投資一族のブログ: 読書アーカイブ

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一言で言うとボトルネックの話。まー、そんなの今更書いてもしょうがないので、本題とはまったく別のもっとしょうもない部分にフォーカスすることにしよう。

ベアリントンに移ってきて以来、ジュリーはあまり元気が無い。話題が町の話になると彼女はいつも不平不満を言い、私がこの町を弁護するのだ。私はベアリントンで生まれ育った。道は全部知っているし、いい店も知っている。いいバーも悪いバーも全部知っている。

文句を言う奥さんか、いや文句しか言わない奥さんね。アレックスはそんな奥さんに優しい。どうしてそうできるんだろう? ボトルネックよりそっちを教えて欲しいよ。「私、女性に無理強いするのが嫌いでしてねぇ・・・1ミリでも文句あるんだったらマンハッタンにでも住めば? ご自由にどうぞ」と俺なら言う・・・。

ジョナ:生産性とはいったい何なのかね
アレックス:私の会社の定義では・・・一定の計算方法があって、確か従業員一人当たりの付加価値イコール・・・
ジョナ:君の会社の定義がどうであれ、そんなのは本当の生産性なんかじゃない。計算方法がどうとかは少し忘れて君自身の言葉で君自身の経験で言ってくれ。生産的とはいったいどういう意味なんだね
アレックス:何かなし遂げることでも意味しているのでしょうか
ジョナ:その通り。でも、どういう観点でなし遂げたかどうかを測ったらいいと思うかね
アレックス:目標(ゴール)・・・でしょうか。
ジョナ:その通り。

ジョナ:アレックス、君はとても重要なことに気づいたね。目標を表す方法は一つだけではない。目標は同じでも、違う方法でこれを表すことができる。『金を儲ける』という言葉と同じことを意味する方法でね。
アレックス:目標は純利益を増やし、同時に投資収益率とキャッシュフローを増やすことだといえるわけですね。
ジョナ:お金を儲けるという目標を完璧な形で表すことができ、なおかつ工場を動かすための作業ルールの設定を可能にした指標だ。指標は3つあって、「スループット」、「在庫」、「作業経費」と呼ぶことにした。在庫とは完成品だけでなく、仕掛品や原材料、作りかけの部品も含まれる。スループットとは販売を通じて、お金を作り出す割合のことだ。
アレックス:生産を通じてではないのですか。
ジョナ:いや販売を通じてだ。在庫とは販売しようとする物を購入するために投資したすべてのお金のことだ。作業経費とは、在庫をスループットに変えるために費やすお金のことだ。

ジョナ:バランスの取れた工場に近づくほど倒産に近づく。生産能力を縮小する場合、たとえば人を解雇したら販売は増えるかね。在庫は減るかね。
アレックス:いいえ、日と減らしてできるのは経費削減です。つまり作業経費の削減しかできない。
ジョナ:アレックス、目標は作業経費の削減そのものではない。指標をどれか一つ改善することではないんだ。目標はスループットを増やしながら同時に作業経費と在庫を減らすことなんだ。

もしジュリーが戻ってこなかったらどうしようと、考えた。彼女がいなくなったらほかの女性と付き合うのだろうか。どこでそんな女性と知り合うのだろう。突然ベアリントンにあるホリディ・インのバーで見知らぬ女性にセクシーに迫る自分の姿が頭に浮かんだ。それが自分の運命なのか。そんなやり方、いまでも通用するのだろうか。誰か自分の知っている女性で付き合えそうな人がいてもよさそうなものだ。知っている女性で独身の人の名前を挙げてみた。考えられる女性を全部挙げるのにはそう時間はかからなかった。その中で気になる女性が一人いた。私は緊張した面持ちで番号を回した。「もしもし」彼女の父親だ。「ジェリーと話をしたいのですが」

すげー、結局、奥さんを思いつくんだ! あんた、一生、結婚してなちゃい! いいかね離婚男ならこう考える

もしジュリーが戻ってきてしまったらどうしようと考えた。彼女が来てしまったら、他の女性との関係はどうなるのだろうか。とりあえず、ジュリーはいないから、誰かに電話しよう。考えられる女性を全部挙げるのにそう時間はかからなかった。その中で気になる女性が一人いた。私は緊張した面持ちで番号を回した。「どーもー、おひさしぶりですぅー! ぇえ! もーぅ毎日超暇です。遊んでもらえませんかねぇ?」と言いながら、「今度遊んでください」というタイトルのメールの送信ボタンを押した。


古代ギリシアの時代から自然界のさまざまな物質の裏には元素という基本ユニットがあり、これが全ての物質を構成しているのだと人々は信じていました。ギリシアの時代の考え方は単純で、空気、土、水それから火。しかしその後土自体は基本元素でなく、多くの基本的な鉱物によって構成されていることが実証されました。空気も異なる複数の期待によって構成されていることが明らかにされました。ギリシア時代の仮説に終止符が打たれたのは18世紀になってからで、フランスの学者ラボアジエが火は物質でなくてプロセス、つまり酸素と結合するプロセスであることを明らかにしたのがきっかけです。その後も化学者たちが長い年月をかけて研究を重ねた結果、19世紀半ばまでに63の元素が確認されました。発見された元素をうまく分類する方法はないものかと試みましたが、どれも無益な努力におわりました。メンデレーエフは元素ごとの定量測定、温度や物質の形状、形態によって左右されることのない定量を用いることにしたのです。彼が用いた定量は原子量と呼ばれるもので各元素の原子の質量と一番軽い元素、水素の原子の重量の比率を表したものです。この比率を用いてメンデレーエフは各元素に特定の数値を割り当てて、識別することを可能にしたのです。メンデレーエフは元素を一列に並べず、7つおきの元素の化学特性が基本的に同じで、その反応度が増すことに気づいたのです。彼は元素を7列の表にまとめました。その結果、すべての元素は原子量順に表され、またそれぞれの列では化学特性が同じ元素がその反応度順に並んで表されたのです。メンデレーエフがこの表を作った時、実はまだ全ての元素が見つかっていたわけではないんです。この表にはいくつか抜けているところがあって、それを埋めようとまだ見つかっていない元素を逆に探すという作業始め、まだ発見されていない元素の質量や特性を予想したのです。


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ギリシア神話における死後の世界

貧富や貴賎にも、また生前の功徳や悪行にも関係なく、ほとんどすべての人のプシュケ(魂、PsychologyのPsych部分に相当)つまり魂は肉体を出た後ハデスの館に向かう。けれどもきわめて例外的であるが、人生の終末に、死の代わりにエリュシオンで永遠の生を授けられる者もいた。エリュシオンは雪も雨も降らず、嵐もない最高の楽園である。極楽系パラダイスはもう一つある。ヘシオドスはそれをマカロン・ネソイと呼び、やはり世界の遥か彼方に想定した。つらい涙も労働もなく、1年に3度も実りがもたらされ、あたたかい陽光がふりそそぎ、美しい花々が咲き乱れている。

>東南アジアのこと? 

キリスト教の終末論との違いを一瞥しておくと、ギリシア神話における死後のユートピアは、キリスト教の天国のように垂直方向に向かうのではなく、この世界の延長線上に水平方向に向かって想定された。またエリュシオンの至福の島も、存命中に善行を積んだ有徳の人のためのパラダイスではなく、婚姻関係によって神界に連なった者だけ約束される理想郷であり、永遠の安楽という特権を神から分与される場所なのである。

そこに道徳・倫理観の押し付けがないところが、「神話」であり、行動規範を定めるものだと「経典」になるのだろうな。

ギリシア神話で地獄に近いものとしてはタルタロスがあげられる。キリスト教では存命中に大罪を犯した人間が地獄で懲罰を科されるのに対して、ギリシア神話のタルタロスは、本来は罪人に暴力的な制裁を加える場ではなかったのである。神統記によると、宇宙は三層構造をなしていた。神々の住む天上と、人間の住む大地と、大地の奥底にあるタルタロスである。これら3つの場所は垂直的にとらえられていた。天から地上までの距離、大地とタルタロスまでの距離は「青銅の鉄床が9日9夜落ち続けて10日目に届く」だけ離れていた。タルタロスは陰湿な奈落の底であり、そのまわりには青銅の垣根がめぐらされている。ここに最初に閉じ込められたのは、オリュンポス神族と戦って敗北を喫したティタン神族であった。タルタロスは本来単なる隔離場所に過ぎなかった。ホメロスとヘシオドスにおけるタルタロスは暴力的な制裁の場ではなく、ましてや使者が生前の悪行を償う地獄ではなかった。しかし後代になるとタルタロスは大罪人が死後に厳罰を科せられる仕置き場に変貌していた。

終末論の変容

死生観の変化に伴って終末論も変容するが、その変容もピンダロスには反映されている。ホメロスの世界の人々は、光溢れる地上での生を、この世の苦痛や苦悩も含めて深く愛した。けれども時代が下るとともに、生を全面的に肯定する姿勢に翳りが見え始めた。ピンダロスは「ピュティア祝勝歌」第8歌に次の一節を残した。人間は影の見る夢にすぎない、だが、神の授ける光が射せば、人の世は輝き、甘美な人生が訪れる。生はつかのまの幻影のようなものであって、無条件に喜ばしきものではない。ピンダロスのライバルとされる抒情詩人バッキュリデスは、ヘラクレスが冥界でメレアグロスの亡霊と出会う神話的場面を描いた。ヘラクレスは「人の身に最善は生まれぬこと、陽の光を目にせぬこと」と口にする。この箴言めいた言い回しにはヘロドトスと会い通じるペシミズムが影を落としている。ペシミズムの度合いはソポクレスに比べるとまだそれほど深くない。悲劇詩人ソポクレス「コロノスのオイディプス」(前401年)になると生に対する悲壮感はさらに深まる。生まれて来ないのが何よりもましだ。が、この世に出てきてしまった以上はもとのところになるべく早く帰ったほうがそれについでずっとましだ。
 人生観に正反対と言ってよいほど大きな相違が生じた原因は何だったのだろうか。それは、時代状況の推移とともに古代ギリシアの政治・経済・社会などが変貌をとげたことと決して無縁ではなかったであろう。

1990年代、アメリカの大投機時代を代表する二人の人物がいた。アイバンボウスキーとマイケル・ミルケンだが、彼らはウォール街の錬金術師といわれた。そのボウスキーがインサイダー取引の罪でSECに摘発され1億ドルの罰金を払わされた上、3年の実刑に処せられたのは1986年のことであった。ウォール街を震撼させたこの事件はさらに拡大し投資銀行の幹部たちを巻き添えにしたが、ついに、ジャンクボンドの帝王マイケルミルケンに波及し、6億ドルの罰金と10年の体刑に処せられて、ミルケンが刑務所送りとなったのは1990年のことであった。ミルケンが所属していたドレクセル・バーナム・ランベールは倒産し、バベルの塔はあっけなく崩れ去ってしまったが狂乱の80年代を象徴する事件であった。

1989年4月~11月にかけて稲川会の石井会長が野村證券と日興証券を通して、東急電鉄株を2240万株も買い集め、さらに他人名義で140万株、計2380万株を買い占めたことが明らかになっている。北祥産業(千代田区、庄司宗信社長)は、事実上石井前会長がオーナーで東京佐川急便とも関係がある不動産業の会社だ。小谷光浩被告が、巨額脱税で逮捕された竹井博友から1000億近くの返済を迫られた時、蛇の目ミシンに対して、暗に暴力団の後ろ盾があることを示唆した時に利用した会社としても知られている。  石井会長は茨城県のゴルフ場岩間カントリークラブのゴルフ場会員資格保証金預り証というほとんど無価値の紙切れを発行している。なぜ紙切れかと言えば、もともと岩間カントリークラブは会員制のゴルフ場ではないからである。ところがこの紙切れと担保に、東京佐川急便80億円、青木建設50億円、間組24億円、平成ファイナンス(野村証券子会社)24億円、グリーンサービス(日興証券子会社)20億円、ケー・エス・ジー(光進関連会社)70億円、仕手筋の安達グループ関連と誠備グループ関連などからの資金合わせて384億円の資金が提供されているのである。

これまで裁判所の判例として現れている株価操縦(相場操縦)は3件しかない。証券取引法125条の相場操縦とは、株式市場などの有歌証券市場での売買取引を誘引する目的で、その有価証券の売買が非常に盛んに行われているように誤解させ、またその相場を変動させるための売買取引、またはその委託、受託を行うことである。 いくら世間的に見て相場操縦とわかっていても、"有価証券市場における有価証券の売買を誘引する目的"さらに"その有価証券売買取引が繁盛していると誤解させ又その相場を変動させるべきもの"があると立証されなければならない。

協同飼料事件、副社長と経理部長らが資金調達の方法を考えた。まず株主割当の増資を行って、その後に時価発行することにした。だが、この2つの資金調達をクリアーするためには日程に合わせて協同飼料の株価をうまく操縦してつり上げる必要があった。そこで株主割当増資に関係する売買取引が増資の権利落ちとなる前後に株価操縦することになったのである。当然、協同飼料側の人間だけでは実行できることではないので、N証券、D証券の支店長その他計5人と共同謀議を行ったわけである。株式買い上げ資金は主として協同飼料が出すことになり、614万9千株をN証券、D証券が継続買いに入り、10万4千株の仮装売買などを行って株価変動のための取引を行い170円台の株価は256円となり権利落ち株価は220円にすることができた。次に時価発行公募価格を有利にするため、株価の維持を計り、86万6千株を買ったというものである。

東京証券金融事件、丸茂工業は買い占めた(1978年)大阪二部上場の日本鍛工の株式の大半を親会社に当たる大同特殊鋼に売り渡した。残りの株式は、東京証券金融会社の社長であるAと相談した結果、Aから投資家のTに売ることになった。AはTに対して、"これからも買占めは続けるので、日本鍛工は上がるはずだし、万が一下がった場合には、売った値段で買い戻すから心配ない"と補償したのである。だが、実際には買い占めるはずの丸茂工業側が約束を反故にしたため、日本鍛工株は下げ一方となった。大切な顧客の信用を失っては商売に差し支えると考えたAは日本鍛工株の株価操縦をすることを思いついたのである。かねてつきあいのあるY証券コミッションセールスマンSに相談を持ちかけ、X証券に事情を話して、1980年388万株の仮装売買を行い、一般投資家から見ると人気がさかんなように見せかけようとしたのである。この事件が発覚して東京地裁は、1981年にAは懲役2年、Sに1年の刑を課している。

91年7月2日夕刊・読売新聞は次のような記事を掲載している。

広域暴力団稲川会の東京急行電鉄株大量買いにからみ、野村證券が平成元年10月東京と大阪で法人、個人の大口投資家を集めた講演会を開き「東急株は現在2000円前後だが明日から急騰する。12月には5000円を突破する」と煽っていたことがわかった。講演会とセットにされているのが「ポートフォリオウィークリィ」発行されたのは10月15日ごろ、それには東急電鉄株を含めて、東急グループがどんなに有望であるかを並べ立てている。もう一つ忘れてはならないのが、大蔵省と裏取引があったと思わせるように、東急電鉄の推奨のすぐ下に"JR株式、91年度から売却へ"という記事を掲載し、私鉄株を東急電鉄主導で上げていき、JRの高値上場への布石を敷いているのである。東急電鉄株の株価操縦は、単に稲川会がからんだだけの株価操縦事件ではなく、JRを高値で上場して、一般投資家からNTT同様虎の子をむしりとり、同時に暴力団を使って東急グループを買い占めようとした策謀だと考えられるわけである。

野村證券は、日本橋本社ビルに近い東急日本橋店(旧白木屋)の土地が欲しかった。仲介役になったのが元三井信託銀行の中島健社長だったが、東急の横田二郎社長はこれを断ったという。そこで野村は暴力団稲川会の石井会長に話を通じた。暴力団の前会長が東急側に直接話をつなぐわけにはいかないので、最初から東急株買占めについては一口乗っていた横井英樹が仲に入った。インテリジェントビルを建て、名称は東急ビルとして実際は野村不動産が取り仕切るという話だった。この話を押し進めるための無言の圧力として稲川会石井進前会長が発行済みか部数の3%をもって圧力をかけるという図式ではなかったか。
大蔵省の"野村切り " 証券スキャンダルの表面化の背後には大蔵省の国の資金調達戦略の転換が絡んでいる。

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2011.10.14: ゴールドマン元トレーダーをETFインサイダー取引
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2010.09.14: 三井住友FG、証券業務? やんの?
2010.08.20: 株メール Q3.コーポレートアクション
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2009.11.13: 7736企業乗っ取り 300億円強奪を示す財務諸表
2009.10.15: BNP作為的相場形成の疑義についての見解
2008.02.02: 信用取引 証券会社の儲けと投資家(顧客)のうまみ




1990年3月の証券13社の連結決算で、野村證券が5千億円を超える利益を挙げた時も、野村の5千億円の利益のうち1000億は証券事故の処理に使われているとささやかれていた。

うーん、変な文章だな。利益から事故処理に使うんでなくて、経費に事故処理をねじ込んで利益は減るんじゃないの?

30%ルール、株式の各銘柄ごとに1ヶ月間で特定証券会社の買いのシェアが30%を超えてはならないとするもので1980年4月に導入されたルールである。あまりにも野村の力が巨大になりすぎ、"野村證券霞ヶ関出張所"と揶揄されている大蔵省の手に負えなくなってきたのがきっかけとも言われる。

証券会社を監督する大蔵省証券局はもちろん、損失補填が商習慣として行われていることを承知していた。知っていたからこそ、1989年には損失補てんをやめるように、との通達を出し、「損失補てん」の温床と言われる「営業特金」を90年までに整理せよと通達を出していたのである。

通達を出し、・・・通達を出していたのである。うーん、この文章の書き方がなぁ、この本のレベルを推察するに十分なヒントだな・・・。

田淵社長は1991年6月27日の野村證券株主総会の席上で、問題の大口投資家に対する損失補てんは「大蔵省了解のもとで行われた」と発言した

田原総一郎はこう述べている。「『野村を叩け』という声が大蔵省内部で出始めてどんどん高まった」
証券取引審議会は、大蔵省の意向で、銀行、証券の垣根を取り払う、という方向でまとめようと図ったのだが、銀行が証券業界に進出すれば証券会社は不利になると、証券界のリーダー企業・野村證券が寝たふりを決め込んでしまったのだ。「田淵社長が『出るところへ出て決めよう』といったというので、大蔵省側はカンカンに怒った。出るところとは国会のことで、つまり、野村国会議員たちに十分鼻薬を効かせてあるので、国会でならば大蔵官僚たちの野望を打ち砕いてやるということなのですよ。」
野村スキャンダルが発表された20日の前日には、証券取引審議会の報告が出され、ここでは銀行と証券業界が、子会社方式で、相互参入する方式を提唱している。

バブルを育み、証券スキャンダルを育んだ土壌は「中曽根民活」である。「NTT株売却」作戦は、大蔵・野村共同作戦であり、両者共謀で国家的株価操縦が展開され、一般投資家が株式市場に動員され犠牲の羊に供された。その延長線上にJR株問題がひかえている。

共謀だってよ。発行会社が一円でも多く集めようとするのは当然。それに野村も協力するのも自然。それが共謀ねぇ。

補填先リスト

1990年7月29日付、4大証券は196法人、3個人、1283億円を発表、中堅13社(386件、437億円)。
株式市場が暴落を始めたのは、1990年1月のことであって、公表されたリストは3ヵ月後の1990年3月までに損失補填した客のリストで、むしろ未発表の1990年4月から1991年3月までの分が補填した額も件数も本当に大であろう。

日立、松下、新日鉄以下一部上場のトップ企業がずらりを顔を出している。公表前に「企業もモラルを正せ」と言っていた経団連も発表後にはクシュンと音なしになってしまった。経団連12名の副会長出身企業のうち5つの企業がリストに顔を並べていたからだ。次に目立ったのが公共団体だ。なかでも厚生年金事業団は補填金額が45億円と大規模である。大蔵省証券局長だった板野常和が天下って会長となっている日本化薬が500万円の損失補填を受けていることに世間はあきれさせられた。

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【金融ヤクザのお仕事】
2011.11.25: 米MFグローバル、破産法適用
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アルテミス

大女神の特性の一つである「野獣の女主人」を継承した鳥獣の守護神であり、同時に森や野原をかけめぐって狩猟をする女神でもある。もともとは多産や子どもの守り神で子を産む女性の神話は本来すべてアルテミスの神話であったとさえ言われる。性愛をめぐる立場ではアプロディテと対極に位置するが、畏怖すべき女神であるという点では官能の女神にまさるとも劣らない。「アルテミスの矢に射られる」という言い回しは女性の原因不明の突然死の比喩的表現であり、死をもたらす一面がアルテミスにあったことを暗示する。ニオベの物語では、ニオベは多くの子宝に恵まれたことを自慢し、アルテミスとアポロンの二柱の神しか産まなかったレトより自分の方が子どもの数で勝っていると豪語した。するとただちにアルテミスとアポロンの矢がニオベの子どもたちに次々と襲いかかり一人残らず奪い去った。ニオベは悲嘆のあまり、涙を流し続ける石になったという。

アテナ

アテナイの守護神の地位をめぐる海の神ポセイドンとの覇権争いの物語において、住民に最も有益と思う贈物をすることになったとき、アテナはオリーブの木を人々に送った。ポセイドンは海の神にふさわしく、三又の鉾で地面を突いて海水を湧き出させた。あるいは馬の神でもあることから馬を出現させ、調教の技を人間に授けたとも伝えられる。この勝負では結局、オリーブの木を出現させたアテナに軍配があがった。なぜオリーブがそんなに尊重されたのかわたしたちには理解しがたい。だが、その理由は、オリーブが現実世界での経済的価値に求められる。今と同じように古代にもオリーブの実は食用に供され、その油は調理にも薬用にも用いられた。油は昔は灯りをともすために欠かせないものでもあった。それ以上にアテナイの経済を支える重要な輸出品でもあったのである。
アテナイ(Athenai)という都市名は女神の名称アテナ(Athena)の複数形であるため、英語のAthensにも複数形であることを示す-sがついている。この女神を祀る神殿は、アテナが処女(parthenos)であるがゆえに、パルテノン(Parthenon)と呼ばれる
アテナは戦いの神でもあり、英雄ベレロポンのキマイラ退治やペルセウスのメドゥサ殺害を援助したのはアテナであり、剛勇ヘラクレスの華々しい成功の陰にも常にアテナがいた。

パリスの審判

ヘラとアプロディテとアテナが争ったエピソードはパリスの審判と呼ばれ、トロイア戦争の伝説の発端となった有名な話である。中心人物は別名アレクサンドロスとも呼ばれるトロイア王子パリスで、審判でパリスが主審をつとめたのは一種の美人コンテストであった。ことの発端はトロイア戦争の英雄アキレウスの両親の結婚式にさかのぼる。ゼウスは女神テティスを追い求めていたが、テティスは自分の育ての親であるヘラをはばかってゼウスを拒んだ。ゼウスが彼女を断念したのはテティスから生まれる息子はその父親を凌ぐだろうという予言のせいであった。ゼウスは人間のペレウスという人間の男に彼女を嫁がせることにした。すべての神々がペレウスとテティスの結婚式を盛大に祝う中、ただ一人だけ華燭の宴に招かれなかった女神がいた。その名はエリス「争い」である。争いを引き起こす女神エリスは名前の通りトラブルメーカーであるから、招待されようとされまいといずれにせよ、問題を起こしたに違いないが、エリスはこれを恨み、「最も美しい女へ」と書かれた黄金の林檎を祝宴の真っ只中に投げ込んだ。この林檎をめぐって、ヘラとアプロディテとアテナは自分のものだと主張して譲らない。困り果てたゼウスは争点となっている林檎の所有を決めるためにその判定を羊飼いのパリスに委ねた。パリスはトロイア王プリアモスと王妃へ壁の子であるが、生まれて間もなく捨てられた。女神たちはそれぞれ自分に栄冠を与えるなら贈物を授けようとパリスに申し出た。ヘラは全世界を支配する王の権力を、アテナは戦争での勝利を、アプロディテは絶世の美女との結婚を彼に約束した。そしてパリスが選んだのは、世界一美しい女性ヘレネとの結婚であった。しかし彼女はすでにスパルタの王メネラオスの妻であったためにギリシアとトロイアの戦いの幕が切って落とされることになる。

女性が、「自分が一番可愛い」と思いたいのも、今も昔も変わらないと。可愛いと思いたいのよ。それが嘘でも良いんだわ。思うだけだからな。こういう記述はギリシア神話に無いのかなぁ、本当は自分が一番だと思っているくせに、他の女を褒める”嘘”をつきまくる。あの白々しさは、本当にサムイ。

ベンジャミン・フランクリンはこんなことをいってなかったか? 革命は”われわれの”革命というように、一人称で言う時は常に合法だ。”彼らの”革命というように三人称で言う時のみ非合法なのだ

フランクリンは、こうも言ってなかったか? この世では死と税金を除けば確実と言えることは何もない

> お洒落なやり取りですね。
> ベンジャミン・フランクリンはこうも言ってなかったか? ガンマ無き者デリバティブに非ず うーん、なんか今一つセンスが感じられない。

ナゴルノ・カラバフの住民は、投票によって独立を宣言し、その一方でアゼルバイジャンとアルメニアが領有権を争っている。アゼルバイジャンが軍に最新装備を供給できるお金を手に入れたら、地域紛争が一気に爆発するでしょうね。それだけでも両国にとって厄介なのにすぐ南にイランがあるから、もっとすごい爆発になるかもしれない。イランといえばナゴルノ・カラバフのことがなくても海上の石油掘削装置やカスピ海のチョウザメとキャビアのことで、アゼルバイジャンと永年つかみあいの喧嘩をしている。ソ連が睨みをきかせていた頃は、ソ連の共和国がそういうものを好き放題奪っていたものよ。しかも、こういう問題は一つ一つ独立していなくて重なり合っているの。

> アゼルバイジャンも大変だね。イランとロシアに挟まれてる。
> アルメニアとアルバニアがいつも混乱してしまうな。アルメニアがアゼルバイジャンの横で美人が多いと言われる方。ホッジャのアルバニアがユーゴの下。

大規模の油田は4箇所ある。アゼリ、チラグ、グナシリ、アゼルバイジャン。掘削費用を分担しているアゼルバイジャンと西欧の国際企業家連合は油井の独占権は国際法によって守られていると考えている。でも、その主張の根拠は漁業権で定められた境界線にすぎないので、イランとロシアは該当しないと強硬につっぱねている。これまでのところ、この問題はもっぱら外交手段のみの応酬だったけれど。

ライカというのは、ロシア・オプ・センターが使用する監視衛星だ。ソ連が人工衛星に乗せて宇宙に送り込んだ犬-ライカ犬にちなんで命名された。ワシントンDC上空の静止軌道にあり、アメリカ、全ヨーロッパ、アジアの一部の信号を傍受できる。

衛星の正しい使い方

× テレビ、天気予報。
◎ 諜報活動。

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2008.12.09: アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図2
2008.12.08: アラブとイスラエル―パレスチナ問題の構図

女神たち

ヘラ

ゼウスの妃ヘラ、ヘラの名は明らかにインド=ヨーロッパ語系統には属さない。この語族の来襲以前から先住民の信仰を集めていた大女神がヘラの前身である。ヘラが前ギリシア的な独立した女神であったことは、考古学的に実証されているばかりではなく、歴史家のヘロドトスも「ヘラはギリシア北部の土着民ペラスゴイからギリシア人に受け継がれた神である」と言明している。ゼウスをもたらしたインド=ヨーロッパ語族は、先住民の信仰対象を自分たちの最高神の配偶者や子に移すという習合方法によって宗教的支配を図った。しかしゼウスは主権を完全に掌握したわけではなく、過去の信仰の根強さや宗教的融合の不完全さは神話に影を落とすことになった。実際は、ヘラは婚姻と結婚生活の守護神であるが、神話上のゼウスとヘラは円満な夫婦ではなく、たえず口論を繰り返している。歴史的な観点から見ると、ゼウスとヘラの不和の神話には征服民族と土着民の宗教的軋轢が反映されていると解釈するのが自然だろう。神話世界では卓越した大女神の古い記憶はほとんど失われている。ゼウスとヘラの聖婚の神話は前13世紀頃には成立していたと推測され、最高神の妃という従属的な役割へのヘラの転落はすでにその頃始まっていたと思われる。ヘラは夫ゼウスの愛人やその子どもたちを迫害する意地悪な女神に格下げされ、その執拗なまでの嫉妬深さを物語る逸話には事欠かない。


3000年前から、嫁ってお荷物だったのですね。


アプロディテ

ギリシアの女神たちには先住民族の大女神の痕跡が多かれ少なかれ認められるが、アプロディテについては、むしろオリエントからの影響のほうが大きいといわなければならない。この女神の支配領域は、性的欲望とそれを誘発する美に関連している。その根本には多産や豊穣など、大女神に直接連なる職掌もあるが、アプロディテの場合には近東、特にメソポタミアの女神との類似性が顕著でシュメルの女神イナンナやアッカドの女神イシュタルのギリシア的形態であるとさえいわれる。アプロディテの力の前には、最高神ですら屈服せざるを得ない。戦場から夫の注意をそらすために、ヘラはアプロディテから魔法の力を持つ帯を借りて身につける。するといつもなら他の女にしか目が向かない恐妻家のゼウスが、このときばかりはめずらしいことにヘラに欲望を抱き、戦争のことなどすっかり忘れて妻と甘いひと時を楽しもうとする。しかも、こんな山の上では周囲から丸見えだからとヘラが人目をはばかるのに対して、ゼウスは雲でおおってしまえばなんでもない、オリュンポスの館に戻るには及ばないとまで言い出す始末。官能をつかさどる女神の威力はかくも驚異的である。


これも昔からですね。女神たちはこの事実を知っているから男としては厳しいところです。有害図書指定ジョージ秋山のラブリン・モンローにて「男の人って可哀そう。一生、性欲の奴隷ですものね。」というような台詞があったのを思い出しました。

アプロディテの恋人たち

羊飼いのアンキセス その子どもがウェルギリウスの『アエネイス』の主人公のアエネアス。アエネアスはトロイアの英雄。
アドニス キュプロスの王女ミュラは実の父親に恋心を抱き、その感情を恥じるあまり死を選ぼうとした。しかしミュラの乳母は一計を案じ、実の娘だという事実が露顕しないように巧みに仕組んでミュラを父親の寝室に送り出した。だが逢瀬を重ねるうちにとうとう恐るべき事実が発覚し、父は娘を殺そうとする。ミュラは逃亡し、神に祈り、生も死も拒んだところ、その体は没薬(ミュラ)の木に変身した。この木の裂け目から生まれたのがアドニスである。


官能の女神の強い力を断固として拒否する女神もいる。処女神のアルテミスとアテナ、そしてヘスティアである。性的欲望を喚起するアプロディテと貞潔を尊ぶアルテミスの拮抗をみごとに象徴するのはパイドラの恋物語である。パイドラはアテナイの英雄テセウスの後妻で、古典期の悲劇詩人エウリピデスの『ヒッポリュトス』(前428年)に登場する。舞台で繰り広げられるのはあくまでも人間達のドラマであるが、その背後には神々が厳然と存在する。テセウスは先妻との間にヒッポリュトスという息子がいた。彼は狩猟に明け暮れ、純潔の女神アルテミスだけをひたすら崇拝していた。この青年の眼中には女性など一切なく、愛と官能の女神アプロディテを毛嫌いして敬意を払わない。神威をないがしろにされたアプロディテは、異性愛を拒否するこの不敬な若者に憤慨し、彼を罰するために彼の義母に激しい恋心を吹き込んだ。パイドラはヒッポリュトスに思いをつのらせ、自らの恋を恥じ、思いつめる。パイドラの乳母がその思慕の念をヒッポリュトスに伝える。ところがこの潔癖な青年には義母の懸想は邪悪な忌むべきものと映る。愛を拒まれたパイドラは恥ずかしさのあまり、首を吊って自害する。けれどもそのとき意趣返しにパイドラは、ヒッポリュトスが自分を辱めようとしたという、嘘を伝える書置きを夫に残した。テセウスは亡くなった妻の言葉を鵜呑みにして、即座に息子を館から追放するとともに、呪いをかけた。ヒッポリュトスは海から突如として現れた怪物に襲われる。戦車から落ち、馬に引きずられた青年はこうして短い生涯を終えたのである。

公共心と解雇規制

不正に社会保障給付を受け取ることへの罪悪感が小さい社会では失業保険が充実せず、解雇規制が強いそうだ。発覚しなければ政府の給付を不正に受け取っても良いと考える人の比率が高い国ほど、失業給付の水準が低く、解雇規制の程度が高いことをOECD諸国のデータを使って実証している。道徳観が高いのは北欧諸国で、低いのはフランスやギリシャなどの地中海沿岸諸国であった。ちなみに日本は、OECD諸国の真ん中くらいになる。

俺も低いだろうな。「俺がもらう立場にないとしても、代わりにてめーが俺の払った税金を取り返してこい。」

つまり、伝統的経済学が念頭に置いてきた極端に利己的な人々を前提とすれば労働市場の規制が強くなるという皮肉な結果が得られるのだ。失業は多くの人にとって最大の所得リスクである。失業リスクに備えるための公的政策は失業保険制度である。

そうか、俺の考え方は伝統的経済学の念頭に置かれている考えなんだ!


何を持って貧困とするか?

2009年10月、厚生労働省は日本の相対的貧困率を公式な統計として初めて発表した。2006年において、15.7%という数字はOECDの中でも高水準である。日本で高いのは相対的貧困率であって、絶対的貧困率ではない。相対的貧困率は所得の順位が50%の人の所得の半分以下の人の人数比である。日本では比較的低位から中位の人の所得が高いので50%目の人の所得(中位所得)は高めに出る。もし、真ん中の所得階級の人の半分の所得がないと強いストレスを感じて貧しいと思う人が多ければ、相対的貧困率の指標は意味がある。

俺、この相対貧困率嫌いね。低所得者層、つまり相対貧困者だが、7人に一人が当てはまるその小さな社会では、「人の所得を必要以上に気にして、無駄に不満を感じる」傾向が強い。特に日本の給与所得者は、低所得者でなくても所得差を気にする傾向がある。1000万以上もらっている奴がそれ以上もらっている奴をネタに不満を感じるという現象だ。いずれの相対貧困者も存在するし、彼らが不満そしてストレスを抱いていることも知っている。だが、彼らに革命は起こせない。貧困で生命の維持に危機を感じているわけではなく、なんとなく自分より恵まれている人を見て妬み、そしてその原因を自らの中に認めず、会社や社会のせいにしている典型的な民だからだ。そんな連中の「不満やストレス」など、国家として気にするべき指標ではないのは明らかだ。

管理職の責任と長時間労働

日本の会社でホワイトカラーが長時間労働になる一つの理由は、無駄な長時間の会議が多すぎることだろう。職場で会議をすることのメリットは、職場全員で情報を共有することができて生産性を高めることができるからである。しかし、多くの会議は、参加者にほとんど関係のないように思えることまで、報告されることもある。これは会議で報告して全員の了承を得たという担当者の責任逃れや実績作りが原因ではないだろうか。

そうか。会議の目的は、全会一致と責任逃れか。それ納得だな。

最低賃金引き上げは所得格差を縮小するか?

最も被害を受けるのは生産性の低い人 貧困解消の手段として多くの人が考えるのが最低賃金の引き上げである。産業、職種にかかわりなく適用される地域別最低賃金は09年の時点で、最も低い沖縄629円から東京の791円までの間で分布しており、全国平均は713円である。そもそも最低賃金引き上げは、本当に貧困解消策として有効なのだろうか?
 実は、最低賃金引き上げで被害を受けるのは、新規学卒者、子育てを終えて労働市場に再参入しようとしている既婚女性、低学歴層といった、現時点で生産性が低い人たちだ。彼らの就業機会が失われると、仕事しながら技術や勤労習慣が身につけることもできなくなる。

最低賃金は既に高いんだよね。例えば、スーパーのレジ打ちのように参入障壁が低い仕事でも713円もらえるわけだ。一日8時間週休二日で働いて、月約12万円。年収140万円の給料取りとなる。では一方、その10倍の所得をもらっている人の仕事を聞いてみよう。それは任天堂でソフトの開発責任者をしているかもしれないし、商社でオイルのトレーディングをしているかもしれないし、銀行で大手企業のファイナンスを提案しているかもしれない。いずれにしても、一朝一夕に誰でもできる仕事ではないのは明らかで、それができる人とあらばレジ打ちができる人の1%にも満たないだろう。
かなり大雑把な仮定で計算するが、GDP比で民間最終消費支出が約59%、そして総固定資本形成が21%だから、消費にまつわるレジ打ちに値する富が59%、総資本形成=投資に値する富が21%と仮定し、それができる人の比率を仮に100:1とした場合、59を100で分配するのに対し、21を1で分配するから所得格差は35倍程度になってもおかしくない。それが10倍しかない方がむしろ不自然だとは思わないか?

誰が税を負担しているか

価格の表示方法や自動支払いか否かによって、私たちが価格に対する行動を変えるということが事実であれば、伝統的な経済学の前提は大きく崩れてしまう。最も大きな影響を受けるのは、税に関する議論であり、それを考慮した分野が行動財政学と呼ばれている。誰が本当に税を負担しているかということで議論になる税の種類に、社会保険料の労働者負担と事業主負担がある。伝統的な経済学では、事業主負担の社会保険料であれ、手取り賃金を引き下げるという意味では同じなので、第一義的な負担者がどちらかであるかということと、実質的な負担者が誰であるかということは無関係だと考えてきた。ところが、経済学者以外には、直接税や社会保険料を負担するということと実質的にそれらを負担することは同じだと考えられている。「A事業の費用は、事業主負担分の社会保険料から支出されているから、その使い道は、事業主の便益になるようにすべきだ。」という趣旨の意見が財界から出されたり、「社会保険料の労働者負担を減らして事業主負担を増やすべきだ」という意見が労働側から出たりする。また厚生労働省も公的年金の収益率を計算する際、労働者の保険料負担支払い額の計算には労働者負担分しか考慮に入れない。

表面上、誰が税を払うかで行動が変わってくるのだとすれば、政府は目立たない税を選ぶことになるだろう。所得税や消費税は目に見えやすい課税だ。所得税はサラリーマンであれば源泉徴収票を見た時に分かるし、自営業であれば申告する際に分かる。消費税は買い物するたびにわかる。ところが法人税や事業主負担の社会保険料は源泉徴収票にも書かれていないし、商品の値札にも書かれていない。つまり国民の多くには、目に見えない税金だ。そういう税金に税源がシフトしていく可能性がある。ところが単に目立たない税が、実質的には貧困者により多く負担される税になってしまうかもしれない。逆に、事業主負担の税金が正社員の賃金引き下げに転嫁できないのであれば、そのコストを非正社員や消費者が支払っているかもしれない。私たちは「目立つ」負担にだけ注意するのではなく、本当の負担に注意して税、公共料金や社会保障制度を考えていく必要がある。

所得税率が累進で高いのはよくある話だが、配当課税、株式譲渡益課税、為替・デリバティブの譲渡益は雑所得扱いで総合課税と結局直接的に金を受け取ろうと思うと、課税される包囲網ができあがっているのが日本の税法だ。

【国家権力による搾取】
2011.10.12: 日本中枢の崩壊 1/2 東電
2011.08.05: 金賢姫全告白 いま、女として2/6 ~今、君が嘘をついた
2010.10.14: 道路の権力1
2010.08.24: 中国の家計に約117兆円の隠れ収入、GDPの3割
2010.07.05: 警視庁ウラ金担当
2010.05.20: 秘録 華人財閥 ~独占権、その大いなる可能性
2009.08.14: インド独立史 ~東インド会社時代
2009.01.07: ユーゴスラヴィア現代史 ~国家崩壊への道
2008.09.24: 俺の欲しいもの
2008.09.23: 被支配階級の特権
2008.07.18: Olympic記念通貨に見る投資可能性


薬指が長いと証券トレーダーに向いている

薬指は人差し指に比べてどの程度長い? 10%以上長いと証券トレーダーに向いているかもしれない。指の長さの比は男性ホルモンであるテストステロンの量と相関があることが知られている。一流のサッカー選手、オーケストラの演奏者、大相撲などにも薬指の長い傾向がある。瞬間的な判断力を必要とする職種では、テストステロンの量が重要な資質として機能するようだ。竹内久美子のエッセイの中に、女性は薬指の長さをみるという表現があった。彼女の解釈は、男性ホルモンの多さと生殖能力の高さには関係があるというものだ。それだけではなく経済力の大きさの指標になっているのかもしれない。

ドキッとして今、薬指と人差し指、比較しただろ?

出生時体重が10%重いと所得を1%高めている

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のブラック教授らはノルウェイの双子同士での出生時体重の違いがIQ、教育、所得などに影響を与えることを明らかにしている。彼らの推定によれば、出生時体重が10%と重いと所得を1%高めているというのだ。日本では出生時体重の低下が続いてきた。この傾向は若い女性の間のやせ願望が大きな要因になっている。また、若い男性の失業率が高いと出生時体重が下がる傾向もある。母親のストレスが影響するのかもしれない。2006年に厚生労働省は「妊産婦のための食生活指針」(健やか親子21推進検討会報告書を策定し、妊娠中は過度に栄養制限を行わないで適切な栄養を摂取することを推奨したのだ。ところがまだまだ多くの産婦人科で、体重抑制指導がなされているのではないだろうか。

やる気や協調性、リーダーシップといった非認知能力が社会で成功する上で重要な要因・所得にプラスの影響を与えることが確認されている。非認知能力の一つに時間割引率がある。将来のことをどの程度割り引いて考えるかという程度を表す。高いと将来のことをあまり重視しないことを意味する。低いと将来のリターンを重視することになり、教育や訓練を受けて生涯所得が高くなることが予想される。
 時間割引率は生まれつき決まっているものなのだろうか。子供に対する利他的動機をもった親が将来子供の直面する経済環境に最も適した時間割引率と余暇選好を形成するように努めることをモデル化することで、産業革命を描写した研究がある。このモデルの前提となっているのは、親の教育の酔って子供の時間割引率が変わるというものである。親の貯蓄行動が子供の教育や貯蓄に影響を与えていることを示した研究もある。

子供の時間割引率か。それを変える方法はわからないが、測定は意識していればすぐにわかるな。「ご飯」と要求してくるまでの朝起きてから時間、長いほど低い。おもちゃの要求頻度、そしてその後保持し続けるおもちゃの数、それから実際の遊んでいる時間。金(小遣い)の使い方を見ていてもわかる。おっと次項にもっとわかりやすい事例が紹介されているではないか。早速見てみることにしよう。

夏休みの宿題はもう済ませた?

子供の頃、夏休みの宿題を夏休み最後の日に必死になって仕上げた記憶を持っている人は多いだろう。ダイエットしようと思っていてついつい食べ過ぎてダイエットに失敗した経験を持っている人もいるのではないか。カードを使って買い物しすぎて多額のカードローンを抱え込んでしまう人もいる。年金未加入問題も、多くの未加入である若者は、老後の年金よりも現在の消費を重視して年金保険料を支払わないという選択をしている。後で後悔することはよくあることだ。ところが伝統的な経済学では後悔しない人間を前提にしてきた。経済学では、このような人々の行動を時間整合的と呼ぶ。後悔する人が少なくないにもかかわらず、伝統的な経済学では後悔しない人を前提にしてきたのはなぜだろう。たしかに宿題をきちんと提出できない人は、まともな経済生活ができず、市場競争で淘汰されてしまい、影響力を持つのは後悔しないような経済行動する人だけになる、というのが標準的な考え方だ。実際、社会には合理的で後悔しない人にとっては、いわばおせっかいとも言えるような規制に満ち溢れている。代表的な例は、強制加入の公的年金制度である。後悔するような非常に人間的なタイプの人を経済モデルで分析する分野が最近急速に発展してきており、行動経済学と呼ばれている。
 タバコを吸う人の多くはギャンブルもやるし酒もやる。特にもともと後回し鼓動を取るタイプの人は中毒材から抜け出すことが難しい。

投資一族の血を受け継ぐものは、その資質として、夏休みの宿題を最終日にということは絶対にない。7月の最終週、すなわち夏休み開始一週間で子供が言った。
子供「宿題は全部終わった。後は日記だけだ。」
父 「ふふ、一週間か。俺もそうだった。一週間もあれば無理なく宿題を終わらせることができる。宿題を終えるためにかかった時間は同じだが、終わった時期が俺と違う。俺は夏休みが始まる頃には、既に宿題は終わっていた。夏休みの宿題は終業式に配られたのか?」
子供「いや、一週間くらい前に配られた。」
父 「そうであろう。俺の時代もそうだった。俺は、配られたその日にスタートを切っている。配られたということはもう始めて良いということだ。一週間前に配られたのなら、夏休みが始まる頃にはちょうど終わる。俺とおまえは、同じ時間をかけているゆえ、能力は変わらない。だが結果・宿題を終わらせる速度は違うのだ。」

食い過ぎも起こりえない。欲のコントロールの根源は、幼少時の食欲のコントロールから。過食は投資家として資質がないとみなす。さすればタバコの吸い方も変わってくる。惰性で一日一箱とか絶対にない。45分で切れるニコチンの毒を2時間耐え、禁断症状でまくりの状態で吸う一本は格別にうまい。このマゾヒズムを理解できないのなら、投資一族としてタバコは吸うべきではない。この節度を持ってギャンブルを嗜好として楽しむ分には、大いに推奨する。ギャンブルの極みであるデリバティブの世界まで、お前がたどり着くことを俺は待っているぞ。


【愚民の欲】
2011.11.30: 利休にたずねよ3/4 ~茶の湯の極意
2011.10.13: 日本中枢の崩壊 2/2 霞が関
2011.07.22: 死刑囚 最後の一時間 2/2 ~死刑囚
2011.03.01: アジア発展の構図 ~出遅れた国々 4/4
2011.01.20: 項羽と劉邦 ~広大なる中国大陸
2010.11.25: 初等ヤクザの犯罪学教室 ~割に合わない犯罪
2009.12.29: 何のために生きるのか?ふと考えるときがある
2009.05.07: 幸福感と欲の関係


もしあなたが漁師だったら

サラリーマンのように毎日8時間漁に出かけるような仕事の仕方をするだろうか。漁師の仕事はきつくて、どの働き方の漁師も一週間の労働時間は40時間だとしよう。毎日の天候がランダムに変化しているとしよう。この時、毎日8時間タイプ、目標漁獲高タイプ、大量時集中タイプのどの漁師が、一週間での漁獲高が一番多くなるだろうか。答えは大漁の時に集中して働くタイプである。なぜなら一週間で働く労働時間が決まっているのだから、最も魚が獲れる時間に集中的に働いた方が、魚が獲れない時間に長く、魚が獲れる時間に短く働くより、より多くの魚が獲れるからだ。若手芸能人や歌手が売れっ子になると、ほとんど寝る間もないほど働き続けるのも同じ理屈だ。人気がいつまで続くかわからない以上、仕事の依頼がある時は睡眠時間を削ってでもできるかぎり引き受けて人気がなくなった時に十分休めばいいのだ

一日の目標金額を決めて仕事をすると、お金を貯められないだけでなく、大損してしまうことになりかねない。ギャンブルで毎回の損益を絶対にマイナスにしないように、決めているとしよう。競馬の最終レースまでの間に負けが込んでいたら最終レースで大穴を狙いに行ってしまうかもしれない。パチンコで三時間やって負けていた場合も、大当たりを狙ってもう一時間挑戦してしまうかもしれない。どちらもとても危険な行動だ。毎日の目標額を決めて行動するという「計画的な態度」が悲惨な結果をもたらしかねないのだ。

競争嫌いの日本人

貧富の格差が生じるとしても、自由な市場経済で多くの人々はより良くなる という考え方にあなたは賛成するだろうか。主要国の中で日本の市場経済への信頼は最も低く49%しかこの考え方に賛成していない。これに対してアメリカでは70%の人が賛成している。では自由な市場経済に信頼を置かない日本人は、市場ではなく、政府の役割を重視しているのだろうか。同じ調査では「自立できない非常に貧しい人たちの面倒をみるのは国の責任である」という考え方に賛成するか否かを尋ねている。日本ではこの考え方に賛成しているのは59%である。実はこの数字も国際的には際立って低い。ほとんどの国が80%以上の人が貧しい人の面倒をみるのは国の責任だと考えている。つまり日本人は自由な市場経済のもとで豊かになったとしても格差がつくことを嫌い、そもそも市場で格差がつかないようにすることが大事だと考えているようだ。

民主党、社会民主党、国民新党の三党は、2009年8月30日の第45回衆議院選挙での自公連立政権からの政権交代を受け、連立政権を樹立することになった。そのための三党合意文書の冒頭には、「小泉内閣が主導した競争至上主義の経済政策をはじめとした相次ぐ自公政権の失政によって、国民生活、地域経済は疲弊し、雇用不安が増大し、社会保障・教育のセーフティネットはほころびを露呈している。」という文章がある。

人生の成功に重要なのは勤勉よりも運やコネ という考え方が不況で強まったのは事実だろう。運・不運による所得の差を小さくするものは民間の保険、家族の助け合い、そして税や社会保障による再分配制度である。こうした政府による所得再分配政策や雇用創出政策は、市場機能に制限を加えて行うものではない。しかし現実には市場主義そのものに問題があり、市場に対する様々な規制を加えていくべきだという議論になった。最低賃金の引き上げや製造業派遣労働の禁止が2009年の民主党の選挙公約にあげられたのは、そうした反市場主義的な考え方を反映している。規制を強化すると規制で守れた人のなかでの格差が小さくなり、そのなかでの運・不運の要素は小さくなるが、規制の枠に入れなかった人たちとの格差は拡大する。規制に枠に入れるかどうか、という運・不運の要素が大きくなってくるのである。最低賃金の引き上げによって、運よく職を得られた人は高い賃金が得られ、働いている人の間での格差が縮小する。しかし、最低賃金の引き上げは、仕事に就けない人を増加させるため、失業者と就業者の間の格差は大きくなり、それこそ運不運の差を拡大してしまうのである。

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2011.07.29: 後藤田正晴と12人の総理たち2/2 ~横柄なオヤジ
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洪水伝説

パンドラ神話の後日談としてデウカリオンとピュラが登場する。デウカリオンはプロメテウスの息子でパンドラとエピメテウスの娘ピュラと結婚していた。ゼウスが邪悪な人類を滅ぼすために大洪水を引き起こそうとした時、デウカリオンとピュラは先見の明のあるプロメテウスの忠告に従って、あらかじめ箱舟を作った。9日間にわたって大雨が降り続いた後にやっと水が引き、難を逃れたこの夫婦が箱舟から出てみると、地上には誰ひとりいなかった。二人がゼウスに感謝の犠牲を捧げると、神は彼らの望みをすべて叶えてやろうと約束した。そこで彼らがこの世に人間が満ち溢れることを願うと、ゼウスは母の骨を肩越しに投げよと告げた。彼らは母の骨とは大地の石のことであると悟り、デウカリオンが石を後ろに投げると石は男になり、ピュラが肩越しに投げた石は女になった。この物語は民衆(laos)の起源を石(laas)とするものでたぶんに語呂合わせの要素を含んでいる。ギリシア人は自分達はデウカリオンとピュラの末裔であるという自己認識を抱いていた。彼らはヘレネス(Hellenes)と自称したが、ヘレネスという名はデウカリオンとピュラの息子ヘレン(Hellen)に由来する。

激似だ・・・

旧約聖書のノアの物語、「創世記」によると神ヤハウェは人類を滅ぼそうとしたが、義なる人であるノアにだけ箱舟の建造を命じた。彼は家族とあらゆる種類の動物をつがいで箱舟に乗りこませた。40日間も大雨が続いた後、150日目に放ったカラスとハトが戻り、さらに7日後に放ったハトはオリーブの葉をくわえて箱舟に帰ってきた。また7日後にハトを放ったが、それが戻らなかったため、ようやくノアは箱舟の外に出て神に供物を捧げた。ノアの物語の他にも、オリエントには洪水伝説がいくつもあった。前3000年紀のメソポタミア南部のシュメル人の神話では、「永遠の生命」を意味するジウスドラが知恵の神から洪水の予告を受け、船に乗り込んで助かっている。ジウスドラは太陽神に感謝の供物を捧げ、永遠の生命を授かった。やはりメソポタミア南部、前2000年紀にいたアッカド人の神話「アトラ・ハシス」でも人口増加を憂慮する神々が洪水による人類滅亡を企てる。しかし知恵の神エンキに造船を命じられたアトラ・ハシスだけが船に動物たちを乗せて難を逃れた。大洪水のモチーフは古代オリエント文学で最も有名な『ギルガメシュ叙事詩』にも見出される。シュメル人の古い伝承を基にして前2000年紀にバビロニア人がまとめたもので、アッカド語やヒッタイト語、フリ語などの版も存在する。主人公であるギルガメッシュは死を恐れ、永遠の生命を獲得した人物に会うために苦難に満ちた旅を続け、最後にようやくウトナピシュティムのもとにたどり着く。ウトナプシュティムは知恵の神エアの指示で船を作って洪水を逃れた人物である。彼はノアと同じように箱舟の中にすべての種類の動物を積み込み、やはり何度か鳥を飛ばして水の引き具合を確かめる。最後にカラスを放ったところ、それが戻ってこなかったので、ウトナプシュティムは箱舟から出て神々に祈りを捧げ、永遠の生命を与えられた。
 神々の王権継承神話がメソポタミアの影響下で成立したことや、年間降水量が少ないギリシアの気象条件などを勘案すると、このデウカリオンの洪水伝説もオリエントに端を発するという主張は十分に首肯できる。

ギリシア文化を築いた人々は、もとからギリシアの地に住んでいたわけではなかった。ギリシア語はインド=ヨーロッパ語族と総称される言語グループに属する。この語族の祖先の詳細は明らかではないが、彼らは前4000年紀以降、気象条件の変化や人口変動などに促されて黒海周辺から南下し始めた。その一派が前2000年紀あたりから三度にわたってエーゲ海地域に押し寄せてきたが、そこにはすでに、ギリシア語とは異なる言語を持つ先住民が居住していて、生と死をつかさどる大女神を信仰の中心に添えていた。では征服された先住民族の崇拝対象は異民族の侵略によって完全に一掃されたのだろうか。たしかに、最終的にインド=ヨーロッパ語族の信仰が優勢になり、男性神を頂点とする家父長制的な宗教体系が確立されたが、原住民の信仰対象は形を変えながらも、オリュンポスの女神たちに受け継がれた。

言語系統について・・・インターネットで調べてみると・・・、どうも納得いかない"系統だて"です。三大語族は、「インド・ヨーロッパ語族,セム語族,ウラル語族など」と書いてありますが、英語、ラテン語、ヘブライ語などはこれらに網羅されているようであるが、中国語や日本語、アジアの言語は含まれていない。語族という分類法で見ると、日本語族となっている。これ、言語学の本を読まないとわからないが、それぞれの国の愛国心が邪魔をして、主観的な起源説を唱えると喧嘩になるから、分類がうまく進まないのかね?





1927年4月5日、モスクワでは国共合作を推進してきたスターリンが3000人の代議員を前に誇らしげに演説した。「蒋介石は規律に服している。右派が我々にとって役に立たなくなった時には、それを追い出そう。現在我々は右派を必要としている。彼らは帝国主義に対して軍隊を指導し、号令する役に立つ人たちである。そのうえ彼らは金持ちの商人とも連絡があるから彼らから金を作ることもできる。そこで彼らは最後まで利用されてそれからレモンのように絞られて投げ捨てられるべきである。」レモンのように投げ捨てられるのは誰か? その答えが明らかになる瞬間が近づいてきた。
4月12日、上海に突如現れた兵士達が共産党や労働者の組織に襲いかかった。蒋介石が武漢政府への服従のポーズをかなぐり捨て、反共クーデターに踏み切ったのである。不意をつかれた左派勢力は壊滅的な打撃を受けた。
4月18日、蒋介石は南京で国民政府の樹立を宣言した。中国に対するソビエトや共産党の影響力の拡大を懸念していた列強は、蒋介石の権力奪取を歓迎した。
7月14日慶齢はこう声明した。
すべての革命は社会の基本的変革をもってその基礎としなければならない。そうでなければそれは革命ではなく単なる政権の交代に過ぎない。いま、制作は時代の要請に応じて改変すべきだという人がいる。この主張にはいくらかの理はあるが、その変化は逆方向であってはならない。革命政党が革命性を喪失し、革命の旗を掲げながら本来それを変革することを党の基礎としてきた社会制度を擁護する機関としまうような変化であってはならない。孫文博士の政策は明確である。もし党のある指導者達が一貫してそれを実行しないのであれば彼らはもはや孫文博士の真の後継者ではなく党派もはや革命のための党ではなく、軍閥の手に握られた単なる道具であり、圧迫のための代理人であり、現在の奴隷制度に取り付いた太った寄生虫にすぎない中国において革命は不可避である。私の胸のうちには革命に対する絶望は無い。私はただ、かつて革命を指導した人々のあるものが迷って道を誤ったことを嘆くだけである。」
それは蒋介石に対する絶縁状であった。そしてそれは同時に靄齢、孔祥熙、子文、美齢ら蒋介石の側に立つことを選んだ宗一族の人々に対する決別の辞でもあった。

美齢の結婚 蒋介石
二人の結婚をおしすすめたのは靄齢であった。靄齢は蒋介石にこう語った。「あなたはいまや重要人物になりつつある。だがその地位はもろい。上りつめるのも沈むのも同じようにあっけないものなのだ。共産党の陰謀があなたを狙っている。いずれあなたは権力を奪われてしまうだろう。だが私はあなたに協力したい。子文を通じて上海の銀行家たちから資金を引き出し、あなたに提供しよう。武器を買うための金も援助しよう。」

蒋介石が愛したもう一人の女性、陳潔如によれば、この会談ののち蒋介石は彼女にこういったという。「5年間だけ身をひいて私と宋美齢を結婚させてくれ。そうすれば北伐を継続する助力を得ることもできるし、武漢政府から脱して独立できるのだ。これは政略結婚に過ぎない」。潔如はこの懇願を受け入れアメリカに渡った。しかしその後、蒋介石からの音信はぷっつりと途絶えたのだった。

1929年、ソ連から中国革命に対する支援の可能性が絶たれ、モスクワにとどまる意味はなかった。5月ベルリンで声明を発表した。「私は帰国する。しかしその目的は孫博士の遺体を彼が埋葬することを望んでいた紫金山に移す式典に出席するためである。孫博士の基本原則に完全に一致するまで、私は党のいかなる仕事にも、直接的にも間接的にも参加することはできない」子良はこの声明が蒋介石の逆鱗に触れることを恐れ、慶齢に声明の発表を思い止まるよう懇願した。しかし、慶齢はこう答えたという。
「宋家は中国のためにあるのであって、中国が宋家のためにあるのではない。」

わーぉぅ! こういう発想のある女性がいるというのが生きる希望になるな。いつかこんな人と出会えるのではないかという幻想がまた始まる・・・

美齢は慶齢に国民党中央執行委員会への出席を求めた。蒋介石は孫文夫人宋慶齢を国民政府に引き入れることをなおも断念していなかったのである。しかし慶齢はこの申し出を拒否した。
「反革命的国民党指導者の性格が今日ほど恥知らずなものとして明らかになったことはない。国民革命を裏切ったことで、彼らは帝国主義者の道具に堕落した。しかし中国の民衆は抑圧を恐れることなく、偽りに満ちたプロパガンダに惑わされず、ひたすら革命の側に立って戦うだろう。テロリズムは血塗られた反動に打ち勝とうとする我々に決意をさらに確固たるものにするだけだろう。」

1988年 蒋経国が世を去った。国民政府総統には副総統の李登輝が昇格した。しかし蒋経国は国民党主席については後継の規定も設けず、副主席も置いていなかった。その真意は今も明らかでない。そして対立はこの国民党主席の座を巡って怒ったのである。李登輝は蒋介石らとともに台湾に移ってきた「外省人」ではなく、台湾出身の「本省人」だった。国民政府の台湾移転以来、実権を握ってきたのは大陸出身の外省人たちだった。約60万人の軍人を含め、200万人といわれる外省人を中心に国民党は大陸反攻、中国大陸統一と故郷帰還への思いを抱き続けてきたのである。後継問題は宋美齢か蒋経国かといった王朝内の争いではなかった。それは国民党の存在意義そのものにかかわる争いだった。美麗を中心とする外省人保守派は李登輝選出回避の働きかけをしたといわれている。しかし1988年1月27日、国民党中央常務委員会は台湾出身の李登輝を国民党主席代行に選出したのである。台湾ではこの政治的攻防を「宮廷クーデターの失敗」、「小さな無血革命」とも呼んだ。台湾政治はすでに新しい時代へと踏み出していた。台湾国内やアメリカからの民主化要求の強い圧力もあり、野党民主党の結成を容認したり、1987年には1949年以来続いた戒厳令を解除するなど民主化に先鞭をつけていた。

【戦争・内戦・紛争】
2011.10.26: インドネシア 多民族国家という宿命 2/3~紛争の火種
2011.08.22: 実録アヘン戦争 4/4 ~そして戦争へ
2011.03.24: ガンダム1年戦争 ~新兵器 3/4
2010.07.16: ドイツの傑作兵器・駄作兵器
2010.05.26: インド対パキスタン
2010.03.16: イランの核問題
2009.06.05: 現代ドイツ史入門
2009.05.05: 民族浄化を裁く ~ボスニア
2009.01.05: ユーゴスラヴィア現代史
2008.10.21: 東インド会社とアジアの海2
2008.10.20: 東インド会社とアジアの海





宋家三姉妹は、靄齢(アイレイ)、慶齢(ケイレイ)、美齢(ビレイ)という日本語読みに何の意味があるのかわからないが便宜的に日本人はそう呼んでいるようだ。1897年に3人目の美齢が生まれたが、それから半世紀、中国の激動を生き抜いた3人の姉妹はその際立った個性によって人々に記憶されることになる。「昔、中国に三人の姉妹がいた。ひとりは金を愛し、ひとりは権力を愛し、ひとりは中国を愛した・・・」

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姉妹の父、宋耀如(Song Yaoru)
1863年、海南島の商人の家に生まれた。一族の多くはアメリカに渡り、東海岸の都市の片隅で中国産の品々を商う華僑となっていた。耀如も9歳の時アメリカに渡って中国産の茶と絹の商取引の複雑な実務を3年間、13歳の頃、耀如はボストン港から南部に向かって脱走、船員に捕らえられるが、船長のチャールズ・ジョーンズの計らいでキリスト教の教えを受けた。1886年、耀如は上海に帰国し、南メソジスト教会の牧師として伝道に努めた。三男三女に恵まれ、このころから伝道よりも企業経営に傾いていった。製粉・製麺工場に投資、聖書の印刷・出版で成功を収め、財閥への道を駆け上がっていく。幼い姉妹たちの前に父と同年配の男が現れた。男は中国の現状を憂い変革の必要性を熱っぽく説いた。宋家を中国の政治と革命のるつぼに引き込むことになる男孫文である。

宋家の子供たちは全員アメリカに留学していた。ある日、教授が靄齢を呼び止め、君も立派なアメリカ市民になったと彼女をほめた。すると靄齢はクラスメイトの面前で、「私はアメリカ人ではなく中国人であり、それを誇りに思っている」と激しい口調で反論した。3人の中でも慶齢はつねに中国の政治情勢に関心を寄せていた。父の手紙は最新の中国の動きを伝え、彼女は早くから孫文の思想や中国革命の前途に思いをめぐらせてえいた。1911年10月の辛亥革命の成功を知らせる手紙を受け取った時、慶齢は椅子に上って壁にかけてあった清朝の龍の国旗を引き剥がし、父が送ってくれた共和国の新しい五色の旗を掲げた。驚いて見守るクラスメートたちの前で、龍の旗を踏みつけると彼女は叫んだ。
「龍よ去れ、共和国旗を掲げよ!」

かっこいいねー。「龍よ去れ、共和国旗を掲げよ」なんて台詞言える女・・・現実世界で、見たことないなぁ。俺は非現実の世界に逃避している?ちなみにやぶられて踏みつけられた龍の国旗と彼女が掲げた共和国旗。いやー、いずれも現在の中国と違いまちゅね。俺が生きている間に少なくとも1回は中国の国旗が変わることになるだろうと予言する。
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1912年1月、孫文は南京で中華民国の臨時大統領に就任した。三世紀にわたった清朝の支配はここに終止符を打たれた。アジアで最初の共和国が誕生したのである。孫文が掲げる三民主義とは、満州異民族支配の妥当を目指す「民族」、君主制を妥当した民主制を目指す「民主」、富の公平な分配を目指す「民」からなっていた。盛大な歓呼の声で迎えられる孫文のかたわらには宋耀如と靄齢の姿もあった。靄齢は父の勧めで孫文の秘書となっていた。

慶齢の結婚 孫文49歳、慶齢22歳
「恋愛ではありませんでした。遠くからの英雄崇拝でした。彼のために働いたのはロマンティックな娘の考えでした。でもそれは良い考えでした。私は中国を救うのを助けたかったのです。孫博士はそれができるただ一人の人でした。」

靄齢の結婚 孔祥熙は孔子直系の子孫を名乗る財閥の御曹司。

【アジア・中国文化・思想圏】
2011.08.11: 金賢姫全告白 いま、女として6/6 ~中国とマカオの思い出
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2010.02.19: マラッカ(マレーシア)旅行 ~KL、マラッカ観光編
2009.07.22: タイ旅行 農業と宗教vs金融と資本主義
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2009.07.08: 世界一レベルの低いDerivatives Investorが生まれた理由
2009.07.07: 世界一レベルの低いDerivatives Investor
2008.05.13: 語録 ~中国のお友達





前3000年紀から前500年頃の近東地域が古代オリエントと呼ばれている。この地域は現在わかっている限りでは人類最初の高度な文明の発祥の地であり、様々な神話が残されている。なかでもヒッタイト人のクマルビ神話はウラノスからクロノスを経てゼウスへと移り行くギリシアの王位簒奪神話と非常によく似ている。ヒッタイトは小アジアのアナトリア高原で前2000年紀に栄えた民族で、その言葉はインド=ヨーロッパ語族の中で最も古い言語である。ヒッタイトの神話は、現在のシリア北部にミタンニ王国を築いていたフリ人という民族の神話から多くの影響を受けた。クマルビ神話もヒッタイト語で伝わっているが、その昔はフリ人の神話であった。クマルビ神話と総称されるものは二種類の粘土板文書からなる。「天上の覇権」と「ウルリクムミの歌」という物語である。オリエントとギリシア神話には明白な共通点がある。戦いという暴力的な方法で前の世代から権力を奪う点だけではない。世代ごとにも対応関係が見出され、第一世代として対応するのはアヌとウラヌスで、どちらも「天」を意味する。次にクマルビとクロノスが対応する。クマルビがアヌの精液を飲み込んだように、クロノスも自分の子供たちを呑みこんだ。クマルビがアヌを去勢し、性器の一部から神が生まれるという点は、クロノスが鎌で切り取った父親ウラノスの陰部が海に落ちてアプロディテが誕生するのと酷似している。そしてヒッタイトの神話で最終的な勝利者になった天候神には、ゼウスが対応する。天候神と同じようにゼウスも雨を降らせ、雷を轟かせて天候を支配する神である。天候神もやはり新しく生まれたウルリクムミを破らなければならなかった。二つの地域で神話が似ている場合、独立発生説と伝播説がある。ギリシアと近東の間には非常に早い時期から交流があった。前14世紀から13世紀ごろに接触し、前850年もしくは前800年以降にも交流があった。神統記に記したヘシオドスが生きていたのはおそらく前750年ごろから前680年ごろであろうと推測される。ギリシアの王位簒奪神話がオリエントのそれと最も大きく異なるのはガイア(大地)が何度も現れる点にある。農耕民族であったギリシア人にとって、大地がきわめて大きな意味を担っていたからと思われる。


パンドラの箱

多くの予期せぬ問題を作り出すもの、あるいは、災いが生じないように封印しておくべきものというような意味で使われる。この成句は、人類最初の女性であるパンドラがふたを開いたために不幸が世界中に飛び散ったというギリシア神話にさかのぼる。しかし『神統記』は神々が女性を創造し、欺瞞に満ちた贈物として人間に与えたと述べるにとどまり、パンドラの名はこの作品では明示されていない。人類最初の女性にすべての(pantes)神々がさまざまな贈物(dora)を授けたので彼女がパンドラ(Pandora)と命名されたことや「パンドラの箱」の由来となったエピソードが披露されるのは同じ詩人の『仕事と日』である。ただしヘシオドスではパンドラが開封したのは甕であったが、オランダの人文学者エラスムスが「三千の格言」(1508年)で甕を箱に変えたことからこの成句が生まれた。「仕事と日」によると将来を見通す力のある賢いプロメテウスは「ゼウスの贈物を一切受け取ってはならない」とあらかじめ弟に忠告していた。しかし後知恵しか浮かばないエピメテウスはパンドラの美しさに幻惑され彼女を家に迎え入れた。家にはなぜか大きな甕があった。ある日パンドラがその甕のふたを開くと、甕に入っていたものがたちまち世界中に飛び散り、あわててふたを閉めると、甕の中に「希望」だけが残った。それまでは煩いも苦しい労働も病苦もなかったのに、人類の最初の女性の無思慮な行為のせいで、それ以降は無数の災厄がこの世に蔓延するようになったという。火に象徴される文明が人間にもたらす恩恵と、それに対して人間が支払わねばならない代償もここには示されている。


火から核エネルギーへ。時代は移り変われども、人間の欲はコントロールできる領域を少し越えた所で収束する傾向があるようだ。




一応、読んでみたが・・・久しぶりにほとんど折り目なし(関心のページなし)の本だった。やっぱ、もらいものの本はダメだな。

短編小説の集まり、タイトルとそれに対する俺のまとめでも書いておくか。

報復相場 株の営業
女の兇器 保険金詐欺
年下の男 社内不倫の末
向日葵は咲いた 催眠術
死に際の顔 相続
乳色の闇 不正企業
海の見える風景 隣人問題

なんだかねぇ・・・、何が報復相場ってタイトルだけに・・・、株の話でもなければ企業小説としても弱い。
この作家の経歴を見ると・・・、組合の人間か。そうするとねぇ、多少美化が入っていたとしても企業経営者である社長自身が書いた本の方が面白いと思うわけ。なーんにも知らない組合の人間が、アウトサイダーな立場で、想像と妄想で、書くよりはさ。

しかもこの数、年間4冊以上書いてるんじゃないの? 尾上縫とか興味あるけど、このペースで書いてるってことは入念な取材の基に書かれたとは思えないな。東洋信金の前川朝美氏が書く「女帝」とかだったら買ってでも読んでみたいところだねぇ。この人の本は・・・、もらったら読むくらいだな。

報復相場 (角川文庫)報復相場 (角川文庫)
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【フィクション系読み物】
2011.11.07: ノーベル文学賞:村上春樹氏は3番手
2011.09.13: シグルイ 山口貴由2/2 ~伊良子清玄
2011.07.05: 民宿雪国
2011.03.18: ガンダム1年戦争 ~国家体制 1/4
2010.08.23: 燃えよ剣
2010.03.12: 探偵ガリレオ 東野圭吾
2009.11.23: 沈まぬ太陽
2008.08.20: 久しぶりに小説を
2008.05.05: 懐かしの民明書房刊






世界の始まりと人間の誕生

世界の始まりの神話としては、旧約聖書の「創世記」が名高い。キリスト教とユダヤ教の聖典である旧約聖書によれば、超越的な神ヤハウェの「光あれ」という言葉とともにこの世界が創造された。けれどもギリシアでは、世界は唯一絶対の神によって創造されたのではない。ギリシアには宇宙は世界の始まりい関する神話がいくつもあったが、ここでは最もよく知られているヘシオドスの『神統記』の系譜的な神話を取り上げることにしよう。

最初に「カオス」が生じ、次に「ガイア」と「タルタロス」と「エロス」が生じた。この世界は神によって創造されたのではなく、いつのことかはわからないが、あるとき突然生じたのである。ヘシオドスのというカオスとは、ちょうど欠伸をして大きく口を開けたときのような「巨大な裂け目」を意味する。カオスに続いて、ガイアと呼ばれる大地と大地の深奥にある奈落の底とも言うべきタルタロス、不死なる神々のなかでも最も美しいエロスである。カオスからまず「エレボス(闇)」と「ニュクス(夜)」が生じ、らにエレボスとニュクスの交わりから「アイテル(天空の上層)」と「ヘメラ(昼)」が生まれる。カオスから発生した3つのもののうち、実質的に生成に関与するのはガイアだけである。対照的にタルタロスとエロスのほうは生成をそのものを行うわけではない。一種の媒介のような役割を果し、神と人間の理性や思慮を意のままに操る強力な結合原理として作用する。時代が下がってからは無邪気な幼児の姿でイメージされるようになった。しかし神統記のエロスには擬人化の兆候すら認められない。エロス(Eros)は英語のeroticの語源であるため、もっぱら性愛の快楽に関するものであるかのように誤解されがちであるが、古代ギリシアのエロスはそのような狭い意味に閉じこめられてはいない。むしろ、生産や生殖を促す肯定的な強力な結合原理であり、輝く生命力の源のような抽象的な存在である。

第一世代ティタン神族

大地はまず自力で「ウラノス(天空)」と山々と「ポントス(海)」を生んだ。ガイアは生殖行為によって次々に神々を生み出していく。ガイアとウラノスの交わりから6柱の男性神と6柱の女性神が生まれた。この12柱の神々はティタン神族と呼ばれる。英語ではTitanとなり、巨大な怪力のという意味である。ティタン神族に続いて、キュクロプスとヘカトンケイルたちが生まれた。神格ではなくいずれも三人組の巨人たちである。キュクロは丸い、オプスは単数の目という意味でキュクロプスとは単眼巨人である。そしてヘカトンは100、ケイルは手を意味するので百手族である。しかし異型の子らであるこの二組の巨人たちは父親のウラノスに嫌われ、大地の下方に埋められてしまった

ガイアはウラノスのこのあまりにも無慈悲な仕打ちに怒り、復讐を計画した。鋼鉄の鎌を作り、12柱のティタン神族に向かって「誰かこの鎌で父親を襲うものはいないか」と呼びかけたのである。皆が押し黙り、名乗りを上げる者はいなかった。しかし、一番年下のクロノスだけが勇敢にもこの役目を引き受けようと立ち上がった。やがて夜になり、天空が大地を求めておおいかぶさったとき、母の傍らでひそかに待ち伏せていたクロノスは鋭い鎌で父親の陰部を切り取った。生殖器から滴り落ちた血を大地ガイアが受け止めた。やがて月が満ちると大地に落ちた血のしずくからは「エリニュス(復讐の女神)たち」と「ギガス」(巨人族)、「メリアイ」(トネリコの精)が生まれた。一方、クロノスが背後に投げ捨てたウラノスの生殖器は海に落ちて海面を漂い、その白い泡から美しい女神が生まれた。泡はギリシア語ではアプロス(Aphros)という。それゆえこの美しい女神はアプロディテと呼ばれた。

ギリシア神話の大テーマ 親子対決 早速来ましたね!息子による父親追放と無慈悲な父。これはギリシア神話のモチーフ。よくある展開だが、これを息子と読むというのはお洒落だろう? 世代交代、老いによる衰えへの恐れを表現しようとしているのだろうか。

クロノス(ラテン語でサトゥルヌス)は姉のレアと結婚して子供が生まれるたびに次々とわが子を呑み込んでいった。というのは両親のガイアとウラノスから一つの予言を聞いていたからである。それは彼が鎌で父を傷つけることによって権力を奪い取ったように、クロノス自身もわが子に滅ぼされるであろうという予言であった。レアは一計を案じ、赤ん坊をクレタ島の洞穴の中で出産すると、石を産着でくるみ、それを新生児だといつわって夫に差し出した。クロノスは策略に気付かないまますっかり安心していたがその間に赤ん坊のほうはすくすくと育っていた。この赤ん坊が後のギリシア神話の最高神となるゼウスである。父クロノスが嚥下していた兄と姉たちを策略を用いて吐き出させた。解放された兄と姉はゼウスへの感謝のしるしとして、弟のゼウスに雷を与えた。雷はゼウスの比類なき武器となり、天界の覇者としての権力の象徴にもなった。

ゼウス率いるオリュンポス神族は力を合わせてティタン神族と覇を競った。この戦闘はティタノマキアと呼ばれる。両者の激突は10年に及びながらもなお決着つかなかった。膠着状態を打破するためにゼウスは、ガイアの忠告に従って、百腕巨人のヘカトンケイルたちを大地の底から解放し、神々の食べ物であるアンブロシアを彼らに与えて力を回復させた。100本の手に大きな岩をつかんでティタン神族に投げつけた。ティタン神族をタルタロスに閉じ込め、ヘカトンケイルたちをその見張り番につけた。ティタノマキアに続いて怪物テュポン、ガイアがタルタロスと交わって生み出した凶暴な怪物であり、その肩には蛇の姿をした首が100もついており、燃える火を吐き、恐ろしい獣のような声を出す。ゼウスはテュポンをいち早く見つけると雷で攻撃した。そして死闘を繰り広げた挙句、その勝利を確かなものにした。


ギリシャ神話のモティーフは父と息子の対決。ウラノスがクロノスに、クロノスがゼウスに。どうだろう? 成長する息子に色々なことで追いつかれ、抜かれ、負けることは認めたくないか? 私の父は、認められないのだろう。よく「30年余計に生きているんだから」という枕詞とともに、合理的に説明できないような価値観を私に言うことがあるのが、その傾向として見られる。しかしだよ・・・、俺は息子に負けたいぞ。もちろん男としてショックだがな。
rao-final.jpg
ま、まさか…この俺が負けるのか…みたいな心理。だが、
「み・・・・・・見せてくれ」
「このラオウを倒した男の顔を」
「フ・・・フフ」
「見事だ 弟よ!!」
「わが生涯に一片の悔いなし!!」
って思わず笑っちゃうのよ。その気持が非常によくわかる。

映像がどうしても見つからないのだが、千代の富士 貴花田 覚えている人居ない? 貴花田に負けた時、千代が笑うんだわ。ちょっと泣ける映像だぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=90IdEuZvhJo&feature=mfu_in_order&list=UL
これの8:30前後、この動画だとよく映ってないんだよなぁ…関係ないけど6:20あたりのスーパーダイブ、マゲを落とした長髪貴花田はなかなか良い男ね。

十両の時代から、
http://www.youtube.com/watch?v=gURODdy7osQ
そして貴花田のお父様の貴乃花ともやってるんだからねぇ。千代は、ほとんど親父気分でしょう。

これもちょっと今一つな内容だったのだが・・・

高僧 秘められた宗門パワー
家元 茶の湯に伝わる侘びの心と権威
花街衆 遊と美の世界の舞台裏
御所はん 菊の御紋の向こう側
室町の商人 生き残りをかける美の裏方
共産党 古都で育った革新の秘密

なんて目次だから、おもしろそうでしょう?


茶の門下生は圧倒的に女性が多いが、流儀の将来を担う「家元の内弟子」は伝統的な男社会。異例の女性内弟子の誕生だった。諏訪美佐子さん(32歳)は武者小路千家官休庵の門をくぐった。
「あう茶会で、何気なく渡された道具の重さに『修行に男女の隔てはない』と実感しました。流儀の頂点である家元のそばで勉強していることへの重い責任も感じます。でも、故郷では出合えない、本物の世界がここにある。今は経験を積み、視野を広げたい。結婚とか、将来のことは考えられません。」

諏訪先生、私から一言、一般に男の社会では、結婚とかいう法律上のイベントが、仕事、つまり自らの”道”に影響を及ぼすと考える人はいません

「ともすれば流儀を普及させるための『型』が偏重され、今の茶人は価値判断ができなくなりつつある」と千宗守家元は懸念し、「例えば、この茶碗。茶を立てる道具として、使い勝手が素晴らしい。高価でなくても、型にはまっていなくても、立派な茶道具になるのです。

Excuse me for going before you.(お先にちょうだい致します)
1993年裏千家茶道会館の茶室は全国の社中から集まった着物姿の門弟40人でひしめいていた。通のけいこ風景。だが日本語は一切禁止。講師7人はベテランぞろいだが、日本人は一人もいない。

花街とは、もとは遊女屋などが軒を並べた色街のことで、祇園、上七軒、先斗町、宮川町、祇園東の五花街がある。他の花街と違い、ここでは「芸者」ではなく「芸妓」「舞妓」が芸を披露する。綺麗どころがコピーを欲しがる名簿とは、市川団十郎演じる歌舞伎「助六」に出る「旦那衆」の出番表である。江戸時代から市川家とのつながりで、この歌舞伎には「吉原の旦那衆」役として約20人の今日の紳士たちが出演し、自慢の浄瑠璃(河東節)を聞かせる。

京都は花街で少しは損をしてきた部分もあるだろう。いわば”必要悪”として。花街は女性からの搾取の歴史を重ねてきたからね。愛らしいチョウのような芸舞妓に見せられ、遊びの達人たちが、スリリングな色事を楽しんだのが花街の歴史。娼婦もいた。そんな「色」」の部分が、ある意味では花街を支えてきた。花街は芸と色が車の両輪のようにして時代を走ってきた場所だった。一夜を共にするのではなく、客は芸舞妓の着替える衣ずれの音を聞いて京情緒を楽しんだが、1958年の売春防止法で座敷にふとんを備えることが禁止され、酔って眠った客に舞妓が優しく布団をかけてやる光景も今はない。色の部分は花街の表舞台から消え、陰画となった。しかし、色事の美学は今も厳然と残っている。日本人はまるで弁当を持参するように、どこにでも性を感じさせる産業を必要とする民族だからね。

千切屋の三家、「千治」「千總」「千吉」、千吉は資本金1億円、従業員109人の呉服製造卸会社。その三カ条
家業に専念せよ、使用人と一体になり店をもり立てよ、 あっあれ? 3つ目は?? って感じなのよ、この本・・・。んもぅ。

京都では共産党員の6,7割が民主青年同盟(民青)を経て入党する。民青はおおむね15-25歳を対象とし「共産党の導きを受ける」青年団体。かつて革新府政時代には一つの学校に同盟員が4,50人いた。

なつかしー、ミンセー。なんか怪しいんだよね、別に恨みはねぇけどさ。

全国の税務署がごった返す日が年に一度ある。3月12日。京都の中京税務署では、職員十数人が憂鬱そうな緊張気味の表情で待機していた。午後3時過ぎ、四条烏丸からデモ行進してきた約500人の業者が「集団申告」の長い列を作った。民商は商業サービス業では従業員4人以下、建設製造業では9人以下の、いわゆる零細企業が対象。会員の政党支持は自由だが、共産党は共闘して要求を実現する大衆組織と位置づける。集団申告も業者の利益を守る運動として支援している。

「自分がウソばかりいうのでスローガンに乗らない。物を買う時、裏から見るような気性でダメなところを見抜くから、自、社は受け入れない。京をリードする三者一僧(医、学、芸者と僧)なんて、政治家に操縦できる相手やないしね」

蜷川多選批判が集中した時、故大西良慶清水寺貫主に相談に行った。「長い」という批判には「ええものは長持ちするの」。「赤い」に対しては「赤かろうが白かろうが、ええもんはええ」。「高齢」批判には「だれでも年はいく」。「独裁」には「(知事がトップに立って権限をふるうことは)地方自治法に書いてある」。

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【フィクサー・陰の存在】
2011.06.28: 青雲の大和 ~鎌足の謀略 2/3
2011.01.06: イトマン・住銀事件 ~主役のお二人
2010.10.15: 道路の権力2
2010.07.27: 闇権力の執行人 ~逮捕と疑惑闇権力の執行人 ~逮捕と疑惑 
2010.04.08: 野中広務 差別と権力 ~伝説の男
2010.03.03: テロ・マネー ~暗躍する死の商人
2010.01.26: 黒幕―昭和闇の支配者
2009.03.23: 闇将軍
2008.07.08: Richest Hedge Fund Managers

ギリシア神話の典拠

ギリシア神話を題材とする最も重要な詩歌はホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』である。この二篇の口承叙事詩はトロイア伝説を扱っている。ホメロスは前8世紀頃の盲目の詩人と伝えられ、『イリアス』と『オデュッセイア』が文字に記されたのは、前6世紀頃のことであろうと推測されている。

父と息子は、ここの事実を知り、二人で感嘆の「うーん」を発した。口承伝播から3000年の時を超えたギリシア神話、神話そのものが神なる存在だと思わないか?

第一章で扱う創世神話の典拠は、前8世紀から前7世紀にかけて生きていたと推測される詩人ヘシオドスの『神統記』である。彼の『仕事の日』という教訓叙事詩にも神話への言及が見出される。

神話とは言え、教訓叙事詩というところが宗教が香る。旧約聖書の創世記の成り立ちも比較してみたら面白いだろう。

オリュンポスの神々のさまざまな逸話は『ホメロス風賛歌』と総称される詩歌でも語られた。ホメロスの叙事詩と同じ韻律が用いられている。古代においてはホメロスがその作者と見なされたが、実際には現存する33篇の制作年代は前7世紀から前4世紀にわたっていて、作者が複数であることは明らかである。ギリシア神話は前7世紀から前6世紀に転換期を迎え、新しい文学ジャンルの台頭とともにさらなる変容をとげた。その背後には、富の増大や、植民活動の活発化、あるいは文字使用の普及など、政治・経済・社会・文化の大きな変化があった。ポリス(都市国家)という新たな政治形態の成立過程で、ステシコロス(前632頃-前556頃)やピンダロス(前518頃-前438頃)などの詩人たちが抒情詩という新しい表現スタイルに新しい時代精神を盛り込むために伝統的な神話に独自の改変を加えていった。前5世紀になるとアテナイで悲劇が最盛期を迎え、アイスキュロス(前525-前456)やソポクレス(前496-前406)、エウリピデス(前487-前406頃)などの悲劇詩人たちが神話の標準的な話形を確立した。ギリシア悲劇は数多く創作されたが、現存作品はサテュロス劇を含めて33篇だけで、そのうちの16篇の主題はトロイア伝説から採られている。この時期には散文でも神話が記録されるようになり、「歴史の父」ヘロドトス(前485-430)の『歴史』はギリシアやペルシア、エジプトの伝承を数多く採取している。前323年にアレクサンドロス大王が歿してヘレニズム時代に入ってからも、ギリシア神話はさらに変貌し続けた。アルゴ船の冒険談はホメロス以前から語り継がれていた古い伝説の一つであるが、この時代にロドスのアポロニオス(前295-215頃)がこれを『アルゴナウティカ』の主題として歌った。また誤ってアポロドロス(前180-110頃)に帰されているが、明らかにもっと後に編纂された『ギリシア神話』は、後代に神話伝説を伝える上で有益な典拠となった。以上の典拠はギリシア語で記されているが、後世への影響という点ではうしろ、ギリシア文化を継承しながらラテン語で詩作をしたローマの詩人たちの方が重要である。古典の神話が後世の西欧文化に浸透していくうえで、特にウェルギリウス(前70-19)の『アエネイス』とオウィディウス(前43-後17頃)の『変身物語』の影響力は圧倒的に大きかった。

神話の伝承者たち・・・。

オリュンポス12神

2.ヘラ(Hera) ローマでは、ユノ(Juno) 英語のJuneの語源。ゼウスの姉であり、妻。婚姻の守護神。
3.デメテル(Demeter) ローマでは、ケレス(Ceres) シリアル(Cereal)の語源。農耕や穀物を守護する女神。麦の穂がその表象。
4.ポセイドン(Poseidon) ラテン語ではネプトゥヌス(Neptunus)で英語ではNeptune。海・地震・馬の神。

クロノスとレアから生まれ、同じ両親からはヘスティアとハデスも生まれたが、彼らはオリュンポス12神には含まれない。なぜならヘスティアはかまどを守る女神として崇められ、どの家庭にもその座があったためである。ハデスは地下の冥界を領分にすることになったため、オリュンポスの住民からは除外される。以上の四柱の神々以外はすべてゼウスの子どもである。

正妻ヘラとの子ども

5.アレス(Ares) ラテン名マルス(Mars) 英語のMarchの語源。マルスの祭りが3月に行われたことに由来する。戦争の神。ローマ建国の祖である双子のロムルスとレムスの父として、ローマでは比較的重要な地位を得たが、ギリシャではあまり人気がなく、脇役にとどまる。

ヘラ以外の女神や女性とゼウスの子ども

6.アプロディテ(Aphrodite) ローマでは、ウェヌス(Venus) ホメロスではゼウスと女神ディオネの娘とされるが、海に投げられた男根の泡からという一風変わった誕生神話のほうが一般に流布している。
7.ヘパイストス(Hephaistos) ラテン名はウルカヌス(Vulcanus) volcanoの語源。妻のアプロディテをアレスに寝取られた鍛冶の神。ゼウスとヘラの子供という伝承もあるが、ゼウスに対抗してヘラが単独で産んだともいわれる。
8.アテナ(Athena) ラテン語でMinerva、戦闘女神、陶芸や機織りなどの工芸を庇護する神。オリーブの木とふくろう。
9.ディオニュソス(Dionysos) ラテン語で、バックス(Bacchus)。バッコス(Bacchos)の異名を持つ葡萄酒の神。王女セメレの子でゼウスの太腿から生まれた。図像では葡萄や木蔦、ヤギ、イルカ、ヘビなどがディオニュソスを表彰する。
10.アポロン(Apollon) ラテン語でアポロ(Apollo) レトの子 姉のアルテミスの助けを借りて直後に生まれた。若く清冽なイメージの青年神で、音楽や詩歌など芸術全般や理性、文化を守る神。太陽神ともみなされた。ダプネへの悲恋から月桂樹がアポロンの聖木。
11.アルテミス(Artemis) ローマではディアナ(Diana)。純潔を尊ぶ処女神、安産、狩猟の女神。古代の彫刻ではたいてい弓矢を手にしている。後世の絵画のディアナの額にはしばしば三日月が輝いている。
12.ヘルメス(Hermes) ラテン語でメルクリウス(Mercurius)、Mercury,Merchantと語源は同じで、商売の守護神でもある。天空を支える神アトラスの娘マイアの子。図像では旅行者を示す帽子とマントそして有翼のサンダルを身につけ、二匹の蛇の巻きついた特徴のある杖を手にしている。

信長は、つい二年前、飄然と美濃から京にあらわれた。将軍足利義昭をかついで、意気揚々たる上洛であった。そのころの宗易はまだ信長をよく知らなかった。-どうせうつけと評判の田舎者。すぐに消えるであろう。高をくくっていた。しかし、信長には野分か竜巻のような勢いがあり、たちまちのうちに畿内を席捲して、三好三人衆を駆逐してしまった。宗易をはじめ、堺衆は阿波の三好一族とむすびつきが深かった。そのため、信長から譴責された。矢銭二万貫。三好三人衆を支援した償いとしてそれだけ払えというとてつもない要求が、堺の町に突きつけられたのである。しかも、町の警護に雇っていた傭兵達を解散させ、濠を埋め、柵を取り払え、との通達であった。会合衆のほとんどは銭を払うのに反対だった。宗易も反対した。しかし、抗っても、どうにもならなかった。減免を願って岐阜まで行った十人は、牢に入れられ、何人かは首だけになって堺に帰ってきた。これ以上もたもたしていると、町を焼かれてしまうだろう。

-なんと。命の根の太い男なのだろう。あらためて、そう驚かずにいられない。ただそこにそうして長くなっているだけなのに、自分一人が天地の王者でもあるように泰然としている。何かに対して畏れるということを、まるで知らぬげだ。若い頃はそれがとてつもない頼もしさに見えた。長年つれそった今は、いくばくかの傲慢さを感じている。天下広しといえど、利休ほどあふれるばかりの自信にみちた男はざらにいないだろう。宗恩は、傲慢な男がけっして嫌いではない。秀でた男とは、そうした生き物だと思う。おのが道をつらぬこうとすれば、男ははち切れんばかりの自負をもたなければならない。利休は飛びぬけてするどい審美眼と奇智をそなえ、茶の湯者として天下一の声望と富を得ている。すこし鼻がのびて天狗になるくらいはしかたない。ただ、できることなら、傲慢な中にも、妻をいつくしむ心ばせをもってほしい。もっとよく妻を見ていてほしい-。そう望むのは女として、いたって自然な情ではないか。

夫の与四郎は、宗易などと号して、茶の湯にうつつをぬかしている。夫には女が何人か居るが、ちかごろ熱をあげているのは、能楽の小鼓師の若後家である。名を宗恩という。三太夫が若死にしたのをいいことに、その女に家を持たせ、足繁く通っている。-女くらい。なんでもないと、自分に言い聞かせて、たえは褥から身をおこした。苗字を田中、屋号を千と称するこの家に嫁いで10年余り。家業の干し魚の商いも納屋貸し業もいたって順調で、暮らし向きになんの不自由もない。堺の大店の主人は、たいてい外に妾の一人や二人は囲っている。そのことに文句を言うつもりはない。-ただ・・・。あの夫は、愛し方が尋常ではない。いったん気に入ったとなったら道具でも女でも、骨の髄までとことんしゃぶり尽くすように愛でずにおかないのが、夫の性癖である。それが耐えられない
 たえは、目の端で、宗恩を観察した。どれくらい、夫にかまってもらっているのだろうか。框にすわった顔に、肌つやと張りがあった。金と力のある男に言い寄られ、求められていることが、自身となっているに違いない。夫の宗易は、あれでなかなか男前だし、甲斐性は人並み以上にある。-どうせわたしは・・・。夫に必要とされていない女だ。ひがむ気持ちが生まれて、たえは、ぎゅっと眼を閉じた。眼を開けるとおちょうが一緒だった。この女を見るのは何年ぶりだろう。白い肌にやはり面長で、どこか宗恩と似たところがある。夫はこういう狐みたいな顔の女が好みなのだ。だったら、なぜ丸側の私を嫁にしたのか

三好一族は、四国の阿波を地盤としているが、長慶はいま摂津越水城にいる。西国街道を押さえる重要な拠点で三好一族にとっては畿内をうかがう出城でもある。長慶はまだ19の若さながら、いま畿内で一番力のある男だ。元服してすぐ、室町幕府の管領をつとめる細川晴元の被官となったが、さきごろ将軍家領地代官職のことで、細川家と一悶着あった。長慶は2500の軍勢を率いて堂々と京に上った。驚いた細川晴元は、長慶の言いなりになった。度胸も知略もある男だ。紹鷗としては、できるだけ関係を深めておきたい。

長慶19歳ってことは1541年か。大分時代が戻ってきたな。


先だって紹鷗の屋敷に行ったとき、書院で茶杓を見せられた。「わしが削った。どうだ」 書院の茶の湯ならば、茶杓は象牙やべっこう、ときには金、銀をつかって豪奢に作る。ちかごろ隆盛の侘び茶人は質素な竹を好む。侘び茶をはじめた村田珠光は、節のない竹をつかって抹茶をすくう櫂先の幅が広い茶杓を削っている。紹鷗の茶杓は細めの櫂先から下端の切止ちかくまですっきり瀟洒に削っておきながら、下端のちかくに節が残してあった。わざとそこに節が来るように竹を切って、削ったのだ。洒落てはいるが、作為が感じられて嫌味だった。出来の良し悪しをたずねられた与四郎は、うなずかずに答えた。「悪くありません」 紹鷗が眉をひそめた。「ふん。おまえなら、もっとおもしろく出来るというのか」 与四郎は帰って茶杓の竹を選んだ。茶杓の真ん中よりわずかに上に節がくるように竹を切って、丹念に削った。その茶杓をもって、また紹鷗の屋敷を訪ねた。茶杓をみて紹鷗がうなった。しばらく声がなかった。珠光の時代には竹の節は醜い邪魔なものとして切り捨てられていた。紹鷗はそれを端ちかくにつかうことで侘びをかもしだした。与四郎は大胆にも節を真ん中よりすこし上にもってくることで、草庵風の侘びに毅然とした品格を与えた。

女はおもしろい。音曲に合わせて舞わせれば華やかだし、ともに閨に入れば悦楽の仙境に遊べる。しかし-。それだけのことだ。女は、美しい。美しいが、くだらぬ生き物でもある。街の娘にせよ遊び女にせよ、すこし付き合いが深くなるとたいていの女はこころの底が透けて見えてくる。噂好きで、嘘つきで、嫉妬深く、高慢で、計算高い上に、怒りっぽい。

えっっと・・・この作家は・・・男か。いやまぁ、当たらずとも遠からずだが、なんか女に恨みでもあるのかねぇ?

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「そのほう、なぜ、茶の湯を嫌っておる。悪いものではなかろう」
たずねられた黒田官兵衛は、すわりのよい大きな鼻と、ぎろりとした大きな目を秀吉に向けた。
「まず第一は、用心のことにございます。治乱見定め難き今の世におきまして、主客が無刀で狭い席に集まり坐るなど、不用心この上ないことです」
「第二は道具のことにございます。ただ茶を飲むばかりの椀や茶入に、千金の値を払うなど、笑止千万。一文でも余計な銭があれば蔵にたくわえ、有為の者を召抱える時こそ、惜しげなく使うべきでございます。」
「第三は時間にございます。ただ坐して書画を愛で、茶を喫するならばさほどの時間はいりますまい。二刻(4時間)の時間がありましたら、武を練ることも書を学ぶことも、いや、国家百年の経略を練ることもかないましょう。公家ならばともかく、武家がさような遊興に耽れば、いたずらに気がゆるみ、放蕩が習い性となりもうす。いつかは隣国が攻め込んでくること必定」

「わしが茶の湯を嗜むのは、お前のいうた害悪をさしひいても、なお余りある効用があるからだ。ここに茶道具と花がなかったら、周りの者はさだめし気を揉むことであろうな。官兵衛は、いったい何の用で召されたのか。三成あたりは、今頃たいそう気にしておるだろう。何の話をしていたのか、後で同朋衆にたずねるかもしれぬ。道具があって湯が沸いていれば茶の湯の話だ。信じる信じぬはさておいても、人の口には、わしがおまえに、茶の湯を教えていたと伝わる。密議を交わしていたと伝わるのと、どちらがよい


「侘びに身をやつすなどということは立派な家屋敷があっての愉しみ。いつも旅の空にある身には侘び茶がそら寒く感じられます」
宗二の言葉に利休のやわらかな目が、厳しく光った。
「旅で精進しているかと思えば、お前は、すっかり性根を腐らせてしまったようだな」
「いえ、腐らせてはおりませぬ。しかし、侘びの、寂びの、と優雅に唱えられるのは、家もあり、炉も釜もあっての話。すべてが借り物の身では、なんの感興もございません。」 利休がゆっくり首を振った。
「おまえがさように愚かな男だったとはしらなんだ。釜ひとつあれば山科のノ貫(ヘチカン)のように茶の湯はできる。それができぬのは、お前の心が練れておらぬからだ。一物持たずとも、胸中の覚悟と創意があれば、新しい茶の湯が愉しめる。なぜ、それをせぬのか」

わかるなぁ、俺も「地べたに這いつくばって残飯あさって生きていく覚悟できてるよ」って言ってるんだけど、
「そういう暮らし、したことないでしょう? アフリカの飢餓が遠すぎて想像できないように、あなたにとってそれが遠すぎるのではないですか?」


秀吉という男は、貪欲が着物を着て歩いているようなところがある。普通の人間は、骸骨が皮をまとった生き物だが、秀吉は違う。むさぼりのこころが皮をまとい、着物を着ている。だからこそ天下人になれたに違いないが、では、人として、こころの位がどれほどかといえば、けっして高いとはいえまい。欲深くむさぼりの過ぎる男は、たとえ位人臣を極め、天下を掌中にしていようとも、やはり下賤である。

茶室は横に長い平三畳。部材はばらばらにはずせる。黄金の柱を立て、黄金の敷居と鴨居をとりつけ、黄金の壁をはめこみ、黄金の天井をとりつけるだけで、どこでも簡単に組み立てることができる。畳は、どんな赤よりも赤い猩々緋の羅紗。そこにすえた台子皆具の茶道具も、すべて黄金でできている。正面の縁の口に立てた四枚の障子戸も、むろん骨まで黄金で、紙の代わりに薄い紗織りの絹がはってある。その紗もまた、とことんまで赤さをきわめた緋色に染められ、豊臣家の五七の桐紋が、目立たぬようほんのり淡く染め抜いてある。鮮烈な黄金と緋色-。その二つの色だけでできあがった茶の席なのである。ふだん、利休が好む侘びた風情とは対極にある座敷だが、これはこれで、黄金に映えた緋色が、えもいわれぬ静謐さを醸している。「いったいどれぐらいの金がつこうてあるのかな」近衛前久がたずねた。「無垢でございますので、風炉がいちばん重く、ざっと五貫目はございましょう。台子と道具一式にて十五貫目。茶室は、すべて金で作りますと重すぎて運べなくなりますので、檜の板の上に金の延べ板をはってございますが、それでも三貫目はつかっております」 平伏した利休が答えた。


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道具立てをあらためて眺めて三成は首をひねった。
-この茶はあの男の創意か。
古いやり方の書院の茶の湯で、粗野な面桶をつかうなどは、考えられないことだ。足利家の将軍たちは唐ものをありがたがり、華やいだ飾りつけを好んだ。今は簡素な茶室で、鄙めいた道具をつかう侘び茶がもてはやされる。三成の茶も、大きく考えればそのなかにある。自分は利休の風下に立っているのではないか-。いや、ちがう。侘び茶は利休がはじめたわけではない。その前に堺の武野紹鷗ら、何人の茶人がいたと聞いている。利休という男は、まるで自分が茶の湯のすべてを創始したような顔をしているが、そもそもいったいなにを新しくあみ出したというのだ。
-あの男、茶の座敷を狭く暗くしおった。最初に四畳半の茶の席をつくったのは武野紹鷗だったという。四畳半なら十分な広さがある。利休が作る茶室ときたら、三畳、二畳、一畳半。なぜそんな狭い座敷を作るのか、まことに理解に苦しむ。
-広い。と利休の門人たちは賞賛する。天井を斜めにして網代を張り、床の柱を塗り籠めにして奥行きを出す。そんな工夫をいくつもかさねたせいで、たった一畳半の部屋が広く感じられるという。そんな茶の席にこそ、乾坤に対峙するほどの玄妙があるという。狭い部屋はせまいに決まっている。

「譴責するならやはり茶道具のことがよかろう。あの男の儲け方は、目に余る」 玄以がつぶやいた。
「住吉屋と万代(もず)屋が、しびれを切らしております。あの二人は役に立ちます」 茶碗を置いた久阿弥がつぶやいた。
秀吉には堺から呼び寄せた茶の湯者が8人いた。利休、今井宗久、津田宗久、山上宗二、重宗甫、それに住吉屋宗無、万代屋宗安、そして利休の子道安である。八人衆はそれぞれに茶の湯の興の深さをきそったが、利休のしつらえと手前はたしかに誰が見ても異彩をはなっている。 万代屋宗安などは、利休の娘を嫁にもらったにもかかわらず、岳父に敵愾心を燃やしているらしい。
「利を休めとの勅号をいただいておるくせに、道具を高直に商う咎はたしかに重うござる」 三成はつぶやいた。利休という法号は、秀吉が禁中で茶会を開いたとき、特別に正親町(おおぎまち)天皇からくだされたものである。そんな男だけに、扱いは甚だやっかいだ。

「わたしたちはヨウロッパで、大変素晴らしい聖堂や壁画を見てきました。ヴァチカン宮殿の荘厳さは、世界のなにものにも比しがたいと思います」
「まさに神の栄光を伝えるものだ」 ヴァリニャーノの目にシスティーナ礼拝堂に描かれたミケランジェロの壮大な壁画が浮かんだ。あれこそ人類にとって美の極致である。伊東マンショは、
「大阪で、関白殿の城を見て、正直なところ大きさに驚きました。あれならばヨウロッパの建築にひけをとりません。それに、この屋敷にしても、清潔なことはどうでしょう。ヨウロッパの壮大さにかなうはずはありませんが、この島国には優劣をこえた、まったく別の美学があるのではないでしょうか」
「たしかに関白殿の大阪の城は立派な建築だ。ただ、堅牢さはどうだろう。木の柱に土を塗っただけ城では、あまりに貧相ではないかね。これはもしもの話だが、大砲でも打ち込まれたらたちまち崩れてしまうだろう。日本人はなにごとにも度が過ぎているが、私が一番不思議に思うのは茶の湯においてだ。日本人の奇怪さ、珍妙さは茶の湯にもっともよくあらわれている。なぜ日本人はあんな狭苦しい部屋に集まり、ただもそもそと不味い飲み物を飲むのかね。がらくたに過ぎない土くれの焼き物を飽きもせず眺め、お互いに白々しく褒めあうのかね。あんな馬鹿馬鹿しい習慣が世界のどこを見まわしてもないことは、君たちもすでによく理解していることと思う」

「そなたなら、この茶入にいくら支払う」
「正直なところ高い値はつけかねます」
「利休。南蛮人には、大名物紹鷗茄子も形無しだな。」
「はい。この南蛮人は正直者でございましょう。これはただ土をこねて焼いたばかりのもの。それをありがたがるのは、愚か者の数寄者だけでございます。」
「似たような小壺であっても、一文の値打ちもない物も多いと聞きます。いったい何が違うのでしょうか」
茶を司る坊主は、ヨウロッパの宝石商が行うように、千個の類似品のなかからでも、たった一つの伝説の品を選び出す。老人の顔を、ヴァリニャーノはしげしげ見つめた。じつに、不敵な面構えをしている。
それは、わたしが決めることです。わたしの選んだ品に、伝説が生まれます

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この本は利休切腹の日から時代を遡って書いています。

秀吉の使者がつたえた賜死の理由は二つあった。大徳寺山門に安置された利休の像が不敬であること。茶道具を法外な高値で売り、売僧となりはてていること。しかし、木像は山門重層部寄進の礼として大徳寺側が置いたものだし、茶道具のことなど言いがかりもはなはだしい。
 利休の寄進で山門を修築し、重層部に金毛閣ができたのは、一昨年の師走であった。寺側が寄進を謝して、閣内に利休の木像を安置したのは去年のことだと聞いている。それを今になって秀吉が怒っている。先日、聚楽第で秀吉に会ったとき、宗陳は秀吉に怒鳴りつけられた。
「わしは、しょっちゅうあの門を通る。利休の股の下をくぐれというのか」


秀吉の聚楽第には、広い敷地にいくつもの館があるが、池のほとりに建つこの館は三層で、いちばん上にのった摘星楼は、眺望のきく八畳の座敷である。そこに、金箔貼りの床の間がある。金色の壁に淡い墨で、霞の中に立つ富士の山が描いてある。絵師は狩野栄徳。右側だけすそをひろげた大きな富士は、はっとするほど高く、おぼろに霞んでいながら、悠然とすわっている。まことに風韻がよく、品格がある。座敷には三方に窓があり、外の光がよくはいるので、東雲か、あるいは黄昏の薄明かりにながめると、金になんともぬらりとした趣があって富士が浮かび立つ。ふりかえって、窓外の低い空に大きく輝く明星でも浮かんでいれば、まさに星を摘む気分である。天下広しといえども、坐して星を愛でる茶の席など、他にあるまい。利休でさえ、この趣向には感服した。四年前、ここをつくったとき、夜明けに来いと呼んでおいた。折りよく、東山の空が鴇色に染まり、金の床がえもいわれぬ光沢を見せた。
 あのときばかりは傲慢な利休が素直にひれ伏した。あの男は、あのときのほかは、冷ややかな眼でしか、わしを見たことがない。だいたいあの男は、目つきが剣呑で気に喰わぬ。首のかしげ方がさかしらで腹が立つ。黄金の茶室といい、赤楽の茶碗といい、わしが、いささかでも派手なしつらえや道具を愛でると、あの男の眉が、かすかに動く。そのときの顔つきの高慢なことといったら、わしは、生まれてきたことを後悔したほどだ。まこと、ぞっとするほど冷酷、冷徹な眼光で、このわしを見下しおる。「--下賎な好み。」 口にはせぬが、眼がそう語っている。ものごしは慇懃である。あの男、手をついて、頭だけは殊勝にさげておるゆえに、ことさら責めたてることもできぬ。されど、内心わしを侮蔑しておるのは明々白々。こころの根に秘めた驕慢が許しがたい。

「茶の湯はな、人の心を狂わせる魔性の遊芸よ。茶の湯に淫すると、人は我を忘れて、欲と見栄におぼれる。名物道具を手にした者は、奢りたかぶり、自分が偉くなったと勘違いしおる。それが名物の魔力よ。」
 話ながら、秀吉は口が酸っぱくなった。高値を惜しまず、天下の名物道具をいちばん狩り集めているのは、ほかの誰でもない秀吉自信である。金も銀も蔵にうなっている。兵や鉄砲、名刀、名馬、書画はもとより、美姫も官位も、みんな飽きるほど手に入れた。この聚楽第の壮麗さはいうまでもない。-このうえ、何を欲しがれというのだ。二年前、あまりにも金が余って飽きはててしまったので、金五千枚、銀三万枚を積み上げて公家や侍に配った。その日は痛快だったが、翌朝目覚めたときは砂を噛むような寂寥におそわれた。あんなことをするくらいならたとえ土くれでも、名物茶入を愛でていたほうが、よほどこころの養いになる。
「いうておくが、伝来の名物道具というのは、やはりよいものじゃ。手にした者が、こころを研ぎ澄ますならば、茶入の釉にさえ、宇宙深奥の景色を読み取ることができる。見る者に器量がなければ、ただの土くれよ。名物は持つ者を選ぶということだ。」

何か思い出さないか? そう、裸の王様だ。
「見る者に器量がなければ、ただの土くれよ。名物は持つ者を選ぶ」だって。利休は秀吉お抱えの天才詐欺師か。


忠興の父幽斎は、古今伝授はもとより、有職故実、能、音曲、料理など諸道に通じ、いずれも奥義をきわめている。利休とも親交は深いが、幽斎は幽斎なりの茶の湯の道を歩んでいる。
「おまえは、利休から何を学んだ」 
いきなり喉もとに短刀を突きつけられた気がした。
「さて、面妖なおたずね。むろん、茶の湯のこころでございます」 
とりあえず答えたが、そんな答えでよいはずがない。
「ちとはましなことを学んだかと思うたら、まこと、凡愚なせがれであった。ちかごろは知るも知らぬも茶の湯とて、侘びの数奇のふりばかりしたがって、困った世の中よ」 
立ち上がろうとする父を、忠興はにらみつけた。
「お待ちください。それがしが茶の湯を知らぬと仰せか」
「ならば、茶の湯のなにを知っておる」 
そう問われて、忠興は答えに窮した。
「おまえのはただの真似ごとだ。利休にそういわれたことはなかったか」
忠興は喉をつまらせた。たしかに利休にそう指摘されたことがあった-
「忠興殿の茶は、私の茶そのままですから、のちの世には伝わりますまい。数奇とは人と違うことをすること。古田殿などは、わたしの茶と随分違いますから、のちの世に残るでしょう」
新しい創意工夫ができないなら、せめて正当な継承者であろうと忠興は懸命に利休の茶の湯を模倣してきた。
「どんな道でも、上手のなすことを真似るのは、大事と存ずる」
幽斎が首をふった。
「ちがうな。お前は利休に目をくらまされておる。あの男はたしかにたいした男だが、だからといって、おまえが創意を怠ってよいはずがない

良いお父様ですね。大人になった息子への愛のある厳しさ、感じます。

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ギリシア神話は意外なところでわたしたちの身のまわりに息づいている。例えば、晴れた夜空。見上げれば星座は神話の宝庫である。木星は太陽系の中で飛びぬけて大きい惑星である。古代の人々が木星に付けた名は最高神ゼウスであった。その英語ジュピター(Jupiter)は、ゼウスのローマでの名称ユッピテル(Juppiter)に由来する。木星以外の太陽系の惑星や個々の惑星の衛星も、そのほとんどすべてがギリシア神話から命名されている。ただ例外的に天王星(それ自体はウラヌス、ゼウスの祖父)の衛星の名称だけはシェイクスピアとポープの作品の登場人物に由来する。例えば天王星の最大の衛星はディスタニア。その次に大きい衛星はオベロンで、いずれもシェイクスピアの『夏の夜の夢』に登場する妖精の女王と追う名である。そのほかにも『ヴェニスの商人』のポーシャ、『ハムレット』のオフィーリア、『ロミオとジュリエット』のジュリエットなど、シェイクスピア劇でおなじみの名前の衛星によって天王星は取り巻かれている。ギリシア神話に起源を持つ名前が採用されたのは、後代に発見された天体だけではない。宇宙船や探査機で、人類初の有人月面着陸を果たした宇宙船アポロは、周知の通りギリシアの神アポロンにちなむ。金星の地図作成に関わった探査機パイオニア・ヴィーナス号は、金星の名であった美の女神アプロディテ(英語でヴィーナス)に由来する。1990年打ち上げ以来ずっと太陽を極軌道上から観測している探査機ユリシーズ(Ulysses)の名称は、オデュッセウスにさかのぼる。古代ギリシアの叙事詩『オデュッセイア』の主人公オデュッセウスは、ラテン語で方言形のウリクセス(Ulixes)になり、ルネサンス時代になると人文主義者たちがもとのギリシア語に近いウリセス(Ulysses)に変え、さらに17世紀以降、英語に借用されてユリシーズになった。ウリセスと聞けば、昆虫マニアなら、オーストラリアやインドネシアに生息するオオルリアゲハ(学名パピリオ・ウリセス・ウリセス)を連想するだろう。あるいはユリシーズからは20世紀の代表的小説であるジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』(1922年)が想起されるかもしれない。

最初の名刺代わりにしては、いきなりハードなおたくパンチだが、天体、宇宙観測、そして昆虫と男のロマン目白押しだな。男同士の会話のお洒落なアクセサリーとしてギリシア神話を語りましょう。

哲学者プラトン(前427-前347)が音楽を教育課程に入れたように、古代ギリシア文化における音楽の比重は大きく、音楽関係の近代語にもギリシア神話や言葉に由来するものが多い。そもそも英語のmusicやドイツ語のMusikあるいはフランス語のmusiqueなど、近代ヨーロッパ諸語における音楽という言葉は、ギリシア神話の女神ムーサ(Mousa)に由来する。ムーサは九柱からなり、音楽だけではなく詩歌や舞踏、演劇、哲学、歴史、天文など芸術・学問全般をつかさどる女神たちである。そしてムーサの神殿を意味するギリシア語のmouseionがラテン語でmuseumとなり、さらにそれが近代の美術館、博物館になった。最古のオペラは、1594年初演のプロローグ付き一幕物の『ダフネ』である。カメラータに属するオッタヴィオ・リヌッチーニがその台本を書き、ヤコポ・ベーリが曲をつけた。『ダフネ』の基になったのは、ローマの詩人オウィディウス(前43-後17頃)の『変身物語』第一巻の中のエピソードである。ギリシア神話の神アポロンが河の神の娘ダプネに恋心を寄せたが、少女は神の求愛を斥けて懸命に逃げた。ついにダプネが父親の河の神に助けを求めると、彼女の体はたちまち月桂樹に変身した。この話は、多くの彫刻家や画家や詩人たちに芸術的霊感を吹き込んだ。

ほっほぅ、って話だよな。言語学、語源の話はけっこうおもしろいね。歴史と言語の関連を見るようで。

ギリシア神話とは一体何か。これまで多くの定義が提案されてきたが、万人が納得するような定義はまだない。古典学者のなかにはカークのように、「神話に関してすべてに妥当する定義、一枚板の理論、すべての問題と不確実性とに応えうる単一の名答などはあり得ない」と断言する人もいるくらいである。

ギリシア神話 -神々と英雄に出会う (中公新書 (1798))
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「年老いた子連れの母猿が濁流に呑まれたとしよう。泳げないほどの幼い小猿と泳げる小猿とを連れていた。どっちを助ける?」
「小さい方さ、大きいのは泳げるんだろう?」
「ところがね、母猿は迷わず大きい方を助けるんだよ。何故か。母猿にはもう生殖能力がない。小さい子猿は生殖能力を得るのに時間を要する。種を保存する上で、一番適切なのは大きい方の子猿なんだ。生物の母性とはそういうものだ。危険を冒して小さい猿を助けても自分を含めて生き残れるかどうかわからない。しかし大きい子猿ならその確率は格段に高い。個体の愛情は遺伝子の命令に勝てはしない。いや猿はそもそも人間の言うのところの愛情なんてものは持ち合わせていない。それが生物として当たり前のことなんだ。だが人間は違ってしまった。種を保存することが唯一無二の目的でなくなってしまったんだ。それを文化と呼ぶか、知性と呼ぶか、人間性と呼ぶか、それは勝手だが、とにかく万物の霊長の奢りは、もう一つの価値を構築してしまった。これが同じ方向を向いているうちはいい。しかしまったく逆の方向を向いた時、我々は戸惑ってしまう。そしてそのズレを埋めるために怪異は存在するのだ」


「久遠寺といえば、ご城下でこそ御殿医とかいって名家ぶっていたが、出身の村では所謂、村八分だったという。つき合うものも少なく、婚姻など絶対にしないから親戚もいない。その理由が憑物筋だ。」
「憑物筋とはいったい何なんだ?この辺で言うオサキが憑くとか狐が憑くのと同じなのか?」
「ちょっと違うかな。憑物筋は憑くんじゃなくて、憑かせる。つまり憑くものを使役する家系。"オサキ持ち"とか"飯綱使い"とかいう術者が、血統として受け継がれると考えればいい。この家系の人は、他人にモノを憑依させて不幸にしたりする訳だ。共同体の中では当然忌み嫌われる。婚姻したりすると筋の血統を受け継ぐことになるからこれは厳しい禁忌とされる。」
「そんな不条理なことが実際にある訳がない!いずれにしても旧幕時代の遺物だろう?まさに迷信だ!」
「関口君、残念だが君は認識不足だよ。憑物筋の習俗は今も根強く生きている。これを無視することはできない。憑物筋というのは民族社会におけるひとつの装置だ。共同体内に不可解な出来事が発生した場合、それを解決する手段として設定されている民族装置なんだ。鬼の出自が異常出産でならなければならなかったように、村内の不幸は憑物筋のせいでなくてはならないわけだ。僕はね、共同体に経済という新しい価値が導入されたことが要因となって発生した民族装置が憑物だと考えている。それまで"富"はイクォール収穫だったから、共同体はそれこそ良いも悪いもその名の通り運命共同体だったわけだ。しかし貨幣の流通が一般的になると、共同体内部の富の分配が均等でなくなる。つまり同じ身分の中で貧富の差が生じてしまう。するとその差をなくす装置が必要になる訳だ。そこで人々は大昔から連綿と伝えられて来た神憑りの方式をそっくり戴いて憑物というものを創り出した。受け入れがたい現実-非日常を理解するには格好のものだったんだ。」

「呪いというのは、この世に本当にあるものなのか?」
「呪いはあるぜ。しかも効く。呪いは祝いと同じことでもある。何の意味のない存在自体に意味を持たせ、価値を見出す言葉こそ呪術だ。プラスにする場合は祝うといい、マイナスにする場合は呪うという。呪いは言葉だ。文化だ。」
「文化論を聞きたいんじゃない。相手を呪い殺したり、不幸にしたりする所謂呪いが有効かどうか訊きたいんだ」
「少なくとも共通の言葉や文化を持つ集団の中では確実に有効だよ」
「超自然的な力が働くのか?」
「そんな馬鹿馬鹿しい力は働かないよ。呪いはいうなれば、"脳に仕掛ける時限装置"のようなものだ。まあ-解らんだろうな」

不倫は文化だ。って名台詞もありました。

座敷童子というのは家の盛衰、富の偏りを説明するという機能をもっている。これは実に憑物の持つ機能とまったく同じだ。ここで着目すべきなのは、座敷童子は家にいるときは気配だけで出ていくときに目撃されるという性質を持っていることだ。目撃譚の多くは家人以外の者によって語られ、それは家を出るとき、即ち家が滅びた時のものだ。つまりそもそも座敷童子は今まで栄えていた家- 多くは成り上がりの余所者なのだが - それらの没落した理由として語られてきたものなのだ。それが遡って、過去家が栄えた理由としても機能するようになる。今まで富を運んできたのは座敷童子というモノである、と考えた訳だ。その考え方が定着して初めて、今栄えているのは童子がいるからだ、という現在進行形の座敷童子が発生する。つまり座敷童子は本来出て行くことで憑物と同じ機能を果たす民族装置であったことが解る。

久遠寺家が憑物筋と考えられるようになった原因を考えていましょう。勿論陰陽道の丈夫という特殊な家系であったことの影響もある。だがそれ以上に富の偏りが大きな原因としてあったのではないかと僕は推測しています。民間伝承には異人殺しというモチーフがあります。訪れた余所者を殺し、財産を奪った結果家が栄える-しかしそのために代々祟りを受けるというものです。しかし、これは単なる誹謗中傷ではない。根も葉もない噂は伝承として定着しません。長い間語り継がれるには、共同体内部の論理に合致した説得力が必要なのです。

まさに宗教がそれだな。

地域の民族社会にはルールがある。呪いが成立するにも法則がある。民族社会では呪う方と呪われる方に、暗黙のうちに一種の契約が交わされている。呪術はその契約の上に成り立っているコミュニケーションの手段です。しかし、現代社会ではその契約の約款が失われてしまった。更に共同体の内部では呪いに対する救済措置もきちんと用意されている。努力した結果の成功も憑物の所為にされる代わりに、自分の失敗で破産しても座敷童子の所為にできる。都市にそんな救済措置はありません。あるのは自由・平等・民主主義の仮面を被った陰湿な差別主義だけです。現代の都市に持ち込まれた呪いは、単に悪口雑言罵詈讒謗、誹謗中傷の類と何ら変わらぬ機能しか持たないのです。

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「もし二十ヶ月間も子供を身篭ったままの女性が居たとして、その腹部たるや普通の妊婦のおよそ倍はある。それでいて一向に産まれる気配もない。それが事実だとすればやはり尋常なことじゃないじゃあないか。不思議なことだとは思わないのかね。」
「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」 京極堂はそういった。
「ふん、例えばそういった異常な状態を示す妊婦が居るとしようじゃないか。そういう状況なら普通は医者に診てもらうだろう。珍しい症状だから治療が済めば何らかの形で発表されるだろうが、それなら僕も知っているはずだ。しかし生憎僕は知らない。すると治療中の医者が君にだけ情報を漏らしたのだろうか。これも考え難い。患者の個人情報を赤の他人に教えることはないだろうし、医学の医の字も知らない君に相談するというのも非常識だ。万が一したとしても君が僕のところに来ることなんかないだろう。すると君の情報源は医者ではないということになる。ならば君はその妊婦か妊婦の家族から直接相談を受けたのだろうか。その場合はなんらかの事情で医者にかかれないとか今かかっている医師が信用できないとか、まあ事情は色々考えられるが、いずれも雑文書きに相談する内容ではない。君がこっそり嗅ぎ付けたなんてこともないだろう。するとそれは君だけが知っている事実ではなく、不特定多数の人間が知っている事実だと考えられるのが妥当だ。これはもう風聞というヤツに決まっている。それも医学的裏づけの一切ない俗で下世話な風聞だろう。その場合、たぶん君を含めたその風聞を知る人間は、皆一様に戯作者が書いた因縁話や怪談話のような尾鰭をつけて聞いているに決まっている。やれ祟りだの因果だの、いや最近ではそういったおろかな分野にまで化学をくっつける大馬鹿者がいて、心霊科学とかいう言葉まであるそうじゃないか。それはともかく君が僕のところにそんな話を持って来るということは、そういう下卑た噂話にもっともらしい裏づけができるような話をさせたかったからじゃないのか?どうせお得意のカストリ雑誌に猟奇趣味たっぷりに味付けした記事でも書くつもりなのだろうが、そう巧くはいかないよ」

こう言いたくなるような事象はインターネット上にもよくある。


宗教とは、脳が心を支配するべく作り出した神聖なる詭弁だからね
「心理学の方はどうなんだい?」
あれは文学の部類さ。共感できるもののみに有効なんだ。科学の生んだ文学だ。心理学は民俗学と比較すると面白い。心理学は個人個人の患者からサムプルを採って一応は一般的な法則を導きだろうとするんだろう? 民俗学は村やなんかの共同体から共通のサムプルを取って法則性を探る。しかし両方とも最終的には個人に還元されてしまう。文学的なんだな。」

ははは、心理学か。そんな感じだな。あれって学問なのか? とすら思うことがあるわ。

「気分がいいとか、気持ちがいいとかいうのは皆この麻薬の所為らしい。生きていくのに必要な行動は大体快楽を伴うじゃないか。阿片患者と同じように心はそれを求めるからね。動物なら生きているだけで恍惚感を持てたんだ。しかし社会が生まれ、言葉が生まれて、この脳の麻薬だけじゃ不足になって人は幸福を失った。そして怪異を手に入れた。更に失った幸福を求めて宗教が誕生した。代用麻薬だね。阿片だのモルヒネだのというのは代用の代用さ。宗教は麻薬だといった共産主義者がいたが、卓見だね。」

マルクスですね。

言葉というのはクセ者だ。共同幻想を生む。しかしこの共同幻想だって厳密に言えば共同であって同一ではない。仮想現実はあくまで個人のもので、本当の意味での共有はできない。これは宗教にも当てはまる。信者が独りもいない宗教人を何と呼ぶか知っているかい? 残念ながら現在ではこれを狂人と呼ぶ。信者あっての宗教さ。妄想が体系化して共同幻想が生まれて、始めて宗教足りえるのさ。でも仮令同じ宗門の人間であってもまったく同じ仮想現実体験を得ることなんざできない。しかし宗教というのはここのところが実に巧くできている。別々の体験をしているにも拘らずそれが同じだと思い込める仕組みになっている。だから同じ理屈で大勢の人々の心と脳の揉め事を収めることができる。救える訳だね。この仕組みに一役買っているのが言葉だ。

京極堂は"長すぎる妊娠"に就いての話をやっと始めたのである。
「武蔵坊弁慶かな。『義経記』の所伝によれば18箇月だし、御伽草子の『弁慶物語』だと驚いたことに3年3箇月、実に39箇月目に産まれて来たと記してある。髪の毛も歯も生え揃った"鬼子"であったそうだ。『慶長見聞集』に載っている大鳥一兵衛という暴れ者も、投獄された際に18箇月間胎内にいたと嘯いている。もっともこれは自己申告だからどうも怪しいがね。御伽草子の『伊吹童子』では33箇月目、『全太平記』では16個月目に産まれたとある。極悪人や豪傑の判を押されたそのときに、遡って過去ができたのだ。鬼は常に異常な出産によって産まれなければいけない。そういった強い民族社会の共通認識が過去にあった訳だ。特に我が日本ではかなり徹底していた。これは裏返せば、異常な出産によって生を受けたものは鬼になるという共通認識があったということでもある。だから実際の鬼や極悪人は異常な出産の出自を持たなければ説得力に欠ける。因果関係の逆転だ。鬼だと観測された時点で遡って、異常出産という過去が形成される訳だ。だからといって真実以上な出産で産まれた子供が鬼や悪人になる証拠には一つもならないがね。」
「本当に異常な出産だったにもかかわらず普通の人生を送った例はないのかい?」
「ない。なぜなら異常な出産でうまれた鬼子の将来は決まっているのだから、これは確実に殺された。」
「だって酒呑童子なんかは生き延びたんだろう?そんなに確実に殺したのなら鬼や悪人は産まれないことになる」
「だから酒呑童子なんかは鬼の烙印を押されたそのときに遡って過去が決まったっていったじゃないか。そのときは殺されずに捨てられたとかいう理由ができるのさ。もし隠れて生き延びた者で、普通の人生を送った者がいたとしたら、今度は遡って異常な出産の過去は消えてしまうんだ。」

出産体重4500g、産婦人科の新生児室にて、一際大きく黒い赤ちゃんがおぞましい声で泣き叫ぶ姿を見て、「これが本当に私の子供なのか?何か恐ろしいものを産んでしまった気がする。」とつぶやき、悪寒がしたという。数十年前の私の母である。

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