デリバティブ 一覧

何やらもめごとかな? どうしたのどうしたのぉー?

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第三者割当やってたんだ・・・
http://www.acekoeki.co.jp/ir/newsrelease/edited/322.pdf

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220円の行使価格に対して、2.884円? 安いな。

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ええー?? 3年間のアメリカンオプションが1.2%?? 終値なんで書いてないんだろう。書きたくないんだろうなぁ・・・
しかもまたアメリカン・オプションをモンテカルロで計算してることにしようとしてるし。前も見たことある記述なんだが、なんでモンテカルロなんだ? 新手の宗教? それとも特別な先端技術でも使っているのか? Backwardモンテカルロ、不可能じゃないのかもしれないが、金融機関でもメジャーな方法とは思えないぞぉ。普通にTreeでBackwardすれば良いではないか? 怪しいなぁ・・・もぅ・・・ぷぷぷ。

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やっぱり、終値239円 行使価格220円の3年のインザマネーのアメリカンオプションが1.5%。何やら行使価格を上げることばかりに着目して書いていますが、行使価格が低くても、それなりのオプションプレミアムを支払っていただくならば、それは有利発行にはなりません。

しかし、これは行使価格決定プロセスよりも新株予約権が持つオプショナリティを異常に低く見積もりすぎた有利発行にあたり、不適切な取引です。

行使価格の150%以上、330円以上に株価が上がった場合、3カ月通知で原価買い戻しできるとあるが、これはいわゆるノックアウトのようなオプションバリューの減価効果を持つ条項ではない。これはアメリカン・オプション、行使期間は3年間ずっとなので、330円以上になったら行使して売らなければならないというだけでオプション価値が0になるノックアウトとは異なり、オプショナリティが0になり、イントリンシックバリューになるだけである。50%もITMのオプショナリティの価値はある程度限定的なので、わずかながらに価値が落ちる程度である。よって概算値の計算にはモンテカルロ(笑 や Treeなど不要で、3年のヨーロピアンでざっくり計算して40円、20%弱は価値があるだろう。発行済株式数の18%も発行するから、希薄化と売却時のマーケット・インパクトを考慮したとしても20円くらいはある。それが2.884円、1.2%というのはどう考えても正当化できない。


上場企業取締役会参加者の皆様へ

第三者割当の引受価格の正当性の評価について、第三者評価機関に頼むことがありましょうが、常識的な感覚は持ってないと、不当な価格で決定され、後にご自身が訴訟されるリスクがあります。私が特別顧問で一時的に雇われてあげますから、怪しげな連中に騙されないようご用心あそばせ。

【個別株デリバティブ】
2012.05.31|Facebookは買いか?売りか?
2011.12.20: 秋の夜長の東証デリバティブ祭り オンデマンドTV
2011.07.20: 欧州銀行ストレステストとADRの株価
2011.05.19: 東証マスコットキャラ「かば子」募集要項
2011.04.11: 史上最大のボロ儲け ~一人で笑うポールソン 5/6
2010.11.05: 米ゴールドマン、バフェット氏への50億ドル返済を検討
2010.06.23: 年収9億円 7201 2009年有価証券報告書によるストックオプションの評価方法
2010.04.21: AIGの前社長が株を売った
2009.11.25: 米スリーコムのオプション取引、SECが調査-HP買収発表前に急増
2008.09.10: Put Option Ecstasy @LEH US
2008.07.02: 私好みの株価予想
2008.04.24: ESOP Valuation (従業員の視点から)
2008.04.12: 一族家における投資教育 ~他社株転換債















久しぶりに見たな、個別株のエキゾチックものPublic Offeringだ。設定日は9月5日らしい。わかるか?
前回、野村の投信は、野村からお金をもらってたこともあったので、設定日の夜にブログを公開してやったんだが、
俺に挨拶なく公募とかやってると、設定日前に発表しちゃうぞぉ。

この商品は最も日本で一般的な早期償還型で、固定クーポンのKnock-In PUT内包だ。さて、一般読者が最も興味あるのはこのような商品が株式市場に与える影響であろうから、それについて解説しよう。
販売会社の販売力次第だが、今回のこの公募ではそれほど大きくは集まらないだろうが、次回以降大型の公募の場合に応用して欲しい。

このエキゾチックデリバティブが、生み出す歪みが最も大きく株式市場に影響を与える点は、株価で現わすと以下の3点となる。

1) 値決め価格 9月5日の引値、(9月4日時点での終値で想定するとXX円)
2) Knock-In価格の少し上 値決め価格の60%~63%
3) *Knock-Out価格の近傍 値決め価格の103%~107%

*Knock-Outというと連続参照のような印象を受けるから、この商品の場合は離散参照の早期償還トリガー価格の近傍と表現するのが適切だ。

現物諸君には理解しがたいかもしれないが、デリバティブは常に株価と時間の概念が共存するので、それを加えて書くと、

1) 値決め価格 9月5日の大引け

そんなに大きく集められないとは思うが、引けピンしていたら、その分がImpactである。発行総額の40-50%程度の金額の買い需要が発生する。この記事を読んで資金力のある読者諸君が先回り買いをして引けで売ってくれれば引けピンは起こらず、この仕組債を購入した個人投資家にとってFavorな結果を生みだす。なんとも愛国的で投資家保護の観点からも素晴らしい記事なのだよ。

2) Knock-In価格の少し上

仮に2012年の9月中に大暴落が起き、Knock-In価格に近付いた場合は、大した影響は無い。最終参照2013年6月を終えてもまだKnock-Inしていない状態での、2013年7月-8月28日までの期間でKnock-In価格の少し上に近づいてきた場合、この60-63%程度の領域で売り需要が発生する。その金額は発行総額の10%~400%と幅が広い。400%と激しい売り需要の発生は一度もKnock-Inすることなく2013年8月21日~28日を迎え、かつまたトレーディング・デスクがモデル通りにアグレッシブなトレーディングを行う場合に発生する。この確率は非常に低いが、最終参照日8月28日に近ければ近いほどその需要は大きいということを念頭に置きながら、発行総額の数割程度の売り需要がこの価格帯で発生すると考えておいてかまわない

3) Knock-Out価格の近傍

早期償還判定日である
2012年11月27日
2013年2月25日
2013年5月28日
の3回、その3日前から一週間前から判定日にかけて、103%から105%の間は買い需要、105%から107%は売り需要が発生する。トレーディング・デスクの複製ニーズで発生するポジションは、現値近辺では発行総額の40-50%に対し、このKnock-Out価格近傍では100%近くに膨れ上がることから、これもやはり数割の買い需要の発生となる。しかし、早期償還判定日を過ぎた時に2つのシナリオが考えられる。

3-a) Knock-Outしなかった場合、デリバティブ契約は継続されるが、必要ポジションは発行総額の40%以下に戻る。
3-b) Knock-Outした場合、デリバティブ契約は消滅するので必要ポジションは0%。

すなわち105%の下方近傍でGamma Shortが発生しているのだが、このGamma Shortのマネージングには、かなりなリスクが伴うため、トレーディング・デスクがこの通り複製するとは限らないので、買い需要が発生するかどうかはデスクヘッドの方針に依存する。一方、上方近傍はトレーディング方針には依らない確実な"実需"の売り需要が発行総額の数割程度、発生する

以上、全てはこのデリバティブ契約が持つDiscontinuityから発生する特需であるが、これは単に株の読者のためのプレゼントではなく、金融監督庁に対する提言でもある。たとえ、トレーディング・デスクがオフショアにあるようなハウスであったとしても、分け隔てなくしっかりと監視し、不適切な取引行為があれば躊躇なく取り締まるように。


早期償還条項付 参照株式株価連動社債(パナソニック株式会社)銘柄概要
http://www.monex.co.jp/Etc/topbn/guest/G800/new2012/news1208_13.htm

正式名称バークレイズ・バンク・ピーエルシー 2013年9月4日満期 円建 早期償還条項付 参照株式株価連動社債(パナソニック株式会社)
発行体バークレイズ・バンク・ピーエルシー
格付けA2(Moody's)、A+(S&P) ※ 日本で登録を受けた信用格付業者ではありません。 「無登録格付に関する説明書」(PDF:175KB)を必ずお読みください。
利率/税引前 年6.50%
発行日 2012年9月4日
利払日 年4回(2012年12月、2013年3月・6月・9月の各4日)
償還日 2013年9月4日
申込単位 額面250,000円単位
申込期間 2012年8月16日(木) ~ 2012年9月4日(火) 14:00
参照株式 パナソニック株式会社発行の普通株式 (株式銘柄コード:6752、東証一部)
当初価格 2012年9月5日の参照株式の株価終値
早期償還判定水準 当初価格の105%(1円未満四捨五入)
早期償還評価日 満期償還日を除く各利払日の5営業日前
ノックイン判定水準 当初価格の60%(1円未満四捨五入)
観察期間 2012年9月5日から満期償還日の5営業日前までの期間
最終価格 満期償還日の5営業日前の参照株式の株価終値
早期償還 「早期償還評価日」の参照株式の株価終値が、「早期償還判定水準」以上となった場合: → 「早期償還評価日」の直後の利払日に、額面25万円あたり25万円と当該利払日までの利金をもって早期償還されます。 ※ 早期償還した場合、それより後の利金はお受取りできません。
満期償還の方法 (早期償還しない場合) (1) 観察期間中の参照株式の株価終値が常に「ノックイン判定水準」を上回って推移した場合: → 満期償還日に、額面25万円あたり25万円で償還されます。 (2) 観察期間中の参照株式の株価終値が1度でも「ノックイン判定水準」以下となった場合: → 満期償還日に、額面25万円あたり以下の算式で計算される金額で償還されます。 「25万円×最終価格÷当初価格」
備考 上記「営業日」は「予定取引日」であり、取引所が通常の取引を予定している日です。 詳しくは目論見書をご確認ください

【Exotic Derivatives関連記事】
2012.04.27|アメリカン・オプションの早期行使
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2010.11.22: 三田氏を斬る ~多彩な商品、エキゾチック
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2009.09.01: バイナリーオプションの性質から読む市場拡張性
2009.08.12: Double Barrier 複雑なるもの
2009.08.04: Barrier Option Pricing
2009.07.28: Exotic Parity2
2009.06.02: Multi Underlying OptionのGamma Trading
2009.05.26: Crossed GammaとDeltaの定義
2009.01.26: Exotic Parity
2008.03.03: Lookback 神なるTrade
2008.01.13: Worst Option ~香港より愛を込めて









日本語訳しちゃうと俺の作為的な意訳になってしまうので、原文のままの方が、素人ぶりが露骨に表れてていいだろう。

Have a few more queries.

1) Is the option that the fund invested are listed in Tokyo stock exchange?

Administrator: The Fund trades in Nikkei 225 options

Adminの答えいいね。そうTradesだ。

2) For the market price risk, we need to insert the sensitivity analysis
for the market price risk, could you provide the following detail?
The analysis is based on the assumptions that the Nikkei 225 (the “Index”)
increased by 6% and decreased by 3%, with all other variables held
constant

Effect on net assets attributable to redeemable participating shares of an
increase in the Index and
Effect on net assets attributable to redeemable participating shares of a
decrease in the Index

Administrator: Please refer to Manager

いくつかある質問のうち、2番目のリスク分析についての質問は、Adminが俺に投げてきているわけであるが・・・、言っちゃ悪いけどよぉ、この質問の文章を読んでいるだけで、お素人臭がプンプン臭うぜ。おい、ボケ会計士、お前は時価の照合でもしてろ。数値見て、同じ数値であることを確認するだけだ。お前でもできる。だが、デリバティブのリスク? お前には無理。説明してやるけどどうせ理解できっこないよ。

会計士ごときがなぜリスク分析などをしなければならないのか? デリバティブは時価にあまり意味がないからである。一番わかりやすい例は先物で、現値と取引値が同じだと、いくら持っていても時価は0になってしまう。10万枚の先物ポジションが時価0というのはあまりに意味がないからである。

と思いながらの俺の回答。うーん、英語なのがちょっと恥ずかしいがまぁいいだろう。(この短い数行の中に文法の間違いが5か所あるとか指摘してくれなくていいよ)

Sure,

1) Nikkei 225 options listed in "Osaka" Stock Exchange.

2)PnL sensitivity

We recorded 1% Delta and 1% Gamma in our spread sheet.
+6% Scenario : Delta * 6 + Gamma * 6^2 / 2
-3% Scenario : Delta * (-3) + Gamma * {(-3)^2} / 2

>Effect on net assets attributable to redeemable participating shares of an
>increase in the Index

Nikkei 225 Index is enough diversified index.
Maximum weight of single stocks is 5 to 6% currently.
The maximum shares move 10%. The impact of index is 0.6% = 10% * 6%

Regards,

大証上場だし。ま、そりゃ知識の問題だから、まぁ、いいや、単に知らなかっただけということでこれは許そう。
センシティビティねぇ・・・内部管理的には当然やってる。投資家になら見せても良いけど、会計士のお前にそんなの見せる必要あるのか? 見せても良いけどどうせわからんだろ?
バカ相手に詳細説明しても意味ないから書かなかったが、「俺がお前に渡したDeltaとGammaの数値は+20%とかやるともう意味ない数値だからね。幾何ブラウン想定のブラック・ショールズによる計算だから」と書き加える必要もないと俺になめられてる会計士。

英語で書けば日経平均はNikkei 225ですから。225銘柄も入っていたら一銘柄のImpactは小さそうだな、とかなんとなく分かれよ。ボケ。


By using the formula provided, I try to change the % to 10% for both
direction, and the result are as follow

+10% = -XXX
-10% = -YYY

Kindly comment on the result above, is it possible to have a negative
result, if the index go up 10%
. Appreciate if you can share with us on how
you get the Delta and Gamma.

As one of the disclosure requirement of derivatives, kindly advice us the
notional amount of these four contract held as at year end.

Please do not hesitate to contact us should you have any queries.

Regards,

ほらー、どう? 俺の予想。質問の最初の数行見ただけで、コイツ素人だなってわかるのよ。20%のSimulationは、やってないみたいだけどw
当時取ってたポジションがGamma Shortだから、どっち動かしてもマイナスで、困ってるみたいなんだよ。プッw
「ぇっ、どっち動かしてもマイナスって、俺、計算間違ったのかな?」 と思っているようなので、やさしーく

Right. Gamma Short position is losing money with big move.
But, Gamma short generates "positive carry".
If you move the time, this position gains money.

> Appreciate if you can share with us on how you get the Delta and Gamma.

Calculated by Black-Scholes.
http://en.wikipedia.org/wiki/Black%E2%80%93Scholes

ウィキペディアでも嫁w ま、ウィキなんか読んだって、Deltaの計算できねーけどな、ハハハ。John Hull読んでも駄目だね。Spotと金利・配当のところでつまづくだろうな。よく素人がブログ等で今日のエクスポージャーとか言って計算してるけど、この辺りは間違えて計算しているだろうなと想像がつくわ。ちなみに、俺は凝り性なので営業日Day Countだ。なんて素人会計士に言ってもなぁ・・・。たかがDeltaの計算だけど、俺の計算は突っ込みどころが極めて少ない計算なのだが、チェックする会計士がこのレベルだと実にもったいない。

> As one of the disclosure requirement of derivatives, kindly advice us the
> notional amount of these four contract held as at year end
.

出た-、Notional Size。

どうしようか? これだから素人は・・・
先物やNoteならNotionalってのはわかるのだが、オプションのポートフォリオにおいて、それを計算することに何の意味があるのだろう? つーかどうやって計算するんだ?
この同じ質問を今までも何度か(いや何十回だっ!)受けて、それ何の意味があるのか、教えて欲しいな、ぁん? って聞いて満足する答えが返ってきたことがないw
だから、こいつにはご要望にお応えして、素直に計算してあげて、最後にちょっとだけ、「お前はバカか?」という嫌味をつけ足している

If you want "Notinal Amount", we can define.
Notinal means equivalent to future exposure(potentially).
But, I think that it is not important number.

なんだかLong PositionとShort Positionに分けて時価を計算していて、それに対応する"Notional"を求めているようだったので、ここでは無理矢理 買いポジションをLongのNotionalとして

Long Notional = Buying Position(Contract Number) × Put-Call Flag × Strike × Multiple
*Put Call Flag:Call=+1、Put=-1

で規定しているのだが、マジで意味不明な数値だな。プットロングだとLong Notionalがマイナスw
それとも、LongはBuy Sell Flag × Put Call Flagが正の場合の和と規定すべき? マジでどうでも良いんだけどさ。

新興宗教として、Notional教ってのを作ったらどうだ?
Notional教:デリバティブ=先物と思っている素人が、「Notionalでいくら?」とバカの一つ覚えで質問する宗教。

後、これも面白いんだけど、同様の宗教で、「GrossとNetのExposureは?」 教徒はFund of Fundsの関係者に非常に多いw
株のLong/Shortでは意味あるよ。先物でもね。オプションの場合は? どうやって計算するんだよ。まぁ、俺が規定してやるけど、その数値何の意味があるんだ? この意味ない数値を見て、こんなにリスク取ってるんだ! とか独り歩きされると嫌だしなぁ。

誤解のないように言っておくと、会計士に恨みがあったり、差別意識を持っているわけではなく、優秀な会計士もいるってのは知ってるんですよ。でもデリバティブのスペシャリストじゃないし、会計士としての限界も、彼はよくわかっている。

【セクショナリズム全開系関連記事】
2012.05.11|欧州大陸系銘柄の配当落ち
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2010.06.16: 数学を使わないデリバティブ講座 ~株価のマルコフ性 
2010.03.29: 貸し込み
2010.02.17: Equity至上主義的 EquityとFX Optionの違いの説明
2009.05.12: FX Optionの 25Deltaって?
2009.03.18: 歯磨き粉の買い物と債券Arbitrage
2009.03.04: オタク適正テスト
2009.01.15: 株投資家から見たインフレ連動債TIPS
2008.01.31: ガンマ無き者はデリバティブに非ず
2007.12.17: 債券市場参加者の世界観 ~ 儲け=売値ー買値では無い













8月20日が設定日のようだが、全国の営業マン達の努力により、たくさん集められたことをお祈りしよう。同シリーズ1109が12000円で早期償還したので、調子よく集められたと期待できる。「欲しがりません勝つまでは」が原則なのに、民は「止めません負けるまでは」で、投資とギャンブルをやってしまう傾向がある。

http://www.nomura-am.co.jp/fund/pros_gen/Y1132057.pdf

■投資方針
運用にあたっては、円建ての短期公社債等の短期有価証券を中心に、コールローン等にも投資するとともに、わが国の株価指数先物取引の買建てを行ないます。
・ わが国の株価指数先物取引の買建ての額は、原則として信託財産の純資産総額とほぼ同額程度となるように調整を行ないます。
●円建て資産を、原則として対豪ドルで為替ヘッジを行ない、豪ドルへの投資効果を追求します。
・ 対豪ドルで為替ヘッジを行なうにあたっては、円売り豪ドル買いの外国為替予約取引等を活用します。
・ 外国為替予約取引等の買予約の額の信託財産の純資産総額に対する比率は、原則として高位を維持することを基本とします。
●基準価額(支払済みの分配金累計額は加算しません。)が一定水準(12,000円)以上となった場合には、短期有価証券、短期金融商品等の安定資産による安定運用に切り替えることを基本とします。
・ 市況動向等によっては安定運用への切り替えを速やかに行なうことができない場合があります。
基準価額が12,000円以上となり安定運用に切り替えた場合には繰上償還します。

■主な投資制限

株式への投資割合 株式への投資割合には制限を設けません。
外貨建資産への投資割合
外貨建資産への投資割合には制限を設けません。
デリバティブの利用 デリバティブの利用はヘッジ目的に限定しません。
※外国為替予約取引の利用は対円でのヘッジ目的に限定しません。

ほほぅ、かなり運用自由度が高いな、俺が運用したいくらいだ。野村AMにデリバティブ運用ができるFMが育ったこともほほえましいが、先物と為替のフォワードだけで運用していそうなFMに言いたいことは山ほどある。

まずこのファンド、デリバティブ運用だから、超カネ余りファンドになる。(良い商品設計だ)
1000億円集めたとしたら先物を純資産総額分買うと言っているだが、実際に必要な証拠金はその10%程度。さらにAUDJPYの為替予約も高く見積もっても同程度なので、預かり資金の80%超、すなわち800億円相当が余剰資金として浮いていることになる。このカネは短期公社債等で回すということになる。だから、見てみい、投資額ベースで考えたら預かりの80%を公社債・ローンに回すわけだから、投資方針の1番目に、コールローンと先物取引という順で書いてあるw

ETFにしないで、ロールコストを払ってまで先物でやっているおかげでできる80%の余剰資金は今のご時世、使い出がある。800億円では野村の資金繰りには大した影響ないであろうから野村救済ファンドとは言えないまでも、野村に対するローンで運用してくれれば、少しは運用益も期待できそうだ。コール・ローンだけではなく、数年程度のデュレーションを持つ国債運用を少しだけ加えても面白そうだ。シリーズ1109はわずか半年で償還してしまっているわけであるが、その場合は単に途中売却すれば良いだけのことだ。

メインの先物は期近のものだけではなく、ロールコストとの兼ね合いだが、期先のクロスを入れても良いかもしれない。20%Targetがあるので、是非やって欲しいのがオプション売りによるポジティブキャリーの創生である。どんなオプション売りのパターンがあるかヒントを与えてやろう。

クローズドエンドなので、エンド時期の120%行使価格のコールオプションを売る。これだと、Implied Volatilityの変動の影響を受ける、Time Decayが小さい、Deltaが弱まるので、あまりメリットが無いと思われる。逆に1か月のオプションでは20%アウトのコールのプレミアムは1円にも満たないであろうから、この2つの中間点のポジションが適切になろう。

運用開始当初は、基準値10000円近傍あるいは未満で推移している時は、1-2カ月もののカバードコールで十分だと思うのだが、ATMでなく、若干上目のStrikeを売り重ねて、耐える。コールを売ることで、デルタを落としたくない場合、先物を買い増してデルタ調整は、下がった時にデルタが1以上になってしまうことを覚悟しなければならない。ポジティブキャリーを維持しての、デルタの調整は、カレンダースプレッドで行うとよろしい。詳しくは投資一族のブログを読み返しながら復習すると良かろう。基準値が11000近傍・超過してきたら、120%行使価格の少し長めの期間のコール売りも選択肢に入れて良い。コールの売りを入れ、株が上がると2つの要素でデルタ不足が発生する。1.コール・オプションのガンマが効いてくる。2.株とAUDJPYは正の相関があるため、AUDの上昇分だけJPYエクスポージャーである先物を買い増す必要がある。

同様にAUDJPYのオプションの売りも実行は可能であるが、Volatilityが低いこと、売りがキャリー・ネガティブを引き起こすことから、株のオプションほどの効果が見込めないことから、必要無いと踏んで良いだろう。

下げた時のクッションとプレミアム奪取によるアウトパフォーマンスが目的である。お手製AUDJPYクオントファンドなので、為替と株のエクスポージャー調整も忙しいとは思うが、この取引制限なら積極的にオプションを活用していただきたいと願っている。

【市場と実戦:Vanilla・幾何ブラウン】
2012.05.15|Calender Spreadのススメ2 ~株価と時間軸上の損益曲面
2011.12.16: FIAに行ってきました
2011.10.20: 日本のオプションは最も割安な水準
2011.02.25: 噂の真相 ドイツ銀:韓国でデリバティブ取引禁止処分
2010.11.08: 三田氏を斬る ~多彩な商品、Vanilla系
2010.07.08: 新しい読者の嬉しい努力 数学を使わないオプション解説 Vanillaって?
2010.05.14: オプションの清算値の計算方法 これは一体何の計算?? 
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている
2009.06.16: VAR SWAPのGamma+VanillaのGammaでGamma Neutralになるか?
2009.06.09: お前VEGAの意味わかって無いだろ?
2007.12.01: 初めて会った時から好きだった









CMS CapはVega LongだがCMS Floorはそうとは限らないのは何故か?

というのが私が問われた正式な質問だ。CMSも知らないエクイティの偏狭なセクショナリズムに侵されている諸君等のために丁寧に解説すると
CMSとはConstant Maturity SWAPで、参照金利が"SWAP Rate"のオプション
CMS CapはMax(SWAP Rate - K,0)、CMS FloorはMax(K - SWAP Rate,0)というPayoffを持つオプションである。
Caplet,Floorletと形は同じであるが、参照金利が単一期間の変動金利なのかSWAP Rateなのかが異なる点である。

Caplet: Max(r-K,0)と表記するならば
Cap: ΣMax(r-K,0)と表わされる"オプションバスケット"に対し
CMS Cap:Max(1/nΣr-K,0)と表わされる変動金利の"バスケットオプション"であり
Payer Swaption:Max(Σr-K,0)も同様にと表記できる変動金利のバスケットオプションである。

1y Cap 4% SL 10yCMS のようにクオートし、10年のスワップレートを参照した1年のオプションであり、1年後に4%を越えていたら越えていた分だけもらえるオプションでSLとはSingle Lookという意味である。

私は表題の質問に即答できなかったわけであるが、一晩寝て、朝起きた瞬間にふと思いついて、悔し紛れに返答した。(即答とは言い難い)

今、起きた瞬間思いついた。
CMSは激しいPositive Convexty。それを引き算するPayersはNegative Convextyを元来持っているため。
どや? 昨日は夜まで考えて、まだ思いつかなかった。

正解を確信している私の言わんとしていることは、絵で表記するとわかりやすいので、

cms-curve.png

であると思ったのだ。完全な間違いとは言い切れないものの、出題者の意図を理解していないことと説明力に乏しさが感じられるので、出題者の模範解答を示しておこう。

x軸のrをSWAP Rateに取った場合、CMSのPayoffは、単にSWAP RateとStrikeの差で、いわゆるPut/Callのように折れ曲がった直線的な形になる。一方、Swaptionは、DVO1(Duration)が存在し、1 into 10なら10年のSWAP、10年間にわたるCash FlowがPayoffとならば、金利r=SWAP Rateに対して、金利が上がると利益が発生するPayerはDiscountが強く効く分だけ上に凸の形となるのだが、金利が下がると利益が発生するReceiverはDiscountが弱くなり、下に凸になるのである。

CMS Capの直線的な損益曲線をPayer SwaptionでDuplicateする時は、上に凸な分ATM Swaptionだけでは足りず、OTM Swaptionを買い増す必要がある。Σ Weight(K)*Payer Swaption(K)

CMS-Cap-Payers-Swpt2.jpg

一方、CMS FloorはReceiver SwaptionでDuplicateする場合、下に凸なATM Swaptionでは多すぎるので、OTM Swaptionを売る必要がある。ATM Receiver Swaption-ΣWeight(K)*Receiver Swaption Kという売り買い交錯のSpread Option取引となり、必ずしもVega Longになるとは限らない。

CMS-Floor-Receivers-Swpt3.jpg

模範解に示されるようにSwaption主眼の立場を想定していない以上、私の解答は完全に間違っているのだが、Swaption慣性系、SwaptionこそがPut/Callのような直線的Payoffに見える慣性系においては、CMS FloorのIntrinsicは私が示したように下に凸の局面もあるだろう・・・。我ながら苦しいな・・・。

【エマージング・エキゾチック金利系】
2011.08.15: SGD SWAPがマイナス金利に突入
2011.03.17: 史上最大のボロ儲け ~儲け損ねた男達の遍歴 2/6
2011.02.01: 適格外国機関投資家に株式指数先物取引を容認へ
2011.01.24: 最強ヘッジファンド LTCMの興亡 ~彼らの投資戦略
2010.10.26: 中国が利上げ、07年以来で初-貸出・預金金利25bp上げ
2009.03.26: 中国人民元先物?
2008.11.05: KRW On-Off Spread
2008.07.24: RMB Bond 2Y 3.25%
2008.04.30: 定期預金は金利デリバティブ




Call Optionの素ロングとCalender Spread(CALD)を比較してみたが、そこで用いたグラフに少し問題があるような気がしてきた。
しかし今日は、一般向けの解説ではなく、Option Longの怖さを知っている人間(対象者はあんまり多くないかもしれないが)に対し、諸君らが頭の中で考えていることを可視化するという目的である。

もう一度105C(5%上方のStrike) Call Option素ロングの問題のグラフを出してみよう。
105C Buyの損益曲面(Spot97%-110%、時間は1ヶ月から満期1日前まで)
100C-Long2.jpg
何が問題かと言うと、コール・オプションの特徴を出すために、グラフの中心をスポット100から上方にずらしてあり、ほとんど儲かる領域になっており、コール・オプション・ロングが非常に楽観的ポジションであるかのような印象を与える。

第2に、これは単にVolatilityを一定として、時間と株価を動かした場合の結果である。つまり確率分布を一切考慮してない点が大きな問題となる。1ヶ月以内、例えば1週間で10%以上上がる確率を考慮すれば、この右肩上がりの損益曲線はほとんど実現しないことが推測できるであろう。コール・オプションを保有した経験があるものは、無意識的に確率を考慮したペイオフが頭の中に描いているはずなので、それを可視化してみよう。

まずは、Volatility20%でSpot100とした時、1ヶ月間の株価の確率分布を示してみよう。
prob-log-normal.jpg
端点の確率は90以下になる確率と110以上になる確率で、他は100-101などの1%領域に株価が存在する確率である。
最初の5日間くらいは綺麗なベル型(5日間で10%以上動く確率はほとんど無視できるため)、1ヵ月後の分布では端点つまり10%以上動く確率が少し盛り上がっている。今、ここでは実際の株価が持つ非対数正規性は大きな問題にならない。(105Cの1ヶ月分布なので)

ではここで1ヶ月の105 Callの損益曲面を確率加重、一番上のCallのグラフと2番目の確率をかけた、つまり期待値ベースでグラフにするとどうなるかというと

105C Buyの"期待値"曲面(Spot90%-110%、時間は1ヶ月から満期1日前まで)
expected-105c.jpg
このようになる。Option Playしている者は、「こんなグラフを頭に浮かべながらオプション取引してないよ」と誰しも言うだろうが、5日で10%は上がらないだろうと思うことと、このグラフは同義なので、一番上の問題のグラフ=確率考慮しないCall Optionの損益曲面で存在していた手前の盛り上がりは、この期待値ベースのグラフにおいては0となっている。これは確率考慮されているので、グラフを見る際、中心=スポット100からの距離の遠さは考慮しなくて良い。
5%上がったところの水準を赤い補助線で示しておいたが、満期直前には当然のことながら5%上がったとしてもマイナス領域に食らい込んでおり、かなり上がるか、スピード感をもって上がらないとコールオプションは儲からないということがお分かりいただけるであろう。クリーム色の下の紫からは赤字領域なのだが、このグラフを反対から見ると、その恐ろしさがわかりやすいので、

1ヶ月の105 Callの期待値曲面 時間反転
expected-105c-rvs.jpg
どうですか? マイナス領域(105まで)が広い。とても広い。絶望的な広がりに見えるでしょう。これがコールオプションの恐ろしさです。「コール・オプション買いも怖いからねぇ…、Time Decayは結構キツイ」という言葉の背景には実はこの期待ベース損益曲面の大きなマイナス領域を"経験的に頭に描いている"人の台詞なのです。

一方でCalender Spreadのグラフを出してみましょう。
Calender Spread Buy (105C 1M-2M)の損益曲面
cald2.jpg
続いて同様にExpected BaseのCalender Spreadを表現してみよう。Spot100のところに赤い補助線を引いてみた。
expected-105cald.jpg
極めて形が似ていることがお分かりいただけるであろう。損益曲面と期待値が一致しているということは、頭の中で簡単に描ける損益曲面と、実際に起こること、つまり期待値曲面とが同じ形だから、"期待通り"に振る舞う楽なポジションなのである。

【金融工学理論の実践】
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5月10日の記事で、Calender Spread(CALD)の有用性について書いたのだが、とある読者がツイッターで、

ただ今勉強中...「上がると思えばCall Calenderは、非常に楽なポジションとなろう」

とつぶやいていた。確かにCall Optionの素ロングの怖さを説明することなく、"CALDは非常に楽なポジション"といきなり書かれるとわかりにくかったように思われるのでその点を反省し、グラフによる可視化でそれを説明しようと思う。

株や先物のプレイの場合、投資する瞬間には、上がるか下がるかという2択の相場観しか存在しない。期間とどの程度動くかは後決め、つまりそのポジションを閉じる時に決めるというなんとも単純な相場観であるが、オプションの場合は、最も単純なCall Optionの素ロングというポジションであっても、構築時にどのくらいの期間でどの程度動くのかという相場観が無ければポジションを取ることはできない。つまり株価と時間の動きという2次元的な平面に対する損益曲面を頭に浮かべながらポジション取りをするということから、そのグラフを使いながら説明する。

Bullishな相場観で、損失限定プレイを想定しよう。最大損失1.11%程度、つまり日経9000円とするならば約100円のオプションプレミアムをご予算として、いくつかのポジションを比較し、CALDの優位性を説明する。

Optionにおけるもっとも稚拙なポジションはCall Optionの買いだが、1ヶ月の105C(Spotの5%上、日経が9000円なら9500円のコールと考えてよい)の買いを例にとって説明しよう。面倒なので、全ての期間、StrikeでVolatilityは20%として計算してしまう。

105C Buyの損益曲面(Spot97%-110%、時間は手前1ヶ月から、奥の満期1日前まで)
100C-Long2.jpg
グラフは104あたりを中心に描いているが、あくまで現在のスポットは100であることを考えると、100周辺はほとんどの時間においてマイナスになることがわかる。105(5%上昇したとしても満期直前に至ってはまだマイナスになるという鬼のようなTime Decayに苦しむことになる。5%上がれば先物なら5%儲かるというのは誤りで、証拠金が5%要求される(日経でいうなら50万円)としたら、ご予算1.11%想定なので、大体1/5枚等量になるわけだから、先物で得られる収益は1%という計算になる。)

ここで少し経験のあるものはCall Spreadなる取引で100C Buy 110C SellというSpread取引を行う。
Call Spread Buy (100-110CS)
100-110-Call-Spread2.jpg
これであれば5%上がると、1.5%儲かる(ショボイと思うなよ、証拠金ベースのリターンだと1.5%/1.11%だから140%だからなっ!)ので、先物よりも効率が良いのがわかる。かつまた損益分岐点もNaked Call Longに比べればSpotの100に近づいていて、Call SpreadとCallの差分を示したのが下記のグラフで、±5%程度の領域で優位であることを示している。
CS - Call
cs-vs-c-diff2.jpg

そして、いよいよCALDの登場であるが、1Monthの105C Sell 2Monthの105C Buyをした場合
Calender Spread Buy (105C 1M-2M)
cald2.jpg
これが意味するところは現状維持でも満期直前まではプラス。(ここ重要! 損失限定、つまりオプション買いのポジションでポジティブキャリーという唯一のポジションと言って良いくらい楽なポジションだ)上方はほとんどの領域でプラス。外して下がった時だけマイナスというポジションである。
Naked Call Longより優位だといったCSとの差分を取ったものをグラフ化すると、

CALD - CS
cald-vs-cs-diff2.jpg
となり、強気な予想を外して相場が下落した時のダメージは小さく、相場観はあたったもの動きが鈍かった時もアドバンテージがあることがわかる。形が似ているのでついでにButterflyとも比較してみよう。FLYはイントリンシックバリューと損益曲線が似ているのでCALDに比べて直感的に理解し易いことであろう。ここでは強気な相場観なので中心を同様に5%上に設定し、100-105-110 Butterfly Spread(Call Optionだけで構築するFLYはSpreadと呼ぶ。)とすると、ほぼ同じ形の損益曲線になる。

FLY
butterfly-spread2.jpg
しかし、FLYの損益分岐点はCALDに比べ、若干スポットから遠くなっている様子を示すために

CALD - FLY
cald-vs-fly-diff2.jpg
うわぉぅ、来ましたね。FLYより不利なところ=儲かっている領域、つまりマイルドで無難なポジションということを示しており、現値近辺でウロウロしている場合のキャリーもFLYよりも優位であることがわかる。

上がると思ったからCall買いってのがどれほど稚拙で難しいポジションか? そして上がると思ったから105CALDと言えば無難なプロらしい意見というのがお分かりいただけたかと思う。

これを冷静に振り返ると、このグラフには明らかに誤解を生む問題があり(間違ったことを書いているわけではないが)、別の説明を思いついたので、さらに続編を書くことにしよう。

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Target Buy、Covered Callなどの低次元なDirectional Betが資金効率が良く、わかりやすいのは否定しないが、純粋なOption Play(あえてオプション投資とは言わない)の場合、Calander Spread(CALD)は、実に有用であることをご紹介したい。

Equity DerivativeのOption,Put/CallにおけるCalender Spreadとは、同一StrikeのPutもしくはCallの期近を売り建て、期先を買い建てるポジションを指す。Calenderの売りとは、期近を買い建て、期先を売り建てるポジションを指す。原則として、オプションのコンビネーション戦略の場合であっても、ポジション全体でプレミアムの受けとなる場合をShort、払いとなる場合をLongと呼ぶ。例えばPut Spreadの場合、ITM売りのOTM買いのような全体でプレミアム受けのポジションはPut Spread Shortと表現する。例外として、Butterfly(FLY)はプレミアム受けの場合をButterfly Longと言うが、これは唯一の例外事項である。

Calenderの損益曲線は、Butterflyに近いが、最大の特徴は、Gamma ShortのVega Long、すなわちポジティブキャリーのオプション買い(※損失限定)のポジションである。StrikeからSpotが大きくずれると、Gamma Longのネガティブキャリーではあるのだが、期先のオプション>期近のオプションというCalender Arbitrageが働いている以上、最初に払ったプレミアム以上はやられないという損失限定のポジションである。(注:ITMになりすぎるとAsk/Bidが広がり、UnwindにそのSpread分だけマイナスになることがありうる)

※:あえて本の題名には言及しないが、有名な本の中でCalender Spread Longは損失無限大と"間違った"ことを書いていたので、損失限定ということを強調しておきたい。Calender Shortは無限大、そうは言ってもCallはS、PutはXという最大値がある以上、正確には無限大ではないの。ただ、Put Shortは実際には最大損失Xなのだが、無限大と見なすという意味でCalender Shortは"無限大"である。

ButterflyとCalenderの使い分けは、Implied Volatility(IV)の相場観で、IVが高い時はVega ShortのFLY、低い時はVega LongのCalenderとなるが、Calenderの構築コストの気軽さは低Volatilityな環境であれば、非常に有用である。

Calenderの主なエクスポージャーとリスクは下記の3点である。

1)Strikeへ向けてのDelta(Forward=Strikeになると最大収益確保)
2)期近売りによるNet Gamma Short(ゆっくりとStrikeに向けて株価が動けばキャリーポジディブ)
3)期先買いによるNet Vega Long(Volatilityが上がれば儲かる)


上がると思えば、Call買い、下がると思えばPut買いという稚拙な素人戦略で、ネガティブキャリーに苦しむくらいなら、上がると思えばCall Calender(少し上方のCalender Spread)は、非常に楽なポジションとなろう。Buterflyと比較しても、一番儲かる満期直前の激しいポジティブキャリーはDelta OneのエクスポージャーとGamma Shortにさらして得られるわけであるが、Calenderの場合は、満期直前でもDelta Oneとはほど遠い低Delta Exposureに留まるところが持ち越しが楽な理由である。欠点としては決済リスク、FLYは同一満期なので、放っておいても最大損失は限定されるが、CALDの場合は期近がExpireするまで持ちきってしまうと、 「期近の清算値<Coverしている期先の市場値」 が担保されていないので、持ちきりにリスクが伴う。

ここからは実際にポジションを取ってみないとわかりにくい感覚であるとは思うが・・・

途中で決済する場合、Ask/Bidが広い期先の売り指値を入れて、入ったら期近の買い戻しをするというオペレーションとなるが、ITMまで食らいこんでいる場合、売り指値が入らない方向に先物が動く=Strikeに株価が近づく=CALDポジション有利な相場展開なので、悠長な売り指値で待てるが、OTMの場合は、売り指値が入らない方向で先物が動く=Strikeから株価が遠ざかる=CALDポジションに不利な相場展開、となる点は指摘しておこう。

【理論:Vanilla・幾何ブラウン】
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フィックスド・インカム(FI)、金利デリバティブのトレーディングをやっている後輩が、「投資でも始めるか」と言っている。私はノンプロ対象の株会、株メールの先生ではあるが、"株メール"シリーズを今までブログアップしているから御存じのように、初心者にはふさわしくない投資教育(王道であるインデックス投資にも否定的)をしてしまっている現実がある。一方、後輩はプロ、マクロ・リスクのスペシャリストらしく、彼が最終的に選ぶのはインデックス投資であり、おそらく最大の規模のSPDRが有力候補である。

S&P500のインデックス投資をつまらないの一言で片づけてしまうのは簡単だが、デリバティブのバックグラウンドを持つ彼が、それに興味があるなら、私からの提案がある。SPDRを買うつもりなら、SPDRのオプションが上場されていて、ジャブジャブの流動性があるから、プットでも売りながら、タゲバイ(Target Buy)で買えば良いんでないの? Physical Settleだから、現引きしたら、今度はカバコ(Covered Call)の黄金コンビネーション。しかも、2Weeksのオプションまで上場されると言う完璧なマーケットで、戦略の多彩性と流動性は申し分ない。SPDRのBuy&Holdでは、預金みたいな感覚になってしまうので、オプションを使ったマクロベットなら、トレーディング感覚と市場リスクを同時にエンジョイできる。

詳細こちら。
http://www.cboe.com/micro/spdr/spec.aspx

しかし、デリバティブのバックグラウンドがあるとはいえ、所詮はFIデリバティブの経験に過ぎない。エクイティ至上主義のセクショナリズムが生み出すサディスティックな感情が、次の質問を彼につきつける。

SPDRのオプションはアメリカンオプション。Bloombergで、SPX Index OMON{GO}とSPY US Equity OMON{GO}で、Implied Volatility(IV)を見ると、SPYはIVに非対称性がある。それが何故かわかるかね?
それともう一つ、アメリカンオプションが早期行使されるのは、どういう時かね?


FIデリバティブにおいて、アメリカンオプションというのはほとんど存在しないと思うし(ListedのJGB Optionはアメリカンだが)、扱うこともないであろう。私も正直言うとインデックスのアメリカンオプションは、扱ったことがないのだがな。エクイティデリバティブ業務従事者諸君は、この質問をFIにすること自体が非常にサディスティックであることを笑って欲しいところであるが、このブログの読者にはFIデリ業務従事者諸君もいるので、諸君らのために、俺がどういう意味か解説してやろう。

改めてもう一度聞くが、
FI諸君、わかる? わからねーだろ? まぁまぁ待て待て、解説するから。
EQ諸君、この意味がわからねーヤツ。コラッ! この恥さらしモノが! てめー、なめられんよーにスワップションくらいは勉強しとけよっ!ボケ。

American Optionの同一StrikeのCallとPutのIVの非対称性は、BloombergがIVを連続配当モデルのBlack-Scholesで計算しているから発生している"Error"である。そして、非対称性の存在の理由と、早期行使される時はどういう時というのは、実は同じ質問なので、American OptionのEarly Exerciseについて言及しよう。

まずはFI諸君でも理解しやすいであろうAmerican Put Optionについて。
Putの早期行使は、早期行使して得られる現金×満期までの金利が、オプショナリティを上回れば早期行使した方が得である。
AmericanPut.jpg
緑の線を青が越えた時から早期行使すべきタイミングだ。τ日後決済のPhysical Settleなので、正確には(X-F(τ))*exp(r(t-τ))なのだが、まぁ良いだろう。

American Call Optionについて、
よくある教科書の配当のない株式のアメリカンオプションの早期行使は・・・、とかどうでもいいわ! 配当あるから! もしかしてFI諸君は知らないかもしれないから、丁寧に解説するが、株式における配当は、債券のクーポンのような経過利子という概念は存在しない。つまり、配当を受け取る権利付き最終日から権利落ち日に向けて、離散的に株価が下落する配当落ちという現象が起こる。配当落ち前のイントリンシックが、配当落ちした後のオプショナリティを上回れば、早期行使した方が得なのである。
AmericanCall.jpg
今度は、緑の線は、配当落ち後の期待オプション価格であることがポイントだが、落ちた後のTime Valueが、配当落ちの額Dより小さければ、早期行使、つまり緑と赤のラインが交差するポイント以上ならば、早期行使されるということになる。実践的にはショートタームのオプションの場合、金利効果というのは限定的なので、コールの配当落ちによる早期行使が多発する事態となろう。

絵で描くと簡単でしょう?

でも、解析的には解けないアメリカンオプションが上場モノでブイブイ取引されているってすごいでしょう? 離散配当を考慮しないとPut/Callの価格差は説明できない。BloombergはDupireがついていながらも、こういうところをいいかげんに計算し、Put/CallでIVに差があるという状態になっているのだ。

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2008.01.13: Worst Option ~香港より愛を込めて





http://www.tse.or.jp/learning/seminar/hasei/111130a.html
取引所の企業努力、個人に目線を合わせた営業と商品開発が、かいま見れますぞ。

ツイッターのIDはtse_prとkabu_op

TOPIX Mini:Tickが小さいので、日中の小さな値動きの中でも取れる。だって。こういうの好きな人も居るんだぁ・・・。俺にはわからんが。
NT倍率・・・懐かしいにゃー。まだ、こんなの見てる人居るんだ。
東証デリバティブアワーズ、東証の井澤郁恵ちゃん可愛いじゃないか。

コラコラ、野郎どもぐぐるなぐぐるな。画像検索するな

飢えてる野郎どもの気持ちはわからんでもないが、日本でデリバティブを語れる数少ない女性だ。覚えておいて損は無いだろう。

JGB Mini先物ってのもすげーな。国債・先物ってまさに個人が参加しそうも無い市場・・・一生懸命努力しているようです。

シンプレクス・インスティテュート 塙麻紀子さん がオプションを説明してるけど、やっぱり言っちゃった「買う権利と売る権利」。これ素人には伝わらないんだよなー。しかもご推奨戦略はネイキッドのオプション・ロング。
「何千円って金額から買えちゃうので、無くなってもいいくらいのお金で買って、うまくいけば10倍、ダメだったらあきらめちゃえばいい」
なーんて女性二人に言われちゃうと、「もれもやってみようかなー」って思うのかな?

最初はオプション・ロングからという定説があるが、それは全く逆である。オプション・ロングで勝つのは極めて難しく、個人が一番反応するのは金額やリターンの幅ではなく、"勝率"である。どんなにやられてもチコチコ・ドカンが好きな民族であるからして、反省したり、逆をやってみようと考える個人はほとんど居ない。

個人が好きであろう俺のご推奨戦略@Single Stock Option

株を買いたい時、買いたい値段の行使価格で買いたい株数のプットを売る。株価が行使価格を下回れば株を買える。下回らなくても金がもらえる。
株を売りたい時、売りたい値段の行使価格で売りたい株数のコールを売る。株価が行使価格を上回れば株が売れる。上回らなくても金がもらえる。

指値=行使価格、買いたい時はプット売り、売りたい時はコール売り。以上です。ともう一度繰り返す。

※1.数量はあくまで「買いたい株数」であり、もらいたい金額でやらないように!
※2.株を買いたいってことは株数×買値のお金は持っているんだよね? 株を売りたいってことはその株持っているんだよね?

次に具体的にクォートを見ながら話す。
ブルームバーグなんか要らないよ。Yahoo Financeで十分見れちゃうから。アメ株はね
PFE:ファイザー、製薬最大手の会社、今20.07ドルね。20ドルで買いたい場合はどうするんだっけ?
はい、この通り。ね。Optionsって書いてあるところ、クリックすれば良い。
pfe-options.png
そう、20ドルのプットを売る。いくらかな? 39セント。
何株買いたいの? 1000株なら390ドルもらえるちゅーこと。
満期12月16日だからその日に
20ドル以下だったら20,000ドル払って1000株買う。
20ドル以上だと何も起こらない。
どっちにしても最初に売った時に390ドルもらえてるわけよ。約2%のリターンだけどさ、今は12月1日だからわずか半月で2%もらえるのよ。だから? これ年率換算だと48%ということになるね。ファイザーみたいな会社で50%はなかなか動かないでしょう?

C:シティバンク、グローバルな金融機関、同じ要領でやってみようね。Ticker Cを入れると現値27.48が出るねぇ。
でOptionsクリックすると・・・ほーら、いっぱい出てきたでしょう?
27ドルで買いたい場合は、27のプットを売ると。1.17って書いてあるでしょう?
そうすると1000株だからやっぱり1170ドル。でも今度はリターン高いでしょう? 4%超、年率換算で100%越えてるよね。
でもCitiだったらそのくらいは株でもありえるでしょう? だからそうなってるの。

戦略まで押し付けだけど、どうよ? 買う権利・売る権利、損益曲線、ブラック・ショールズ、一切使わずにTarget Buyの説明。

【個別株デリバティブ】
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2008.07.02: 私好みの株価予想
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