上のアメリカンオプションである。

では、ある時点τで、継続価値と行使価値の比較を行った最適行使判断を、満期までの時間を250分割して、全時点で最適行使判断を行えば良いだけの話なのである。つまり、Treeの最小構成で見るとわかりやすくて、
nbt0405-423-F2.gif
満期の状態からバックワード・インダクションするわけだから、SuあるいはSdを使ってペイオフを計算し、一個前のS時点での期待値がpとp-1で計算できる。つまり、E(S)=p・Max(Su-X,0)+(1-p)Max(Sd-X,0)。これが満期からその一個前の時間に戻す時の式である。その一個前の状態ではこうして計算された継続価値であるE(S)と現時点の株価Sの行使価値Max(S-X,0)の高い方を取れるので、Max(E(S)、Max(S-X,0))で高い方を選択し、各時点でのオプション・バリューが定まる。そのオプションバリューOV(S)をもってもう一個前の時間に戻し、同様に継続価値と行使価値の比較を250回やれば、時刻t=0まで戻すことができるのである。

一方、モンテカルロで同様にやろうとすると、各判断ごとのモンテカルロ試行回数をpとすると合計試行回数がp^250というクレイジーな数値となり、最小のp=2の精度であっても、2^250なので、エクセルのRandで発生できる乱数の数2^15と比べると、乱数発生プログラムがオーバーフローしてしまいそうということがお分かりいただけたであろう。

各点最適行使の申し子、アメリカンオプションのために存在するようなTreeアプローチに対して、モンテカルロは、アメリカンオプション相性が悪い、いや、この手順では事実上計算不可能ということがお分かりいただけたであろう。もちろん、特殊な方法でバックワード・モンテカルロというのも、存在しないことは無いが、お抱えクオンツ部隊=数学者が10人以上在籍しているような超大手金融機関でも、実務上取り入れているか入れてないか・・・というくらいの代物である。ましてや、どうでもいいような規模のファイナンスの価格の正当性をチェックする零細の第三者評価機関が、バックワード・モンテカルロ? 絶対に無い。というか単なるアメリカン・オプションなら、Binomial Treeで十分で、鬼のような工夫を凝らしたバックワード・モンテカルロで評価する必要もないからだ。

怪しげなファイナンスの一例としてよくあるのが、第三者割当先に対しての有利発行が疑わしいファイナンスがある。価格の不透明性を上げるために使われるデリバティブの典型例は、Convertible=新株予約権付社債(=昔は転換社債と呼んだ)、もしくは、Warrant=ワラント=新株予約権で、この付随する予約権の行使型はAmerican型の任意のタイミングで行使可能であることが多い。このデリバティブの引受価格の正当性を"評価した"と言っている手法が、モンテカルロと言っている場合、まずその評価機関はデリバティブの評価を全くわかって無い素人、つまり詐欺師が適当にフカシこいているだけ と判断して良いだろう。


初心者諸君、あるいは株の人たちは、このくらいの理解で十分であろう。しかし、デリバティブの人間は、怪しげなファイナンスがポジションとして発生することもあるので、ポジションの管理に際して、Treeモデルにおける最も基本的なリスク・グリークの計算方法について少し言及しよう。

この先の文章を理解しよう・読もうという読者は世界広しといえども50人以下、理解できる人がさらに少なく、読者でこの程度のことなら知っていると言えるのは10人未満なのは確実だな。だからその40人と言う少数ヘビーユーザーのための記事なんだぞ。ここまで読めた読者諸君は偉い。

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バミューダン・オプションにおける最適行使判断を行うプロセスについてBinomial Treeを用いて解説していこう。最適行使判断とは

行使することで得られるイントリンシック・バリュー=S-X
行使しない=継続価値=タイム・バリューも含めたオプション価値

のどちらが大きいか判断して行使するかしないか決めることである。アメリカン・オプションの早期行使 において既に述べたことではあるのだが、配当がある株式の場合、オプション保有していても得ることができない配当のため、配当落ちによって継続価値が下がる。十分にインザマネーでタイムバリューがかなり小さい状態だと、行使して配当受給権を得た方が得という場合が、行使するケースに相当する。

ある時刻τにおける株価がわかっていれば、イントリンシック・バリューはMax(S(τ)-X,0)で即座に求まる。それともう一つ、最適行使判断に必要なのは、ある時刻τにある株価S(τ)だった時のオプションの継続価値、オプション・バリューが必要で、数式で書くとMax(Max(S(τ)-X,0),Max(S(T)-X,0)=Max(イントリンシック・バリュー,オプション・バリュー)=Max(行使価値、継続価値)で、行使価格>継続価格であれば行使し、行使価格<継続価格であれば行使しないというだけのことなのである。

この考え方はデリバティブだけでなく、広範囲に応用でき、世に聞くリアル・オプションはこのバリュエーションで行動するという考えである。その他にも、私がよく言っている買い物には、直接費用+維持費用があるというのも、ここからヒントを得た考え方であり、このリアル・オプションの行使 or Not、つまり、買うの?買わないの? を判断するわけであるが、いわゆる消費活動、小売店では行使されることは皆無である。多少後ろ向きな話ではあるが、Min(慰謝料,婚姻維持費用)の最適行使をすると、今度は逆に多くの場合、即行使して慰謝料を払う方が賢明であることが多い。私も、もう少し経験を積んで、その前の段階で、Max(奥さん、愛人)=Max(結婚、うやむや)が最適行使されていれば、大きな問題にはならないのであるが・・・。

Binomialでバミューダンをバリュエーションする時、満期における最適行使判断はヨーロピアンと全く同じである。もう一点の時刻τでの行使判断をバリュエーションに加える必要がある。まず、時刻τでの株価の状態を考えよう。ここでは面倒なので現在t=0からτまでをm回均等分割、そしてτから満期Tまでも同様にk回均等分割するとしよう。よって、途中τ時点でm+1個の株価が発生しており、満期T時点ではm+k+1個の株価が発生しているはずである。

Bermudan-Optimal-Exercise.jpg

満期T時点でのm+k+1個の状態は、途中τ時点で通過するm+1個の全ての株価から派生している。逆にいえば、m+k+1個の状態さえ作っておけば、τ時点でのm+1個の状態から満期までの全ての状態を網羅しているので、図中の緑の三角形は、τ上のm+1個の起点どこからでも引くことができる。τを過ぎた時点で、途中の権利行使時点はないので、ヨーロピアンになる。すなわち、図中のk+1個の将来時点の株価と確率を使えば、τ時点でのヨーロピアンの価値=オプション・バリュー=継続価値の計算ができる

満期の時点の株価をもって、その前の状態τでの最適行使判断をして・・・という時間軸を満期から遡って現在価値に戻していく方法をバックワード・インダクションと呼ぶ。満期時点の株価の分布を使って計算された継続価値とτ時点でのイントリンシック・バリューを比較して大きい方を選択する。その後は、τ時点での各株価における確率が求まっているので、同様に期待値計算をすればバミューダンの価値が求まる。

なんてことを、インドネシアのキャバ嬢とSMSしながら書いてしまう俺に酔ってしまうな。

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では実際にBinomial Treeとモンテカルロを使い、幾何ブラウン運動を想定して、European CallのValuationをしてみよう。
解析的アプローチはいわゆるBlack-Scholes方程式で、導出も結果も、どこの教科書にも、Wikipediaにも載っているので割愛する。

Europeanは非・経路依存なので、アプローチ・方法に依らず、必要なのは満期の状態のみである。

Ⅰ.Binomial Treeによるアプローチ

Binomial-Start.png

n回時間分割したBinominal Treeの満期は、n+1個の株価が発生しており、現値S、上昇率u、下落率dとした時、
最も高い株価は、そして次に高い株価は , ,… ,
と最も低い株価まで離散的に発生している。

確率も同様に上昇確率pとして、二項係数C(n,k)を使って表現すると、
, , … ,
と対応している。

よって、n+1個の各点においてのペイオフはコールオプションであるから、Max(S(T)-X,0)のS(T)にi個目の点における離散的な株価を代入すれば、 となり、さらに確率が求まっているので、期待値が計算でき、 となる。ここでのn回時間分割のnは100~200くらいの均等分割で十分であろう。Payoffに連続性があるため、それほど細かくやらなくても良いであろう。

ちょっと気合いを入れてMIMEで書いてしまったが、これも一般的な教科書レベルで書いてある情報だ。


Ⅱ.モンテカルロによるアプローチ

モンテカルロはもっと単純で、のε部分に標準正規乱数を入れれば満期時点の株価が一つ定まる。であるから期待値はn個の乱数で株価を発生させて、各々のパスごとにペイオフを計算し、平均を取ればいいだけだ。その作業を表すと、となる。European型の場合は、n個の乱数のnだが、プレミアムだけならn=100でもそれらしい値が出る。n=10,000ならば、解析解に近く、1次微分のグリークくらいまでなら工夫しなくても問題なく出るだろう。


次は、本題のアメリカンを計算する前に、ある時刻τと満期の2回だけ行使可能なバミューダンを計算しよう。なぜバミューダンを先に考えるかと言うと

2.バミューダン・オプション(Bermudan):満期まで間、特定の複数の日で権利行使可能

で一般には満期までの間、特定の複数日でn回行使可能なオプションなのであるが、n->∞にすればアメリカンになる。しかし、現存のアメリカン・オプションはほとんどがPhysical Settle=現物決済で、Call Optionならば、行使価格Xを払うと、Q日後に株が調達されるという形がほとんどなのでn=オプション期間中の営業日とするだけで十分なのである。Cash Settle=現金決済のアメリカン・オプションというのは今まで見たことないが、知っている人がいたら教えてくれ。仮にCash Settleのアメリカンで瞬間瞬間行使可能な条件、あるいはPhysical SettleだがT+0ms(0ミリ秒)、行使した瞬間に株がセトルされるような将来が来たすれば、n->∞もある程度考慮しても良いかもしれないが、コール・オプションの行使自体が配当落ちという離散的なイベントが行使に密接に関係しているので、アメリカンは事実上n=営業日のバミューダンなのである。


数式使いすぎてて、読む気がしない? 初心者読者がそう思っているだろうと記事を短めにしてるんだ。今日の記事をよく読むと、高校生でも理解できるレベルの数式で記述してある。


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最近、アジア放浪記化しているので、たまには初心者向けにデリバティブでも書こうか。とはいえ、かなり気をつけても、いつものパターンで書けば書くほど、急速に上級者向けに展開していくであろうから、初心者向けとはいえ、プロフェッショナル諸君も気にせず読んでくれてかまわない。初心者諸君は、ここで書いていることは、プロならば当然理解しておくべき基本的内容ではあるものの、当のプロの連中でも100%理解できていないあっぷぅが多い事実があるから、途中でわからなくなってもそう落ち込むことは無い。

まず、アメリカ・オプションとは何か? を3つのオプションを比較しながら説明しよう
1.ヨーロピアン・オプション(European=Plain Vanilla):満期において権利行使可能
2.バミューダン・オプション(Bermudan):満期まで間、特定の複数の日で権利行使可能
3.アメリカン・オプション(Amerian):満期までの間、いつでも権利行使可能

Option-Exercise.jpg

つまり、同一のペイオフを持つオプションであるならば、権利行使の数が多いだけオプションは価値があり、オプション・バリューの大小関係は
European < Bermudan < American である。

モンテカルロとは、オプション価値を計算する手法の一つであり、これも大きく分けて
1.解析的アプローチ
2.ツリー,有限差分法=FDM(Finate Difference Method)
3.モンテカルロ
とあり、お素人衆がよく勘違いしてこれらをモデルと分類していることがあるが、これらはあくまでアプローチ・メソッド・手法であり、モデルではない

モデルとは株価の振る舞いの表現方法である。株価のモデル化の"モデル"である。モデルはかなり多岐にわたっていて、記述しきれるものではないが、これまた3つだけ書いてみると
1.幾何ブラウン運動:μな速度で成長し、σな大きさでガチャガチャ動く運動で数式で書くととなる。
2.Volatility Skew Model:全行使価格のオプション価格を一つのモデル内で表現可能。
3.Stochastic Volatility Model:Volatilityを決定論的な存在から脱却させ、Volaそのものが確率変動する。
とちょっと難しくなってきているが、ここから先は、解析的アプローチが容易とされる幾何ブラウン運動を前提として話を進めよう。

ここから下は話が少し簡単になるから、式でビビるな。頑張れ。

さて、もう一度3つのアプローチに話を戻そう。

1.解析的アプロ-チは、各デリバティブのペイオフ・条件を微分方程式で解くわけだが、驚くべきことに、今回あげた3通りのオプションと3通りのモデルの9通りの組み合わせのうち、1の幾何ブラウン運動を想定し、かつまた1のヨーロピアン型の場合しか解くことができない。美しさや計算速度は圧倒的だが汎用性に問題がある。

2.ツリーの中で最もシンプルなBinomial Tree 2項アプローチは、現在の株価Sに対して、将来のある時刻における株価が離散的に、2つだけ存在すると仮定している。一定率u上がるuSが確率pで起こり、と一定率d下がるdSが確率(1-p)で起こるという2シナリオを用意することで株式市場の揺らぎを表現しようとしている。
nbt0405-423-F2.gif
時刻の刻みをなるべく細かく取ると、いい加減に見えたわずか2通りしか持たなかった2項の分布、満期までn回に分割すればn+1通りの分布に変身する。さらに2項ではなく3項にして、きめ細かくしたり、有限差分法、わかりやすく言いかえれば確率漸化式で一般化した離散分布表現も可能だというだけで、2項分布を丁寧に展開したくらいに理解しておけば良い。

3.モンテカルロはこれら3つのアプローチの中でも最も原始的、頭を使わない方法である。株価がガチャガチャと動く様子をある乱数で決め打ちして、一つの将来の株価を発生させる。コンピューターの力を使って、多くの乱数を使って多くの株価を発生させて平均を取れば、微分方程式を解かずとも乱数項の効果を反映させた結果に近づくであろうという楽観的なアプローチである。

バカっぽく言ってしまっているモンテカルロだが、もしi個の複数の資産でj回の参照点を必要とするような複雑なペイオフを持った多資産・経路依存型のデリバティブの場合、i×jの独立した乱数を均質に発生させる必要があり、美しい乱数の生成は、Sobol sequences、Quasiというキーワードの完全に数学の世界の話でもある。エクセルのRand関数程度の精度では、場合によって、i×j次元Cubeの中に分布する乱数が不気味な作為を持った図形(つまり均質ではないということ)を形作ることもある。

もう戦意喪失しちゃったかな? まだまだ。アメリカン・オプションをモンテカルロするのが難しい理由を説明するための基本的な単語の整理だけだぞ。

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